メローネは意外にも足が速かった。おまけに細い腕なのに私をグイグイと引っ張れる程には力が付いているようで、しっかりと手首を掴みつつほぼ引きずりながら云百メートルも先にあるお店へまで猛ダッシュをして、ちゃっかりと閉店のギリギリの時間まで走り抜いてしまったのだった。
ゼェゼェしながらもそのまま中に入ると、最早疲れて余裕が無いせいで寄り道をせずビールのコーナーへと私達は真っ直ぐに向かう。目的を完遂することしか考えられない……運動したらビールっていう気持ちが強いのもある気がする。迷うことなくメローネは自分の分と私の分の二本を手に取ると、すぐに購入をして流れるように近くの広場へと向かい、空いていたベンチに座ったら一本ずつ分けて、蓋を開けたらもうぐびぐびっと飲み始めた。
「……はぁ〜美味い。」
「同じくぅ……」
これだこれ、独特の苦味にピリピリする炭酸が舌を刺激するこの感じ……今日はもう諦めていたもんだからこうやって今飲めていることに至福を感じて天に召されちゃいそう。凄く美味しいや。
「でもびっくりした。いきなりビール買いに行こうだなんてさ……どうかした?大丈夫?」
そもそも私は何でメローネがビールを欲しがっているのかを知らなかった。アルコールの魔力もあったのと緊張がほぐれてきたのとでようやくメローネに訊ねることが出来て、隣に座るメローネを見ながら訊いてみる。
「ああ……ハナのアル中が移っちまったかな?今日はこれって決めていたのもあるが……」
こっちをチラッとだけ見た後にメローネはこの理由を教えてくれて、でもすぐに前を向いて……髪がかかっていて表情が読み取れないけれど、何か悩みがあるのかんんんと唸り始める。
「アル中言うなし……」
別に言いづらいなら言わなくてもいい。大人になってから知ったけれど、煮え切らない何かやムカつくことがあるとそういう気分になるのは私もよく知っている。
「オレがいない間めちゃくちゃ飲んでなかったか?」
「飲んでないです〜!にっ一本だけで我慢しました〜〜!!」
「あんた今二本って言おうとしただろ。」
「……気のせいでしょ。」
二本目に突入をしたのはしょうがないよ。だって眠れなかったんだもん……メローネが心配でさ。
死んでも言わないけれど私も視線を逸らして言葉を誤魔化す。ビールを一口飲むとぷはっと息を吐いて、空を見上げてぼんやりと考えた。
(無事でよかった。)
最初はウザかったから見かけない日は平和だなって思っていた。なのにビールを交えて腹を割って話すようになったら平和だなとか呑気なことは思えない。なかなか帰ってこないとモヤモヤしちゃって心配になってしまう。まさか奇抜ファッションマスク男に恋をするとか思わなかったよな……人生って何が起こるか分からないから怖いよね。
「……今日はさ、」
「ん?」
綺麗な月の一点だけを眺めていれば、隣にいたメローネはぽつりと言葉を吐き出す。
「勇気が欲しかった。」
ちょっとこれだけじゃ意味が分からない。いきなりそう言われて言葉をどう返したらいいか分からなくて、私は思わずメローネの方へと振り返ってしまった。振り返ったら前を向いていたメローネはこっちを見て笑っていて少し気まずさを覚えそう。
「この前ハナに気持ち悪いことしただろう?だから謝りたかった。ごめんな。」
聞き返さず言葉を無言でまっていればメローネはこの前の話を持ち出してきて、もっとこの場を気まずくさせてゆく。思い出すともう顔が真っ赤になってしまいそうで、メローネを見ていられなくなってしまって私はついに地面へ視線を落としてしまった。
「別に……気にしてないよ。」
いや気にした。めちゃくちゃ気にした。お陰でこの数日間ずっっっとメローネのことばかりを考えて悩みに悩んでしまった。心がめちゃくちゃ荒れ狂って大変でした。
「でも何で私みたいなのとしたがるのかなーって思った。」
協力するぜとか言ってきやがったけれど、どこをどう見たってメローネの好みじゃないだろう。少し喜びつつも少しの落ち込みも感じてしまった。
「安産型じゃないし胸だって小さめ。ちっともメローネの好みじゃないでしょ?舌に興奮したにしてもさぁ……ね?こんな見た目だし。」
自分の体の良さはどこにもない。舌を見て興奮をしていたメローネだったけれど、あれはしょうがないと思う。シュークリームが爆発したら誰だって慌てて汚い食べ方を選ぶでしょ?クリームが勿体ないもんな!
