赤ずきんティナ



「赤ずきんよ。ロックおばあちゃんのお見舞いに行って来てくれないか。」
 
「ええ、行ってくるわ。お父さん。」


 ここは幻獣と動物と人間が暮らす不思議な森。幻獣マディンと娘ティナ。そして、にぎやかな森の住人たちがひっそりと、仲良く暮らしています。
 ティナはいつも赤い頭巾をかぶっていました。そのため、みんなは彼女のことを「赤ずきんちゃん」と呼んでいます。


「やあ、赤ずきんちゃん。お出かけかい?」

「こんにちは。ビックス、ウエッジ。ロックおばあちゃんのお家にお見舞いに行くところよ。」

「そうかい。だったら気をつけな。近頃オオカミが出るらしいぜ。」

「寄り道しないでまっすぐ行けよ。」

「わかったわ、ありがとう。」


 ビックスとウエッジと別れると、赤ずきんちゃんはどんどん森を進んで行きます。すると、きれいなお花畑を見つけました。


「まあ!なんてきれいなのかしら!お花を持って行けば、きっとロックおばあちゃんも喜んでくれるわ!でも、寄り道しちゃいけないって言われたし……あら?」


 お花をよく見ると、モーグリと雪男の妖精が花に戯れて遊んでいます。


「な、なんてかわいいのかしら。ふかふかしたい、ふかふかしたいわ……!」


 赤ずきんちゃんは忠告のことなどすっかり忘れ、妖精達に夢中です。
 そこへ二つの影が現れました。なんとオオカミです。


「やあ愛らしいレディ。花が好きなのかな?君さえよければ我がフィガロ一族秘伝の花畑に案内したいのだが、一緒にいかがかな?」


 さっとバラを取り出したのは、エロガーオオカミです。でも、赤ずきんちゃんはモーグリと雪男に夢中で全く気が付きません。


「よお。お嬢ちゃん。そんなエロオオカミなんざ放っておいて、俺とイイとこ行こうぜ。」

「おい、セッツァー。お前はなぜ、もっと品よく口説けない。ご婦人にはもっと……」


 その時、勇ましい女性の声が響きました。


「そこまでよ!神妙になさい!」

「ちっ。邪魔がはいったか。」

 さも面倒くさそうに振り返るセッツァーオオカミの後ろには、森の正義の味方・セリスが銃を構えていました。銃の照準は、きっちりオオカミたちを捉えています。


「やあ!セリスじゃないか。また会えて光栄だよ。君は猟銃も似合うね。」

「鉛玉を撃ち込まれたいのかしら。それとも剣の錆になるのがお好み?」


 セリスは尚もオオカミ達を睨みつけ、銃の引き金にかける指の力を強めます。


「雄々しい君も魅力的だ。」

「動いたら撃つわよ。あなた、大丈夫?……あら?あの子はどこへ行ったのかしら。」 

 赤ずきんちゃんは周囲の喧騒など気にも留めず、モーグリと雪男とすっかり仲良しになっていました。モーグリ御用達のお花畑に案内してもらい、可愛い花束を作ってご満悦です。


「結局寄り道しちゃったわ。早くロックおばあちゃんのお家に行かなくちゃ。」

「きっと心配してるクポ。」

「うー!気を付けてな!」


 モーグリが小道を指して言いました。


「こっちが近道だクポ!行ってらっしゃいクポ!」

「ええ、ありがとう。またね。」


 この後、赤ずきんちゃんは無事にロックおばあちゃんのお家にたどりついたのでした。
 めでたしめでたし。








一方その頃 ーー


「可愛い娘だったクポ。」

「うー!親分、やっちまうのか。」

「きっと帰りも近くを通るはずだクポ。」


 モーグリの顔が、信じられないほど凶悪に歪みます。


「まちぶせ。うー!」

「うむクポ。 捕まえて……クポポ。」

「うー!」

 普通サイズに戻る雪男とモーグリであった。


 その頃、熊の兄弟が森を歩いていました。兄のクマッシュは、弟のクマガウをとても可愛がっています。


「いいか、ガウ。寄り道は絶対しちゃだめだからな。」

「がう!」


 クマガウは大きな声で返事をし、勢いよく手をあげました。


「それと、知らない奴には絶対ついて行くなよ。わかったな。」

「がう!おいらわかった!マッシュとのやくそく、おいらまもるぞ!」

「よし、ガウはいい子だな。」


 クマッシュはそう言って、大きな手でクマガウの頭を豪快に撫でました。クマガウは大喜びです。


「がうがう!おいらいいこ!おいらいいこ!……マッシュ、なにか、くるぞ。」

「ん?うわわっ。なんだありゃ!」


 ガウが指差す方向から、ピンク色の何かが凄いスピードで飛んで来ました。あっという間にクマッシュ達を追い越して、近くの湖のほとりに降りたようです。
 クマッシュは追いかけて、そっと近づきました。ピンク色をしたそれはどうやら女の子のようです。女の子は怯えて震えていました。


