世界が終わったとしても1


世界が終わったとしても

ボクは君と共にあることを誓おう






おかしな夢を見た。
冷たい闇の中、名前も知らないサラッとした銀髪の男が「必ず迎えに行く」ボクに何かを放った。するとボクは何もない真っ白な空間に投げ出されて永い眠りにつく。数万年の眠りから目覚めたボクは独りぼっちで見知らぬ滅びた世界を彷徨い歩く。次第に恐怖が込み上げてきてあの人に助けを求める。そんな意味深な夢。

こんなに非現実的な夢を見たのはいつ以来だろうか。そもそもボクの知り合いに銀髪の男なんていないし、数万年の眠りにつくなんて普通にあり得ない。冷静に考えればただのおかしな夢だ。けれど夢の中では冷静に思考する余裕も持っていなかった。




ボクはいつも通り高校に通っていた。教室には友達のウィッチやルルー、ラグナス、それにアミティやシグ、りんご、まぐろと担任のサタン先生が待っている。まったくいつも通りの光景なのだが、今日は何やら騒がしい。
体調不良で欠勤中の副担の代わりに新任の先生が来るということで、それがどんな人かで盛り上がっている。超美人の女教師だとか超イケメンの男教師だとか、はたまたおじさんおばさん層だとか多彩な説が飛び交っている。

始業のチャイムが鳴ると担任のサタン先生が教室に戻って来る。
「今日はしばらくの間エコロ先生の代わりに来てくれる新任の先生を紹介しよう」
サタン先生がその新任の先生を迎える時、生徒たちはこれまで以上に盛り上がっていた。
「ねえねえ、やっぱりイケメン先生かな」
「超別嬪さんだったりして」
「はやく見たいよ」
教室がガヤガヤし始めると、その新任の先生は入ってきた。

サラッとした銀髪、細長いけれどしっかりとした体格。女性のように整った綺麗な顔立ち、どこかで見たことがある気がした。どうやらイケメン先生の説が当たりだったらしい。眼鏡越しにアイスブルーの瞳が刺すようにこちらを見ていた。その眼差しの先に何があるのか、この後ボクは身をもって知ることになる。
「しばらく副担任となるシェゾだ。よろしく頼む」
シェゾ先生はぶっきらぼうに挨拶して後をサタン先生に任せた。
「えー、短い間だがよろしくお願いします。何か分からないことがあったら生徒たちに遠慮なく聞いてください」
シェゾ先生のぶっきらぼうにサタン先生も少し困惑していたようだ。その後は何事もなく朝礼は終わり、一限目の準備を始めた。


なんだか引っかかる。あのシェゾ先生の顔、ボクはどこかで見ていた。だけど彼とは初対面のはずだ。どうも吹っ切れないままボクは一限目の準備をしていた。
「あらアルルさん、元気がありませんね」
隣の席のウィッチがボクに気を遣ってお菓子をくれた。知らず知らずの間に溜め息をついていたらしい。
「もしかして、シェゾ先生があまりイケメンだったから狙ってるんじゃありませんの」
いきなり何を言いだすかと思えば…
「まさか、キミじゃないんだから」
面喰いウィッチの方こそあのイケメン先生を狙っているんじゃないかと思っていた。なんだか笑いたくなった。
「そうそう、一限目は歴史、シェゾ先生の授業でしたわ」
そうだった、シェゾ先生は歴史担当だった。
博士のような眼鏡のせいか化学の先生という印象が強かった。
「あの先生、歴史ってイメージないよね。なんだか理屈っぽそう」
「そうかな、緊張してるみたいだったし、もしかしてコミュ障ってやつかもよ」
アミティやりんごたちもシェゾ先生の話題で盛り上がっている。
「じゃあボク教科書取ってくる」
と言って廊下に出た。


「これで良かったんだな、闇の魔導士」
なんと廊下でサタン先生とシェゾ先生がコソコソと話している。何を話しているのかはよく分からないものの、なんだか近づき難い雰囲気にボクは足を竦ませた。
「ああ、これで良い」
その場の緊張感にボクは息を呑んだ。

To be continued…


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