つまりシュークリームで同じことをしたら皆一緒ってこと。相手だなんて誰でもいいんじゃって……行き着く答えはいつもそこ。やっぱり私はメローネにとっ都合がいい女だったのかってそう思っては勝手に落ち込んでしまう。答えだなんてメローネしか知らないのに、勝手に悲しくなるの。
「毎日疲れきった女より可愛い子に興奮してください。」
この国には可愛い子がいっぱいいる。こんなめんどくさいことばかり考えるような女よりも、素直で可愛い綺麗な心の子と交わってくれ。そっちの方が絶対メローネは幸せになれるよ。
言っていて虚しくなるけれど、これがこの前言われた時に考え抜いて出した答えだ。
(でも……)
そしてその後に、改めるように「これでいいのか」と考えた答え……それは全く違うものだった。
(本当はメローネに愛されたい。)
メローネが相手ならいいやってそう思う。キスをされたらどんな感じなのか考えてみたり、そういう流れになった時どうやって抱いてくれるのかだって興味がない訳じゃない。完全にメローネに心は向いている……それでもきっと、私とメローネとは価値観が違うから、こいつが求めている関係にだけは絶対に首を縦に振ることは出来そうにない。
別にやれるならいいじゃない?友達のままでいて気持ちよくなる関係とかもう望みは一応叶っちゃうでしょ?一番いいんじゃないかって、そう思いはする。でも違うんだ。そんなことを繰り返したら「好き」っていう気持ちにいつか殺されてしまう。そうなるくらいならバッサリと断るよ。
「んー……いや、それは無理だな。」
「え?」
他の子にしておけってアドバイスをした矢先、メローネはバッサリと無理だと言い張る。
「何で?」
下を向いていたものの拍子抜けをするあまり、思わずメローネの方へサッと視線を飛ばして疑問をぶつけた。
いやいや無理じゃないでしょ?メローネは美人さんなんだから、きっとまともな服を着て街中に立っていたら女の子が寄ってくるんじゃないの?あと黙っていればいい子捕まるんじゃ……?
視線が合うとメローネはビールのせいか何故か上機嫌になっているようで、にこにこしながら私を見つめる。
「どんな女よりハナがいいから。」
そしてやっぱり酔っているのか、血迷っているのではと思うこともちらほらと口に出し始める。
「ハナはオレにチキンをくれた。」
いやいやどういうことよそれは。チキンは欲しがっていたからあげたんだし……それだけで気に入られたとしたらちょっと複雑だ。
「性癖を話したら笑い飛ばしながら理解してくれる。」
それは成程なって素直に落ちてきたからであって……面白いこと言うんだなって素直に思ったから思わず笑ったの。言葉と意味が繋がったら変に納得しちゃったんだ。
「やることは大胆なのに控えめな舌使いだなんて最高だ。ディ・モールト……スゴく唆る。」
いやいやあれは貴様がシュークリームを投げたせいだろうが!勝手に唆るんじゃない!