「大丈夫か?俺は森のクマッシュ。コイツは弟のガウ。君は?」


 女の子は二人をじっと見て、ゆっくり話し始めました。


「……わたしのことが、怖くないの……?」

「ああ、怖くないよ。それよりも、君はどうしてそんなに怯えているんだ?」


 女の子は思いつめたような顔をして、俯いてしまいました。


「わたし、ティナ。」

「ティナ?もしかして、赤ずきんちゃんなのか?」

「ええ、そうよ。わたし、誘拐されそうになったから逃げてきたの。怖いわ。」

「誘拐だと?!」


 クマッシュは驚きました。平和なこの森で、こんな事は初めてだったからです。


「モーグリと雪男よ。逃げる時に、力を使ってしまって。」


 そこまで話すと赤ずきんちゃんは力尽き、変身が解けました。ピンク色だった身体も、元の姿に戻りました。
 赤ずきんちゃんは、とてもぐったりしています。


「お、おい!ティナ!大丈夫か?」「がうがう!おきろ!」


 そこへ、モーグリと雪男が追いついて来ました。モーグは、クマッシュがそれまで見たことが無いほど悪い顔付きをしています。


「見つけたクポ!おい、お前。その子をモグ達に渡すクポ!」

「うー!わたせ!わたせ!」

「渡せるわけないだろ!お前たちだな、誘拐犯め!」


 クマッシュはティナを守るように、彼らに立ちふさがります。クマガウも一緒です。


「むむむ。仕方がないクポ。やっちまうクポ!ウーマロ!行けクポ!」


 モーグリと雪男も臨戦態勢に入っていました。怖い顔をして、今にも飛びかからんとしています。
 クマッシュも負けじと構えを取りました。なんとクマッシュは、クマ拳法の達人、いいえ、達クマなのです。
 しかし、モーグリは仲間を呼びました。次々と現れるモーグリ達に、流石のクマッシュも苦戦します。これではキリがありません。
 

「待たれよ!」


 そこへ、ひとりのサムライが現れました。クマッシュの仲間、カイエンです。


「クマッシュ殿、助太刀致す!」

「恩に切るぜ、カイエン!」

「なんだクポ!お前もやっちまうクポ!」


 モーグリ達の攻撃が、一斉にカイエンに向かいます。
 しかし、カイエンは刀を一閃し、一刀で凪払ってしまいました。


「おなごをかどわす不届き者め!そこへ直れ!成敗してくれるわ!」

「がうがう!おまえらわるいやつ!ゆるさない!」

 
 こうしてクマッシュたちはモーグリ達を倒し、赤ずきんちゃんを家まで送ることにしました。
 赤ずきんちゃんは、助けてくれたクマッシュが気になって仕方がありません。クマッシュも、赤ずきんちゃんから目を離すことができません。
 二人はチラチラお互いを見ながら、くっついたり離れたりしています。
 その様子を、カイエンは後ろから眺めています。クマガウの手を引きながら、嬉しそうに口元の髭を撫でました。
 赤ずきんちゃんは何だか恥ずかしいような、暖かいような、不思議な気分でした。今日の出来事は怖かったけれど、幸せで、嬉しくて、もっとクマッシュと一緒にいたいと思いました。
 それはクマッシュも同じで、赤ずきんちゃんともっと話をしたいと思いました。


「ガウ殿、お邪魔虫は消えるでござる。」

「がう!マッシュ!うまくやれよ!」


 二人は森の奥の家へと戻っていきました。


「あ、あいつら、まったく……ははは。と、とりあえず、行こうか。君をちゃんと送り届けるからな。」

「う、うん。ありがとう……。」


 やがて、赤ずきんちゃんの家につきました。
 二人はぎこちないながらも、次に会う約束を取り付け、赤ずきんちゃんは無事にお遣いを終えたのでした。
 その様子を、マディンパパが仁王立ちして窓から見ていることに、2人はまだ気づいていません。
 めでたしめでたし。

20140806

かわいいモーグリはいません
かっこいいエドガーもいません
そして落ちもありません

お粗末様です
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