9 ダムシアン
洞窟を出ると、進行方向に小さく城が見えた。テラによると、それがダムシアン城だということだ。
商業国家であるダムシアンは、見るからに華やかな雰囲気だ。遠目に見ても、バロン城とは造りも佇まいも随分と趣きが違う。
バロンの城は勇壮で隙のない泰然とした構えで、その軍事力を伺わせる。対してダムシアン城は装飾のひとつひとつにも趣向が凝らされ、華やかだ。城に近づくにつれて、その美しさがより鮮明になってゆく。煌びやかな様に、アベルは嘆息を漏らした。
しかし、城まであと一息だという頃に、セシルは馴染みのあるエンジン音を聞いた。アベルもすぐに気が付き、二人同時に空を見上げる。
遠くバロンの方角から飛空挺が三機飛んできた。そして、それらは見たところダムシアンの方へ向かっている。
「赤い翼、だ……」
アベルが思わずこぼすと、セシルも眉をひそめた。
「こんなところで、いったい何を」
まさか、自分たちの追っ手だろうか。ローザは無事だろうかとセシルは考える。そうしているうちに、飛空挺はどんどん近づいて来た。
あっと言う間にセシル達を追い越して、飛空挺団はダムシアン城の上空に差し掛かる。飛空挺はそこでぴたりと止まったかと思えば、次の瞬間には爆弾を投下していた。
「……何!? 」
セシルは目を疑った。
赤い翼が、いきなり他国の城へ攻撃を仕掛けている。この事実がとても信じられない。
赤い翼を離れていても、セシルの隊への誇りは健在だったが、完全に踏みにじられてしまった。それはアベルも同じで、アベルはへなへなとその場へ座り込んだ。
「セ、セシルさん……あれ……」
「ア、アンナ……アンナっ! 」
テラは爆撃を見て、震える声で叫んだ。
わなわなとふるえるアベルの手を、リディアは心配そうにそっと握った。
沈痛の表情で、アベルはすがるようにセシルを見る。セシルも苦くやりきれない思いでいっぱいだ。彼らのすぐ側では、テラはますます焦っていた。彼はアンナの安否で頭が一杯で、今にも倒れそうなほど憔悴している。
「……とにかく、行ってみよう」
セシルはそう言うと、アベルを立たせた。一行は再びダムシアン城へ向けて道を急いだ。
やっとの思いでダムシアンの城門までたどり着くが、もはや生き物の気配が感じられなかった。
破壊の限りを尽くされ、今もあちこちで焼け残った何かが黒煙を上げてくすぶっている。
テラはダムシアンに入るなり、一人で城の奥へと入っていった。およそ老人とは思えないスピードで、大急ぎで走ってゆく。彼はアンナを探すのだろう。誰も止めはしなかった。
城門付近に兵士が二人倒れている。しかし、声をかけるまでもなかった。既に事切れていることは歴然だったからだ。
リディアは震え上がり、アベルにぎゅっとしがみついて離れない。しかし、アベルもこの惨状に耐えかねていた。
20171102
D+S FF-D New!夢物語
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