天司から見た
俺の隣に当たり前のようにいるこの少女とは不思議な関係だった
「どうしたの?なんかあった…?」
「君が来てから随分と時間が経ったと思ってな。」
「そうだね、もうちょっとしたら一年だよ〜」
一年、確かにそれぐらい経つ気がする。この少女、ブルームと出会ったのは俺が天司長を継いでから数週間経った日のことだ。最初は俺のことを母親に似ていると言い出したときには驚いた。母親を探すためにブルームは特異点達と行動すると騎空艇に乗り込んだことを知っている
当時はルシフェル様のこともあり積極的に誰かと関わろうとは思わなかった。特異点達ともあくまでも協力関係だと。ブルームはまるで親鳥についていく雛鳥のように俺についていく。この少女は今ここにいない母親の面影を俺に重ねているんじゃないかそう思い始めるほどに何かにつけて関わろうとしてくるのだ
『ねぇ、なにしてるの?』
『サンダルフォンはすきなことある?』
『いっしょにあそんでほしいな、だめ〜?』
『コーヒーってにがにが…でもサンダルフォンがいれてるの見るのはすきだよ。』
結局、押しに負けて俺は自然にブルームと関わっていた。見た目の年齢と中身があっていない。人間の年なら14か16ぐらいの見た目をしても中身は10歳ぐらい…いやそれよりも幼いかもしれない。だからこそブルームが行動するにしても心配になる、目を離してはおけない。人間の母親と子供のような、兄と妹のような関係にも周りからみえるまでになっていた
天司長のこと、ルシフェル様の件よりも一年前の俺が事件を起こしたあの事もブルームは知らない。それがよかったのかもしれない、何も知らないから安心していた。隔たりのような深い溝なんて元から存在していない。ブルームと関わるようになってから自然に騎空艇にも馴染めるようになってきた。俺が全部は変わっていないが、変化があった
騒々しい日常だ
どこにいても勝手についてくるし、俺を見つけてくる。俺をじゃなくてもいいだろうと言えば俺がいいと駄々をこねる。長期の依頼や古戦場で駆り出されて俺がいないと仲間に手を焼かせるほどに拗ねたり、泣いて寂しがる。この間は酷かったな…。機嫌をなおすのに時間がかかった
『サンダルフォンのことがすきだからいっしょにいるんだよ。』
俺を肯定する好きという言葉を惜しみもなく伝えてくる。笑った顔が焼き付いて離れない。甘えて手を握ってくれだの、抱っこしてほしいのも多い。それも了承してしまうほど俺も甘くなったのか。好きという言葉と行動に対してそれを返しただけなのか
俺が今までの出来事を思い返して、ブルームのことを考えていても隣に呑気に笑って広告を見ている。新しくできたカフェのメニューでも気になっているんだろう
いつか別れが来る。ブルームの母親を探すという目標が終わる時。俺がルシフェル様の約束を終えた時。騎空艇という場所で偶然に出逢っただけでずっと一緒にいるには難しい
なんでもない関係だったはずだが…どうしてか。なんでもない関係ならブルームがベリアルと会った時にいつもよりも危機感を覚えることもない。最初に出逢った時よりも俺はブルームを大事にしているらしい。自覚なんてない。周りがそう言う
「ねー、いっしょにここいこうよ。チョコレートケーキおいしそうだよ。」
「君のも美味しかったけどな。」
「だってヴェインちゃんに手伝ってもらったもん。サンダルフォンにほめてもらえるのはうれしいなぁ〜。」
「ブルーム、君とこうして過ごすのは嫌いではないが…。」
もうすぐと言わんばかりに警鐘を鳴らしている
ルシフェル様の約束を果たすための戦いが始まろうとしている
なら、なにも知らないブルームをこの少女を巻き込むのは不本意だ。激しい戦いになるだろうわかっているならなおさらだった
「いつか君と離れる日が来る。」
「……それは前にいってただいじな人の約束のためだよね、サンダルフォン。」
「そうだ。」
「まってるよりお手伝いできるように考えたの。わたし、よわくないよ。たよりないかもしれないけどもう誰かとおわかれするのはいやだ……」
「今回は勝手にしろとは言えない。」
「いたい思いをしてはじめてほしいものは手にはいる。」
「ママがおしえてくれた。ブルームはいつか私よりだいじな人ができるんだって。その時のために魔法をおしえるから、女の子だからってまつよりもだいじな人をまもれるようになりなさいって。」
俺の隣に座っていたブルームが立つ
「ママににてたからじゃないんだよ!私はずっといっしょにいたいから、サンダルフォンがだいすきなんだよ。わたし、サンダルフォンになにいわれてもついていくもん!ぜっ〜たいついていくもん!!」
ただ俺のことを母親と重ねているんじゃないかとずっとどこかで思っていた。災厄の俺も、天司長の俺も知らない。だから母親のように俺についていくんだと。知られることを恐れていた、知られることで今の関係が崩れることを。過ごした日常が壊れるくらいなら母親に重ねられていてもいいとも思っていた
あまりブルームは怒らない。怒った時は俺が自身のことを否定的に言ったりしたときぐらいじゃないか
この言葉の意味を知ってなお…俺は置いていけるだろうか。天司長の役目を果たすために俺はブルームを一人にできるか?
「止めた、置いていける気がしない。……俺は君を置いていけない。」
「一人にしないよ、サンダルフォンを。」
「一人にしたら泣くのは君だろ?」
ピンクと水色の髪をそっと撫でる。笑うその顔を見た
こんなにも離れられないとは思っていなかったんだ
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