story.17

シルヴィアとドフラミンゴが七武海のメンバーが集まる部屋へ向かってしばらく歩いていると、やがて一つの部屋の前で止まった。3mは超えるであろう大きな襖を構えた部屋である。

ドフラミンゴがその大きな襖をスパンと音を立てて開け、中へ入って行く。

『ごめんなさい、待ったかしら?』

大きな襖を開けた先に見えたのは、やはり既に集まっていた七武海のメンバーだった。

申し訳なさそうに部屋に入って行くシルヴィアに対し、ドフラミンゴは堂々と七武海のメンバーが座っているテーブルへと行った。テーブルの上には飲み物やツマミなどが用意されている。

だが、集まってるメンバーが少ないことに気づいた。
いたのはミホーク、クマ、モリアの3名だけだった。

『あら?何だか少ないわね』
「他のメンバーはまだだ。それにしても主は何故ここにいる?」

ソファに長い大剣を背負って座っているミホークが質問してきた。

「フッフッフッ、シルヴィアチャンは今回センゴクに特別に呼ばれたんだよ、力を貸してくれってなァ!フッフッフッ!」
「なるほど、ついにセンゴクも部外者を呼ぶ程血迷ったか」
「キシシシシ!!違いねェ!!」

ミホークの質問にシルヴィアが答える前に、既にソファに脚を組んで座っているドフラミンゴが答えた。すると、ミホークとモリアは嘲笑う様に言った。


「失礼します!」

その時、大きな襖が開いた。
そこへ視線を向けると、2人の海兵が立っていた。

「皆様、お時間です。港町までご同行願います。」

こうしてシルヴィアを含む4人の七武海のメンバーは港町へ移動した。









港町へ移動すると、見覚えのある姿を見つけた。その人物は静かに部屋の窓から外を眺めていた。
やがて、その人物がシルヴィアに気づいた。

「!!シルヴィアじゃないか!!久しいな、会いたかったぞ!!」
『!!ハンコック!!久しぶりね!!』

その人物とはハンコックだった。
ハンコックはシルヴィアの元へ駆け寄って来た。そんなハンコックをシルヴィアは笑顔で受け止めた。

実は2人、随分前に行われた世界会議で、普段出席しない2人がたまたま居合わせ、その時に意気投合して仲良くなっていたのだ。

「シルヴィア、お主相変わらず可愛いのう!!」
『うふふっ、ハンコックも相変わらず美人ね』

ハンコックとシルヴィアは抱きしめ合い再会を喜んだ。

──あら?なんかハンコックから嗅いだことのある人間の男の臭いがするわね。

その時、シルヴィアは気づいた。ハンコックの女らしい色気のある匂いに紛れて、以前に嗅いだことある臭いがすると。
白狐一族の者は人一倍嗅覚が敏感なので、シルヴィアは気づいたのだ。

気になりはしたが、シルヴィアは黙っておくことにした。

「それにしてもシルヴィア、随分前に会った時と外見がちっとも変わっておらぬな!!」
『代々白狐一族の者は20歳を過ぎたら、外見の成長が止まってしまうのよ…だから外見が変わらないのはそのせいね』

ハンコックの言葉にシルヴィアは苦笑い気味に説明した。その説明にハンコックは納得した様で、頷いていた。


「シルヴィア、そんなとこで突っ立ってねェでこっちへ来いよ」

その時、ソファに脚を組んで座っているドフラミンゴに手招きをされた。素直に行こうとすると、ハンコックに止められた。

「シルヴィア、行く必要などないぞ!!お主は何故あの様な奴と共におるのだ!!解せぬ!!」
「おいおい、随分と言ってくれるじゃねェか、ボア・ハンコックさんよォ!!」
「黙れ!!気安くわらわの名を呼ぶでないわ!!」

ハンコックはシルヴィアを背に隠す様にして、ドフラミンゴに威嚇していた。

『ハンコック、ドフィを悪く言わないで?わたしが惚れた人なのだから』
「なっ…!?お主がそう言うなら…」

シルヴィアが隠されている背中から移動して、ハンコックの目前まで来て真剣な眼差しで言うと、ハンコックはそんなシルヴィアに戸惑いつつも素直に応じた。

『ありがとう、ハンコック。それにあの人、悪い様に見えて結構優しいのよ』
「……とてもそうには見えぬが…」
「フッフッフッ!おれが特別優しくするのはシルヴィアだけだ!」

