思い出のあとさき

思い出


 まだサーカスにいた頃、出会った女の子がいる。
 いつサーカスを見たのかはわからないけれど、トレーラーの近くにいたのを見つけた。
 彼女にとっては二度目の、僕にとっては最初の出会い。
 たまにいるんだ。サーカスのチケットは手に入らないけど、一度見たショーが忘れられないっていう子。
 こっちも仕事だから、そういう子とは話さないようにしているんだけど、その子はなんていうか……特別だった。

 その子の目はキラキラ輝いていて、今まで浴びたどんなスポットライトよりも眩しくて
 その子の声は蕩けるように甘くて、今まで浴びたどんな拍手喝采よりも心地よくて

 だから彼女の特別になりたくて、彼女とだけは毎日のように話した。
 もっと特別になりたい。そうすればあのキラキラした目も、甘い声も、全部手に入る。
 もっと、もっと特別になりたい。そんな風に思った子は初めてだった。
 僕の両親が死んでしまって、会うこともなくなったけど、彼女との思い出はまだ僕の中に残っている。
 綺麗な――とても綺麗な、初恋の思い出として。
[*前]- 1 - [次#]
[しおりを挟む]
目次 戻る
美しくなんて死ねると思うな