朝になって目を覚ましたら、熟睡して寝息を立てているウーゴが目の前にいて毎日のようにいちいちびっくりしてしまう。
ウーゴと初めてをしてからはお互いにオープンになって、いつも一緒のベッドで眠るようになった。最初の頃はなかなか寝付けなくて困ったけれど、段々と慣れてきたらちゃんと眠れるようになってきて……毎回ウーゴより先に起きて、寝顔を眺めては幸せに浸っている。
(睫毛長いな……)
そしてウーゴの寝顔を毎回見る度に改めて思うのだけども、この人ってばめちゃくちゃ恵まれた顔をしていらっしゃるのね?睫毛はふさふさで長いし鼻は高くて唇は綺麗なピンク色で……私の平凡な顔と比べてみたら、どこをどうしたって彼氏に勝てる部分が一つもなくて、毎回絶望に耽っている。
「んん……」
「おっ、」
悔しくてむくれていると、寝ているウーゴは何かを悟り私の方へとモゾモゾと近付いてくる。磁石みたいに私の体にくっ付くと、そのまま抱き付いて再び寝息を立て始めた。
重い……そして固い。筋肉と骨が私の体を締め上げてきて、私に関して言えば気持ちよさが一切ない。
「シニー……」
でも耳は贅沢なくらい幸せだ。寝ているウーゴは寝ぼけながら私の名前を呼んできて、気持ちよさそうに寝息を立ててくれている。触覚はともかくウーゴの温もりを全身で感じられるのはちょっと幸せだ。顔のパーツに意識を向けなければ寝顔は子供みたいで可愛くて、こんな可愛かったらそりゃあ変態さんもほっとかないよな……とか不躾なことを思い始めたりして、首を小刻みに横に振ってふざけたそんな感想を彼方へと飛ばすことに必死になる。
こんなウーゴを見られるのは多分この世で私だけなんだろうな……そう思うと胸がぽかぽかした。この人は私のものなんだと思えば顔がついついニヤついてしまう。ウーゴが私の大切なただ一人の人とか贅沢すぎやしないだろうか?
「ふふ……」
まさかウーゴと一緒に同じベッドで眠れる日が来るとは思わなかった。毎日続く幸せがずっと続くように頑張れたらいいなぁ……って、日々気持ちは強まっていくばかりだ。
「……ん、」
寝顔を見守っていたらウーゴが眩しそうに目を開けて、抱きしめている私にキスをしてくれる。
「おはよう、シニー。」
顔を離すと寝惚けているのか、普段のウーゴからは予想がつかないくらいの蕩けきった笑顔を向けてきて……超がつくほど可愛い。
「おはようウーゴ。」
好きだ……もう本当好きすぎる。可愛すぎて堪らなくて、頭が沸騰しちゃいそう。口では言わないもののそれは顔に出ちゃっていたようで、何も知らないウーゴは首を傾げてどうしたんだって訊ねてきた。それすらも可愛くて、癒されちゃって今日も一日頑張ろうって気分に繋がる。ウーゴと朝を迎えただけで私のやる気は充分補えた。
とは言っても今日は仕事はオフだ。やることも特になくて暇を持て余している。ウーゴは仕事でアジトに向かったしで今日はいないため、家の中には私しかいない。
「ああ〜……何しよう。」
ウーゴがいたら一緒にいるだけで時間が潰せるけれど……今日は残念なことにウーゴはいない。ジョルノもミスタさんも仕事だし、暇なのは私だけだった。トリッシュちゃんはいつも忙しいから会えないもん。皆働き者で偉いなぁ……
(困ったな……)
この家の掃除もいいけれど、下手に触ったりしたらウーゴを困らせるかもしれない。本棚にある本のタイトルをアルファベット順にしないといない時に黙って直しちゃったりするものから申し訳なくなってしまう。ナランチャが遺した勉強用ノートとかも並べてあったりするけれど、たまに覗いて順番とか関係なしに棚に戻すと特にウーゴは直さない。ナランチャのノートに関しては厳しくはないようで、どう並べてあっても放置していた。私物だけはどうしても譲れないものがあるみたい。
しかしたまに男性特有のだらしなさもある。自分の洗濯物を畳まないでイスの上に乗せたままだったり……靴下を裏っ返しで洗濯機にかけようとしたり。見ていてお父さんを思い出す。お母さんにだらしないわねって怒られてめちゃくちゃ謝るんだけれど、いつも繰り返して毎回叱られて……懐かしいな。
(もう一年は経ったんだなぁ……)
部屋の天井を見上げながら、自分の両親について考える。
サン・バレンティーノに実家には帰ったけれど、それから私が再点火を見たせいで眠る羽目になった後、そのせいで二人は消されちゃって起きて会いに行ったら死んでいた。凄く悲しかったな。でも最近はその時とは比べ物にならないくらい幸せでいっぱいになっているんだ。ウーゴと一緒にここで暮らすようになってから毎日楽しくてしょうがない。
ウーゴがいなくなって泣いちゃった時、遊ぶ相手がいなくなったことをお母さんに言ったら「じゃあ美味しいものを食べましょう」って何故か一緒に料理を作った。それから毎日学校から帰ってきたら美味しいものを作って、食べ続けていたら気が付いたら沈んだ気持ちは元気いっぱいになっていて。それから次にしたくなったのは勉強で、いっぱい勉強をしたらウーゴにまた会えるような気がした。でもそこでジョルノと出会って……段々と私の頭の中からウーゴが消えていっちゃったんだよね。