「こんなでも気にしないって言ってくれるから居心地がいい。」
まぁ……いろいろ言いたさもあるけれど、確かに気にはしないっていうか、気にしたら楽しくないからしてこなかった。メローネと過ごす時間は馬鹿みたいに騒げて楽しいから、そう思うのは失礼だなって。
「私も居心地いいよ。」
しんどきに優しくしてくれたのもある。だからかな?イタリアに来てからはメローネといる時が一番落ち着くんだ。一人でいるよりもメローネがいれば安心出来る。
思わず口を挟んだら、メローネはニっと笑いながら私の頭に手を伸ばす。
「グラッツェ!」
……やっぱり中身はともかく綺麗な人だよなぁって思うな。一度笑えば夜なのに太陽みたいに眩しく見える。これだから美形はタチが悪い……照れくささとちょっとの癒しで顔の筋肉が痙攣しそう。
「オレみたいな奴にこんなことを言ってくれる女、この世のどこを探したって他にいないってさ、そう思うんだ。」
メローネは手を離すと視線を逸らした後、深いため息を漏らしてから自分のビールをぐいぐいと喉を鳴らしながら飲み始めた。
「そうかなー……」
しかし……そう思ってくれるのは素直に嬉しい。メローネにとって唯一な人間になれているとか最高でしかない。おまけにいい飲みっぷりだ。例えるなら温泉から出た後にコーヒー牛乳を飲む感じ?潔さがあってこの言葉はお世辞じゃなくて本心なのかなって思えしまうような、このシルエットだけでも説得力を感じる。
メローネが凄く美味しそうにビールを飲むもんだから私まで飲みたくなってきて、一気に残りのビールを飲み干そう喉を鳴らして飲み始めた
「だからハナとじゃあないとオレ多分興奮しないし勃たない。」
「んぶっ!」
ら、タイミング悪く付け足すようにそんなことをメローネが言い始めて。入れたばかりのビールは口から噴き出しそうになってちょっと地獄を見そうになった。
やめろよォ!飲んでいる時にいきなり下ネタぶっ込んでくるとか、今のこのほんわかした空気で平然とたっ……とかもう!ビックリしちゃうじゃん!!こんなのメローネといればしょっちゅうだし慣れてはいるけれど、ええ……
「もちろん勃ったらハナの中に挿入したいだろ?」
しかしメローネは下世話話を止める気配がない。
「舌に舌を絡めて舐め回したいし、舌以外だって舐め回したい。一緒に気持ちよくなりたいし朝まで余韻に浸りたいしな……謝ったばかりだがオレの本心はこんなにぐちゃぐちゃだ。止まらないんだよ、考え始めたらな。」
聞いているだけで恥ずかしくなる……そんなこと思っても普通正直に話さないでしょ?なのにメローネは開き直った上平然と話しちゃうんだ。簡単に素直に話せちゃうんだ。本能を剥き出して恥ずかしくなるようなことを。
「尻が小さかろうが胸が貧相だろうが、オレは他でもないハナが乱れる姿が見たい。」
何とかビールを飲み込んで喉を鳴らすと、メローネは少しだけ開いていた隙間を埋めるように横に体をくっ付けてくる。
「ハナが好きなんだ。」
そして一言そう言って、私からビールの瓶を取り上げたらメローネはそれを一気に飲んでしまうのだった。ああビールがー……って残念に最初は思ったけれど、でも言われたことを思い出すと最早ビールどころではない。頭の中はビールを奢ると言われるよりも遥かに嬉しい言葉で、メローネの声でいっぱいになってしまった。
(す、き……?)
サラッと言われたけれど確かに今そう言った。「好きなんだ」って……そしてその中身は濃厚で、決してサラッとしたものなんかじゃない。
(好き……)
ビールからメローネ、メローネからビールへ何度も視線を向けながら、頭の中でたくさん復唱をした。
これはライクなのかラブなのか、人として私が好きなのか異性として私が好きなのか。言われた言葉を一つ一つ繋いで考える。もしもライクだったらこんな貧相な奴を抱きたいとか言わないだろうしとか、もしもラブだったら貧相な奴でも抱きたいと思えるだろうかとか……正直アホみたいなことを考えては自惚れそうになった。鈍い人間ではないし大体で把握は出来るけれど、これだけは、この言葉だけは勘違いだったら嫌だなっていう気持ちが拭えなくて、何度も何度も確かなのかと考えた。
「……ラブ、の方?」
しかしこの答えはメローネのみぞ知るもので。確かな答えを出すにはメローネに訊ねるしかない。
「ああ。」