シルヴィアのドフラミンゴは結構優しい発言に、ハンコックは怪訝そうにドフラミンゴを見つめた。
そんなハンコックに付け足す様にドフラミンゴが言った。

すると、ハンコックが愛じゃなと呟いた。その言葉と表情に驚愕した。彼女は頬を染めてまさに恋する女の顔をしていたのだ。

『は、ハンコック…?』
「シルヴィア!!わらわも恋が実るようにがんばるぞ!!」
『えっ…!?相手は誰なの!?』
「それは今は言えぬのじゃ…すまぬシルヴィア…」

ハンコックはそう言うと、最初この場へ来た時に見たのと同じく、切なそうな表情で窓の外を見つめていた。そんなハンコックに驚愕した。

「シルヴィア、そいつァほっといていいだろ。そろそろこっちへ来い」
『…ええ、わかったわ』

今はそっとしておくのがいいだろうと思い、しびれを切らしているドフラミンゴの元へ行った。すると、ドフラミンゴの膝の上へ座らされた。

『ちょっとドフィ!!みんないるのに恥ずかしいわ!!』
「フッフッフッ!別にいいじゃねェか!」
『…もうっ』

ドフラミンゴの膝へ座ると、男性陣の視線が突き刺さってきた。
それに耐えきれなくなりドフラミンゴの膝から降りようとするが、彼に腹に腕を回されガッチリと掴まれているため降りられなかった。
なので諦めて好きな様にさせることにした。

「それにしても…白ひげ1人に随分神経尖らせてんじゃねェか?死刑執行まで3時間もあるってェのにィ」

モリアは集まってるメンバーを見渡し、最後に襖の所へ立っている海兵を見つめて言った。

「ええ、そうなのですが…不測の事態も測定されますので…」

そんなモリアに海兵は額に汗を浮かべながら答えた。
その時、クマが立ち上がった。配置される位置の場所へ向かうのだろう。

「やる気満々じゃねェか!!」
「……」
「フッ、愛想のねェ野郎だ…」
『もうドフィったら!直ぐそういうことを…』

ドフラミンゴはそんなクマに笑いかけるが、クマからは何の反応も返って来なかった。
そんなクマに些か不機嫌そうにドフラミンゴがクマが愛想がないと言い、シルヴィアはドフラミンゴを咎めた。

その時、ドフラミンゴとシルヴィアが座るソファの隣にいたミホークも、クマに続いて部屋を出て配置へ向かおうと歩き出した。

「遅れを取るわけにはいかねェなァ!?世界の強者共の影も死体も取り放題!!おれにとっちゃァ絶好の草刈場だからなァ!!キシシシ!!」

そう言ってモリアも続き、

「あの、ドフラミンゴ殿とシルヴィア殿とハンコック殿もお早く配置へ…」
「わかっておるわ!気安く名前を呼ぶな!」

更にはハンコックも海兵に言われ続いた。

「フッフッフッフッ」
『ドフィ、わたし達も行きましょ』
「あァ、そうだな」

最後にドフラミンゴとシルヴィアが続くが、ここで問題が発生した。なんとドフラミンゴはシルヴィアを姫抱きにし、進んだのだ。当然シルヴィアは抵抗した。

『ちょっとドフィ!!わたし自分で歩けるわ!!』
「フッフッフッ!シルヴィアチャンはお姫様だからこのまま行くのがお似合いだ!
──なァ、そうだろう?」

ドフラミンゴは海兵に同意を求めた。
突然のことに海兵は何て答えたらいいのかと困っていた。

「えっ!?い、いやそれは…!!」
『ドフィ、彼が困ってるわ!!自分で歩くから大丈夫よ!!』
「いいからシルヴィアはこのままでいればいいんだ。──わかったな?」
『……もうっ!いつもそうなんだから!』

諦める様子のないドフラミンゴに、シルヴィアは仕方なく抵抗を止めそのままにした。するとドフラミンゴは機嫌が良さそうに配置へ向かった。


そして丁度その頃、海軍の最高戦力の大将3人とセンゴクも配置へ着こうとしていた。

ポートガス・D・エース公開処刑まであと3時間──