墓前 弟の名前が書かれた石は無機質だった。なにか語りかけても返事は無い。当然だ。彼は死んでる。 死んでるんだ。 あらためて認識した瞬間眩暈がして吐き気がこみ上げてきた。目が回る。指先が痺れている。身体が上手く動かない。 ジェイソンの死を知った時と似たような感覚だった。 あの時の衝撃は今でも忘れない。頭が真っ白になってただ『NO』と繰り返した。違う。嫌だ。まさか。間違いだ。 葬式にさえ出られなかった。出なくてよかったのかもしれない。平静を保てる自信がなかったし、泣き崩れて何を言うかわかったものじゃない。 今、こうして覚悟して墓の前に立っているだけでも叫びだしてしまいそうだった。 怒りと悲しみが腹の奥で暴れている。吐き出せば楽になるかもしれないと思いながらなんとか耐えた。 ただひとつのことを、弟の墓の前で考えながら。 [しおりを挟む] 目次 戻る |