ウーゴの処置がよかったのかジョルノ達がアジトに帰ってきた頃には顔の痛みは引いていて、腫れもなかったのか全くバレることなくそのまま出迎えることが出来た。
トリッシュちゃんはジョルノが帰ってきたらちょっとだけ話をして、最後は満足そうに笑顔で帰って行った。しかも帰る前に私に電話番号を教えてくれて、困ったことがあったら相談に乗ってあげるとまで言ってくれて……トリッシュちゃんの優しさに泣きそう。別れが惜しくてハグをしてしまった。毎日トリッシュちゃんがアジトにいてくれたら最高だよなぁって思ってしまう。
「シニーはトリッシュに首ったけだな。」
そして現在、ジョルノに家まで送ってもらいながらトリッシュちゃんの話をしている。
「うん!トリッシュちゃんはカッコイイし、歌も素敵だし……もうすっかりファンだよ!」
ジョルノの言う通り私はトリッシュちゃんに首ったけになっている。そのせいか未だに興奮が冷め止まない。ファンになっちゃったからそれはもう本人様を見ただけで果てしなく喜んでいられる……まるで恋と似ている感じ?ジョルノを見ただけで果てしなく喜べるもんな。
「トリッシュもきみのことを素敵な女の子だって言ってたよ。」
「え!本当?」
「でも街中でスタンド能力を使うのはよろしくない。トリッシュじゃあなかったら今頃どこかで実験体にされてたかもしれないって分かる?」
「うっ……」
嬉しい報告を聞いて更にテンションが上がるものの、一気に下へと落とされてしまい少し落ち込んでしまった。
ジョルノもウーゴも厳しいな……でも本当、見られたのがトリッシュちゃんじゃなかったら今頃ここにいなかったかもしれない。次からは上手くやろうってことも考えたけれど、現実に起こったら大変だから、手間があっても普通のことをしようと思う。
(それはそうと……)
私は手を繋いで一緒に歩くジョルノを見上げて、ジョルノに話さないといけないことを頭の中で考え始める。
ウーゴの言葉を聞いて私は反省をした。ジョルノのわがままを聞いていなかったことを……だから今からジョルノのわがまま、いや、したいことを叶えたいと思っている。
正直言えば怖いけれど、まだ心の準備も出来ていないけれど、それでもジョルノが望むなら私はそれを叶えたい。だから言わないといけない。いけないのだけれど……
(何て言えばいいの?)
何て言えばいいのか言葉が見つからない。
そもそも普通は申告してやるようなことではないと思うし、流れでするものだろうし、でも私はまだ経験値が足らないから流れでそういう行為に持っていくことなんて出来ない。冷静に考えるとジョルノに好きって伝えた時よりもハードルが高いのでは……!
「シニー、さっきからぼくのこと見てどうしたの?」
どのくらい見ていたか分からないけれど、ジョルノが私の視線に気が付いたみたいで、立ち止まって私のことを見下ろしてくる。
毎回思うけれど、ジョルノって身長が伸びるスピードが急に早くなった?私なんてもう身長止まっちゃったのに、ジョルノは全く止まる気配がない。
「ジョルノ……」
大人に向かってゆくジョルノを見ると、私もちゃんと大人になっていっているのか不安になるな……一応見た目は昔よりは大人かもしれないけれど、何となくジョルノと比べちゃうと不安しかない。
「ジョルノ、あの、」
私なんかでいいのかなって思い始めたけれど、でもジョルノとならきっと大丈夫かなとも思う。怖くてもジョルノが望むなら受け止めたいと思うし、私も前よりは前向きに行為に関しては考えられるようになったと思う。
何て言ったらいいか分からないけれど、悩んでいるだけ無駄だし回りくどく言えるような脳みそも残念ながら持っていない。とりあえず私らしく好きって伝えた時みたいにストレートでぶつかるしかないのかも。
私はジョルノの緑色の瞳を見上げながら、少しの恥ずかしさでどもってしまいながらも言葉を口にする。
「し、しよう?か?ジョルノ……!」
ジョルノの手をぎゅっと握って、ジョルノに伝える。
……言ってみて思う。大雑把すぎたし大胆すぎた。しようかって言ったら普通何のことって思うだろうし……しかも言ってから急に恥ずかしくなってくる。勢いで、しかも街中で、何を口走ったんだ私は……!
