「ミョウジ家のナマエ」


焼き尽くされる森と共に、わたしは怪物に飲み込まれて死んだ。

ばさりと風に煽られたカーテンがはためく。窓から燦々と差し込まれる太陽の光が眩しかった。



「棘が君を生かしたから、残念ながら君は死んでいない。君が見たのは呪霊という平たく言えば呪いの一種で、君が失ったのは呪力だよ」



この人の紡ぐ言葉が一つも理解できなくて、わたしはただぱちぱちと瞬きを繰り返していた。取り敢えず、この人は、わたしの体験した出来事について何かしらの理由を知っているということはわかった。

それより彼はどうなったのだろう。無事にあの森から脱出できたのだろうか。それだけが無性に気にかかっていた。

五条と名乗ったこの人はわたしの考えなどお見通しのようで、にこりと笑みを深くすると足を組み直して言った。


「棘はぴんぴんしてるよ」
「トゲ…?」
「君と行動を共にしていた男子」
「……!」


ほ、と胸を撫で下ろす。
しかし、わたしが心配するまでもなかっただろう。彼の体力や冷静さは身を持って知っていたから。もしかしたら、あの後にわたしを助け出してくれたのも彼なのかもしれない。どうやったのかは検討もつかないけれど。


「棘に会いたい?」
「え」


思考が固まって、脳裏に浮かぶ彼の横顔。その背中の温度の高さ思い出せば、顔に熱が集中し始める。会いたいか、会いたくないかと言われれば、会いたい。


「会いたい、です」
「いいよ。ただし、君がこの条件を飲んでくれたらね」


人差し指を唇に当て、妖艶に微笑む五条さんに、わたしは頷きを返した。



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