思い出 まだサーカスにいた頃、出会った女の子がいる。 いつサーカスを見たのかはわからないけれど、トレーラーの近くにいたのを見つけた。 彼女にとっては二度目の、僕にとっては最初の出会い。 たまにいるんだ。サーカスのチケットは手に入らないけど、一度見たショーが忘れられないっていう子。 こっちも仕事だから、そういう子とは話さないようにしているんだけど、その子はなんていうか……特別だった。 その子の目はキラキラ輝いていて、今まで浴びたどんなスポットライトよりも眩しくて その子の声は蕩けるように甘くて、今まで浴びたどんな拍手喝采よりも心地よくて だから彼女の特別になりたくて、彼女とだけは毎日のように話した。 もっと特別になりたい。そうすればあのキラキラした目も、甘い声も、全部手に入る。 もっと、もっと特別になりたい。そんな風に思った子は初めてだった。 僕の両親が死んでしまって、会うこともなくなったけど、彼女との思い出はまだ僕の中に残っている。 綺麗な――とても綺麗な、初恋の思い出として。 [しおりを挟む] 目次 戻る |