訊ねたら雰囲気が台無しになるかと思ったけれど、メローネは空気を読んだのかサラッと返事を返して私の手に手を添えてぎゅっと握ってくる。
(ラブの方なのか……)
訊いてみれば勘の通りだった。メローネの好きはラブの方……愛してくれている方。言葉を飲み込めたら飲み込めたで顔が燃えるように熱くなってきて、恥ずかしさと照れとでさっきみたいにメローネの方に顔を向けられそうにない。向けられない代わりに握られているメローネの手を、溢れそうな喜びと声を堪えて握り返してみた。
(嘘みたい……)
夢じゃないだろうかこれは?まさかのまさか、メローネが私に好きっていってくれる日が来るだなんて信じられないというか驚きでいっぱいというか、軟派そうに見えてはっきりと言い張ってくれたせいか、信じたいのに信じられないというか……ギャップがありすぎてもうどうしたらいいか分からない。まさかビール意外にも舞い上がれる対象がこんな変態だなんてとか思いもするけれど、こんな変態が好きな私にとっては最早どうでもいい考えだ。
でもそうか、そうなんだ……
「わ、私……」
両思いだったんだって知ると一気に緊張していた体から力が抜けてくる。さっきまで友達なのかと不安になっていたのになぁ……セフレになりたいって言われたらどうしようか考えていたのにな?自意識過剰だと思うことばかり考えていた。自分の自意識を超えた言葉を貰ったらもう、気持ちを隠し通すっていうさっきの考えは馬鹿馬鹿しい。
「私も!メローネが好き!」
ビールを飲んだせいか意地が緩む。
「メローネがいないと寂しいし、こうやって一緒にビール飲みながら話す時間がいつも恋しくてたまらない。夜だけっていうのは……凄く物足りない!」
おまけに勢いまで出てきて、爆発するように思うことをぶち撒けた。
「いっつも仕事ばっかだしおまけに畜生なこと言われたり、もう毎日疲れてた。わんこまで死んだって聞いたらもう絶望しかなかった。でもメローネと出会ってからは楽しくて、夜があるから頑張れて……ヤケになって飲んでたビールも一本で我慢出来るようになった。」
メローネはビールの次に裏切らない。いつだって楽しい時間をくれるから、一緒に馬鹿騒ぎをして嫌なことを忘れさせてくれるから。私も裏切らないように酷い下ネタも楽しく聞いて素直に笑った。心から笑えたんだよ。
「多分そこにメローネがいたから、どんな話題になろうが楽しく過ごせたんだ。」
好きじゃなかったらこんな変態とっくに放っておいてるよな。
「私も他でもないメローネがいい。」
もうずっと恋愛とかしていなかったし忙しいからしなくてもいいかなって諦めていたのに、こうやっていざ恋愛をしてみると忙しさすらスパイスになって、メローネとの時間がもっと楽しいと感じる。
夢を見るような乙女じゃないからメローネに夢は見ない。素直なまま全部さらけ出しているメローネに惚れたんだ。
「メローネ以外は絶対嫌。」
メローネがいるならもう、ビールは飲まなくても大丈夫……多分!
顔を上げずにここまで言う。言った後で恥ずかしくなってきてちょっと目頭が熱い。
(こんな告白したことない……!)
学生時代に恋愛はしたけれど、こんなしっかりとした告白とかしたことも受けたこともなかった。流れのままに付き合って流れのままに終わって、全部雰囲気から始まったような気がする。今思えばあれは恋だったのかすら分からない……青春が今頃やって来たとか変な感じだ。
「で、でも関係が変わったって簡単には股は開かないからね?私の都合とか考えて……」
とりあえずいずれはしたいと思ったって今はまだ心の準備はまだ出来ていない。流れるままなのは後々虚しいし、そうなったって簡単にはさせないと決めていたからメローネにちゃんと言っておく。
「ふふ、それでこそハナだ。」
でもメローネは意外にも嫌がらず褒めるようにそう言ってきて、私から手を離すと頭を上げない私の顎に手を添えてくる。無理矢理クイッと持ち上げては自分と見合うように目線を合わせてきて……街灯に照らされたメローネの顔はやっぱり綺麗。素敵な男性でしかない。
「最初から簡単には股は開かないって予想はしてたからな!安心してくれ、覚悟はしたぜ?」
一体どういう覚悟してんだってなるけれど、メローネの目は珍しく真剣だ。
「どんな予想してんの……」
本当この人は人のことをよく見ているというか、よく知っているというか……変態だから行為まっしぐらかなとか心配したのは間違いだったかな?
