19 目覚め
止むことのない雨に打たれながら、ビルを登り窓から窓へと飛び移る。
セッツァーはすっかり濡れてしまったコートの水を払いながら、忌々しげに空を見上げた。
視界の端に映る自称トレジャーハンターは、事も無げに軽業師のようにどんどん進んでゆく。セッツァーはその男を睨みつけながら懐から葉巻を取り出すが、湿気て火がつかない。
「……踏んだり蹴ったりじゃねえかよ」
セッツァーは舌打ちをし、それをあっさり捨ててしまった。
他の仲間たちも手慣れたものだ。一見すると鈍くさそうで体力も無さそうなエルでさえ、エドガーやマッシュの助けを借りながらも遅れをとることはない。何より、重そうな機械類を担ぎながらも軽々と進む王様に、セッツァーは呆気に取られていた。
しぶしぶ休憩を諦めたセッツァーは、更にビルを移動しロックを追う。セッツァーは階段を上り、先にいたロックに声をかけた。
「おい」
セッツァーは座って休んでいたロックを、立ったまま呼んだ。
「何だよ」
如何にも不機嫌そうなセッツァーに、ロックは怪訝な顔をして声の主を見上げた。
「……俺はまだ、セリスを諦めちゃいないからな」
ロックは一瞬だけ、目を見開いて彼を見た。セッツァーは隙のない鋭い目で、挑戦状を叩きつけるようにじっとロックを見ていた。
「……そうか。けれど」
「けれど? 」
ロックは口角を上げて笑った。
「選ぶのは、セリスだぜ」
「ふん。せいぜい俺に奪われねえように頑張りな」
セッツァーはふわざと皮肉に笑い、腕を組む。ロックは力強い眼差しで、彼に笑って見せた。
ティナの部屋に来ると、ナルシェで待機していたガウとカイエンも来ていた。
ガウはエルを見るなり飛びついて、エルは思わず尻餅をついた。暫く会わないうちに、彼の身体が少し大きくなっている。エルの力では受け止められなくなってしまった。マッシュとカイエンが助けに入り、当のガウは驚いて目をぱちくりさせている。
マッシュがガウに説教をし、エドガーがエルを抱き起こす。部屋に入るまで少し緊張感が漂っていた一行だったが、その様子に雰囲気が柔らかくなったようだった。
「魔石が……! 」
ロックの声に、皆が一斉に彼の方を向いた。
ロックがティナの眠るベッドに近づくと、魔導研究所から持ち帰った魔石の一つが突然光っていた。
魔石は柔らかい光を放ちながらふわりと浮き上がり、ゆっくりと移動を始めた。仰向けに眠っているティナの胸元でぴたりと止まって、より強く輝いた。一行が息を飲んで魔石を見ていると、ティナの瞼が動いた。
「ティナ! 」
エルが彼女の名を呼ぶと、ティナは微笑んで身体を起こした。ロックが慌てて駆け寄り、心配そうにその背中を支える。
「お父さん……? 」
ティナは、淡く光り続ける魔石を両手で柔らかく包むようにして手に取った。彼女が手にしているのは、マディンの魔石だ。
「わたし、思い出したわ。わたしは……幻獣界で育った……」
20150402
セッツァーに言わせたかったのは、セリスは諦めないからな!ってことです
大したことはないんですが、これがしたかったんです(^^)
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