「それは……この前の話のことで、いいのかな?」
ジョルノは少し驚いたみたいで、目を丸くさせながら私が言った言葉の意味をすぐに理解してくれる。流石はジョルノだな。
「うん、そう。」
私は首を縦に振ると、ジョルノの前に飛び出してはジョルノの握られていない方も手に取って指を撫でた。
「ジョルノはいつも私に合わせてくれるけどさ……多分これはずっと私を待ってたら進まないと思うんだ。」
私は決断をしたらもう止まらないけれど、その決断をするまでが結構長い。おかげですぐにジョルノの好きに応えられなかった。
「私のわがままばかり聞かなくていいよ。」
いつも合わせてもらってばかりだもん。
「ちゃんと付き合うからもっと甘えてほしい。私を引っ張ってほしいんだ。」
出会った頃から私のペースに振り回してばかりだし、私はそんな優しいジョルノも好きだけれど、わがままを言って振りまわしてくれるジョルノも見てみたい。
「もっと貪欲になっていいんだよ、どんなわがままでも聞くから言っていいんだよ?」
先に進みたい。ジョルノと一緒に。
自分の今の意見をはっきりと言えて、私的には満足だった。だから後悔はしていない。してはいないのだけれど、ジョルノを見上げてみると口が半開きだし目はまだまん丸だしで……一気に不安になる。
「……ご、ごめん。こんなところで言うことじゃないよね?」
そうだよね、やっぱりこんな街中で言うようなことじゃないよね……そりゃあ驚くよ、こんな所でしかもこんな話をしたら。
「ジョルノはこれからまた仕事でしょ?こっ今度の休みとか!今度のジョルノの休みに家に行くから……」
その時にわがままにいっぱい付き合えたらと思うし、その、すればいいと思うし……
そう思いながらジョルノの手から手を離そうとした。
「えっ?あれっ?」
けれど、私が離してもジョルノの方は私の手を掴んだままで、なかなか離してはもらえない。力強くぎゅっと握っている。
「もっと、」
離れない手に驚いていたら、ジョルノは私の手を握ったまま話を始める。
「もっと一緒にいたい。いっぱい話したい。」
最初は雨が降り始めたみたいにポツポツと。
「シニーのこといっぱい知りたいし、喜ぶ顔もいっぱい見たい。いっぱいドルチェを買ってあげて一緒に食べたい。」
でも段々と豪雨みたいな勢いで話し始めて、私にいっぱい「わがまま」を言ってくれた。
「もっと触りたいしめちゃくちゃなキスだってしたい。前に言った通りきみとしたいし一緒のベッドで眠って朝を迎えたいし……本当は任務にだって出したくない。ミスタに預けるのも結構不安だし大体いつも嫉妬してる。」
今までやんわりと聞いていたわがままだけれど、改めて心で決めてから聞くと何もかもがキラキラと輝いて聴こえてくる。子供っぽいところもあることを聞くと可愛いなって思ってしまって胸が暖かい。
「……わがままってどうやって言ったらいいかぼくには分からない。」
ジョルノは私の手を握るのをやめると、人目を気にせずにそのまま私に抱きついてきて、囁くようにそう呟いて。甘えるように、猫みたいに私の頬に頬を擦り寄らせてきた。
「きみを大事にしたいからきみが望むことだけをしようと思った。それが正解だって思ってたからずっと遠慮してた。」
ジョルノが不器用なのは昔から知っていたし、わがままなんて言えない場所にいたことを最近になって知ったけれど、離れた今でも立場が立場だったから言えなかったと思う。
「でもぼくも男だから……いつか我慢だって出来なくなる……きみのことを待てなくなるのも多分時間の問題だった。」
それに関しては本当に申し訳ない……言わせておいてあれだけれどいきなり生々しい話になったから、ちょっと恥ずかしくて顔に熱が込み上がった。
「だから嬉しい。シニーがぼくのことを受け入れてくれること。」
囁くように耳元でそう言うと、ジョルノは体を離して私と見合うように立つ。
「今からしたいんだけど、いいかな……?」
ジョルノの顔は嬉しそうだし、視線が少し熱っぽい。あまり見ない顔だから驚きはするけれど、それ以上に嬉しさの方が勝る。
我慢が効かなくなるかもしれないくらい愛されていたことが嬉しい。数時間前の私だったら多分どうしようって困ったけれど、今は全く違う。
「うん……」
むしろそうしてくれと思えてしまう。
本音を聞けたからかもしれない。ジョルノが心を許してくれるから、私も委ねられるのだと思う。
「私も、今がいい。」
勇気以上に必要だったのは、ジョルノと真剣に向き合うことだった。
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