「まぁ、まだやる気がないならやる気にさせるまでさ。」
「え?」
おかしくて少し声を出して笑っていたら、メローネは次の瞬間にはそんなことを言い始めて。
「こういう風に……」
綺麗な顔を近付けたらそのまま私の唇にキスをしてくる。
「ん……」
もうずっとこんなことをしていない。やり方とか忘れちゃったからちゃんと反応が出来ないし、そもそも心の準備が追いつかなかった。ただ触れているだけでも緊張で体がカッチカチになって動けない。どうしたらいいかちっとも分からないから自分の服を掴んでただされるがままされ続けるけれど、メローネは弾むように触れながら人の下唇を啄んで遊んでみたり、味見をするみたいに唇を舐めてみたりと何だか楽しそうに動き回っている。たまに笑い声を漏らしながら何度もくっ付いては離れたりで……何だかくすぐったい。こんなキスは初めてだ
「……ビール味。」
顔が離れたらいつもの舌舐めずりをしながら当たり前なことを言われるけれど、メローネのその舌に唇を舐められたとか綺麗な唇が私の唇に触れたとか、意識をしてしまうと最早どんな顔をしたらいいのか分からなくて困る。
「美味いでしょ?」
語彙力を失ってしまったのか馬鹿みたいな言葉を返してしまった。外の空気の冷たさが火照った体を冷やしてくれるけれど、まだ顎にあるメローネの手を意識すると溢れんばかりに熱がまた上がってきて、心臓だなんてバクバクと音を立てて暴れまくっている。ちょっと頭もくらくらしそう……時間が経って酔いが回ってきたかもしれない。飲む量を減らしたら少量でも酔うようになっちゃったか?
「ハナを経由したんだから美味いに決まってるだろう?」
メローネは笑顔でどことなく変態じみたことを言うと、私から手を離してスっと立ち上がる。
「確かにビールは裏切らないな。今日はしっかりと助けてもらえたぜ。ディ・モールト、よし!」
ビールが入っていた瓶二本をバスケのシュートを決めるが如くゴミ箱へと見事に投げ入れると、メローネはこっちに振り返って親指を立てては当たり前なビールの素晴らしさに太鼓判を押した。ついにメローネもビールの良さが理解出来たのかとちょっと感動を覚えそう……!そうだよ!ビールは裏切らないし困った時に助けてくれる救世主なんだよ!!とりあえずビールっていう言葉に何度助けられたことか……ってそれは違うか?あれ?
「ハナ、」
訳も分からなくなってきつつ少しばかりジーンとしていると、メローネは私の目の前へと立ち塞がっては腰を屈めてニヤリと笑う。
「これからは飲むだけの付き合いじゃあない。半々だ。ドロッドロに甘ったるい時間にも付き合ってもらうからな?」
聞いているだけで恥ずかしい。ドロッドロに甘ったるい時間とかそんな言葉をかけてくれたのは今まででメローネただ一人だ。おまけにメローネの顔がちょっといい顔だったもんで、少しばかりドキドキしてしまう。
「望むところだよ。」
メローネとなら甘い時間も大歓迎だ。もうそれを嫌がったりはしない。だってメローネとそうしたいって一度でも思ったんだもん。私の飲みに付き合って貰っているならメローネのしたいことにも付き合わないとフェアじゃない。
(それにメローネがビールを飲めば一本分増える……!)
そう、メローネに一本飲ませたら口の中も一本分のアルコールに包まれる。メローネ曰く経由したら美味しいらしいし、これは最早期待大なのでは?
あと股を開くのは別問題だけれども……絆されるのも時間の問題だ。だって今もの凄く幸せなんだもん。喉から手が出るほどメローネが欲しくなったらとか考えるともう……子供の恋愛しかしたことがないから今の心境にめちゃくちゃびっくりしている。
でも今はまだ喜びに浸れたらそれだけでいい。メローネといられる時間を増やせたらもう、それだけで私は幸せだ。
「それでこそオレが惚れた女だ!じゃあハナ、帰ったら早速キスしまくろうぜ?外はダメだ寒くて死ぬ。」
「流石メローネ……雰囲気台無しだ。」
一本のビールと甘ったるいメローネにベロンベロンに酔い潰される未来を想像すると、もう会社爆発しないかとか考えられない。
「……ハナが暖めてくれたら外でもいいんだが?」
「よし帰ろう!すぐ帰ろう!」
「照れ屋さんか〜!?」
それよりも私が今爆発しそうで抑え込むのに手一杯だから。
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