story.16

情事後、このままでいるのも嫌なので軽くシャワーを浴びていた。

そこでふと結構優しく抱かれていたんだなと気づいた。
ドフラミンゴが激しくする時は必ず途中で意識がなくなってしまうが、それが今回は最後まで意識を保っていれてるのが証拠だ。
情事後直ぐにシャワーを浴びるのもどれくらい振りだかもわからない。

そして、次に頭を過ぎったのが、先程ドフラミンゴに情事後に縋り付く様に言われた言葉と光景だ。

──「シルヴィア、お前だけはおれから絶対離れていくなよ」

正直、何を今更だと思った。
シルヴィアはこれまでどんなことがあろうとも、こうして長年付き添って来たと言うのに。今更なぜ恐れているのかわからない。

だがドフラミンゴが不安になったと言うなら、少なからずシルヴィアに原因があったのだろう。
一体何が原因だったかわからないが、早くその不安を取り除いてあげたい。シルヴィアは、今まで通りこれから先もずっとドフラミンゴと一緒にいるのだから。

そこまで考えて、シャワーを終えてバスローブを着てリビングへ向かった。

すると、先にシャワーを済ませていたドフラミンゴがサングラスを装着済みで椅子に座り、食事を取っているのが見えた。
彼の隣にある椅子に座り、シルヴィアも食事を始めた。

『ご飯すっかり冷めちゃってるわね』
「フッフッフッ、そうだな。だが冷めても食える物だからな」

運んで来てもらった食事はドフラミンゴの言う通り、冷めても美味しい物だった。コロッケと南瓜の煮物と卵スープは冷めてても十分に美味しいと思った。サラダもついていて、生ハムが入ったサラダも実に美味しい。


そして食事を済ませた2人は、今は広いソファに座り寛いでいる。
ソファに座っているシルヴィアの膝に、横になったドフラミンゴの頭が乗っていて、膝枕をしている。
シルヴィアはそんなドフラミンゴの頭を、柔らかい表情で優しく撫でている。ドフラミンゴはサングラスをつけていて表情はわからないが、その口元は緩んでいる。

『ドフィ、もう少しで七武海が本拠地へ移動よね?』
「…そうだが、面倒くせェ。一緒にサボろうぜシルヴィアチャン」
『うふふっ、ダメよドフィ。センゴクうるさいんだから』

眉間に皺を寄せ、体を動かしてシルヴィアの腹に顔を埋めて言ったドフラミンゴは、見た目と年齢の割には大分子供っぽい。
だが、そんな彼を困った様に見つつも、可愛いと思ってしまうシルヴィアだった。

「奴らは白ひげに手を出したら、世界へどれだけ影響を与えるかわかっちゃいねェんだ。おれァ乗り気じゃねェ」
『もうドフィったら』

だが、ドフラミンゴの言ってることは最もだ。
"火拳のエース"を処刑するということは、家族を取り戻しに必ず"白ひげ海賊団"が傘下を引き連れて必ずやってくるだろう。

白ひげの力は未知数。世界への影響力も未知数。
更には白ひげは、危険に晒された幾つもの島や国を「おれの島にする」と言って守っていると聞く。

その白ひげをもし仮に失ったとしたら、どれだけの島が滅ぶかわかったものじゃない。どれだけの人を失うかわかったものじゃない。

何だかんだシルヴィア自身もドフラミンゴと同じく乗り気ではないため、ドフラミンゴに危険が及んだから、彼を守る程度の動きしかしないつもりでいる。

『とりあえず、他の七武海の人達は集まってる事だし行きましょドフィ』
「…あァ」

シルヴィアが七武海の人達が集まってる場所へ向かう様にドフラミンゴに言うと、ドフラミンゴは渋々といった感じでシルヴィアの膝から頭を上げ、いつもの服装に着替えたりなど準備を始めた。

「…あ、そういやァシルヴィアチャンの戦闘用の着物が今日の朝にドレスローザから届いたから、そこのクローゼットに仕舞っといたぜ、フッフッフッ」
『あらほんと?ベビー5に届ける様に頼もうとしてたけど忘れてたから助かったわ、ありがとう』

シルヴィアは普段は着物の姿で過ごしている。戦闘時でも変わらず着物だが、戦闘用の着物は普段着ている着物とは違い、動きやすいデザインになっている。

シャボンディ諸島から直接ここへ来たため、王宮にその戦闘用の着物を置いて来てしまっていたので、ベビー5に頼もうとしたがこちらに来た当日は直ぐ情事が始まり途中で寝てしまって、それからすっかり忘れていたので見兼ねたドフラミンゴが手配してくれたのだろう。実に気が利いて優しくいい男である。

言われた通りクローゼットを開けると、確かにそこには戦闘用の着物があった。それを手に取り、バスローブから戦闘用の着物姿に変えた。

普段の着物は丈が地面に付くくらいまで長いし袖が丈同様に長いのに対し、シルヴィアの今着ている戦闘用の着物は丈がスカートの様に膝くらいまでの長さまでしかなく、袖も少しふんわりしてる物で全体的に身動きがしやすいスタイルとなっている。
因みに、着物の色は白で帯の色も白、そして模様は真赤な牡丹と金色の牡丹がいくつも咲いている物となっていた。

そして、白狐一族に伝わる双剣を腰に差し二丁拳銃を懐に入れ、準備は完了した。

「パーカー姿もバスローブ姿も中々そそられたが、やっぱりシルヴィアチャンは着物姿が一番いいなァ!フッフッフッ!」
『うふふっ、ありがとう』

ドフラミンゴからの最高の褒め言葉に、シルヴィアは頬を赤く染め本当に嬉しそうに微笑んだ。

『待たせてごめんなさい、行きましょ』
「あァ」

準備はとっくに終わって待っていてくれたドフラミンゴに一言謝り、七武海のメンバーが待つ部屋へ向かった。