でもジョルノのおかげでウーゴにまた会うことが出来た。ナランチャが押した背中にも勇気づけられたりで、ウーゴの仲間に支えられて目が覚めて、トロイメライが生まれたら皆の願いを叶えられたんだ。思い返してみるとここまで来られたのは結果的にウーゴのおかげなんだろうなって、そう思うと絆って不思議だなって感じる。
「……そうだ。」
そう言えば、って具合で一つしないといけない仕事があったことを思い出す。
「メローネにお礼してない……」
あの人にまだお礼が出来ていない。悩みを聞いてくれてアドバイスまでしてくれて、あれから結構時間が経っているような気がするけれど、それ以来彼がいる家に立ち寄ってはいなかった。メローネのおかげでウーゴと分かり合えたから、私に出来ることがあるのなら何か一つお礼がしたい。
そもそも何でメローネはあそこにいるのかな?ジョルノが訳あり物件みたいになっていて困るって言うからトロイメライで姿を創ったけれど……地縛霊、なのかな。でもお墓は作ったらしいしそれはもう既に出来上がっている。標に向かえば多分彼は空へ向かえるのに……もうここにいなくてもいい頃なんじゃ……
(考えてもしょうがない。)
分からないならメローネ自身に訊いた方がいい。憶測を立てたって真実は一つしかないだろうし、知っている人間は多分本人だ。
「行くかぁ……」
私はイスから立ち上がると外へと飛び出して、あの誰もいないアジトの方へと向かってジョルノから教わった道を走り始めた。
裏道という裏道を抜けて、サッカーをしている子供達や壁に寄りかかって話をしている人達を避ける。そして場合によっては屋根を登ったりして足跡は付けず……そしてようやく辿り着いたらササッと扉の前までやって来て、背中を扉に向けながらトロイメライで鍵を開ける。
「お邪魔しまーす……」
扉を抜けたらメローネがいる部屋まで向かった。相変わらず家具もないし薄暗い。部屋まで辿り着くと再びトロイメライで彼を見えるようにし「チャオ!」
「ひっ!!」
……でも見えるようにしたらめちゃくちゃ目の前にいらっしゃって。慌てて後ろに後ずさると距離を置いて彼の方に目を向ける。
「何で避けるんだい、お嬢さん……」
いや避けるでしょ!ヘンテコな服を着た人がいきなり現れたらさ!ウーゴの服もヘンテコだけれど着ているのはしっかりしたウーゴだし、ウーゴだったらむしろ向かって行くと思う。でもこの人の場合目に纏った布とかめちゃくちゃ怪しいし、服装も朗らかにやばそうな香りがプンプンしているし、あと初めて会った時にした舌舐めずり……あれが一番ダメだった。第一印象はもうそれ以来最悪だ。出来ることならお近付きになりたくない人種……!
「まぁいいや、忘れられてたらどうしようって不安だったしな。」
警戒をする私にそう言ったメローネは、いつもと同じ場所へと座って頬杖を突く。こんなに拒絶を示してもへこたれることなくマイペースを貫こうとするたてか……今までは気にしたことがなかったけれど、この人はどの位ここにずっと一人でいるのかな?取り残されても焦ることもしないとか、私だったら耐えられないし耐えられなかった。
「まぁ……半分は忘れかけてたけど、」
私はメローネの目の前に腰を下ろすと残酷?な事実を述べながらちょっとだけ視線を逸らす。目を見て話したらダメだってジョルノが言っていたし、あとただ単にこの人がいたチームがチームだったから怖いのもあって素直に真っ直ぐとは見られない。今は無力だってことは分かっているけれど、私の中では複雑でしかない。
「……今日はお礼をしに来ました。」
でも、だ。複雑でも、たとえ死人でも、助けてくれたならお礼がしたい。そう思って今日はここにやって来た。
私は気持ちを貫くため、メローネに一つお礼がしたい。
「貴方のおかげでウーゴとは仲良くしてます。ありがとうメローネ。」
話を聞く。当たり前のことを教えてくれたことには感謝しかない。
「なるほどな……タダ働きかと思ったけど、報酬用意してくれるんだ?」
メローネは頷きながら「ディ・モールトいいぞ!」って言ってご機嫌そうに笑っている。別にそっちは働いたわけじゃないと思うけどな……話し相手をしてもらっただけだよね?大袈裟な気がするけれど、でもまぁ彼の言葉一つで私の世界が変わったから、働いたって気持ちでいてもいいのかな?
とりあえず本題だ。本題に移らねば。
「一つ気になるのだけれど、そもそも何でメローネはまだここにいるの?」
私が出来ることは限られている。何かを食べられるようにしてあげるとか……この前の冗談を叶えてあげることくらいしか出来ない。後悔があってもしここにいるのなら、それを叶えてあげた方が一番のお礼になると思う。
「んー、これをお嬢さんに言っていいか悩ましいんだが……」
私の質問に対してメローネは首を少し傾げると、ちょっと間を置いてから、静かにその理由を教えてくれた。
「……実はさ────」
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