story.8

「ぼ、ぼくもアランダインさんの娘さんとっ…な、なかよくなりたいっですっ!!」

ロシナンテがこう言った時、嬉しそうに頷いてくれた両親とアランダインさんとは別で、兄のドフラミンゴは眉間に皺を寄せ不機嫌そうにして、一瞬だけ敵意が込められた視線を向けられた気がした。
だが、大好きな兄にそんな視線を向けられても、やはりロシナンテはその女の子と仲良くなりたいと思った。

──友だちよりもっと特別な関係になりたいえ!!

そう強く思ってしまった。まだ会った事もない相手なのに、こんなこと思うなんてどうかしてると思った。こんな気持ちは知らないし、こんなこと思ってしまうロシナンテは怖いと思った。
だが、1度思ってしまったら止められそうになかった。

そう思ったその時──



「五代目!宴の準備が整いました!」

2人の若い男の人が来て、アランダインにそう告げた。若い男の人はアランダインの白寄りの白銀の髪と違い、銀色寄りの白銀の髪に銀色の瞳をしていて兄弟なのかどことなく似ていた。

「そうか、わかった。ならランとレン、お前達は天竜人ご一家を会場への案内を頼んだ。私は娘を迎えに行く」
「「はっ!!承知致しました!!」」

アランダインはそう言うと、ランとレンと呼んだ人を残して娘を迎えに行った。

「それでは皆様、会場に案内しますのでおれに着いて来てください。」

そしてロシナンテ達はランとレンに連れられ、真っ白な大きなお城の中に入り会場へ向かった。会場に着くとそこには白銀の髪色の人が沢山いて、細長いテーブルには凄い量の料理やらお酒やら等が沢山並べられていた。その量が凄くて、両親とドフラミンゴとロシナンテは驚いていた。

「おお!!随分豪勢だな!!」
「はい、そりゃもちろん」
「あなた方への姫様のお披露目も兼ねてる宴なので」

驚いてるロシナンテ達を見て、レンとランという人はどこか得意気に満足そうに頷いてそう言った。

「なんか申し訳ないな、気を遣わせてしまったみたいで…」
「何言ってるんですか、こちらが招待したのでこれは当然の饗応です!」
「そう言ってもらえるとありがたいな!」
「どうもありがとう!」

両親とランの会話を、いつもの様に母の足に抱き着いたままボーッと聞いていると、兄のドフラミンゴがレンとランを見て何やらそわそわとしている事に気づいた。するとランとレンもドフラミンゴの視線に気づいて、怪訝そうにドフラミンゴを見返している。

「おれ達に何か言いたいことでも?」
「アランダインさんの娘さんはどんな子だえ?」

どうやら兄のドフラミンゴは、本当にアランダインさんの娘さんの事が気になって仕方がないみたいだ。それはロシナンテも同じで、兄と同じ様にそわそわしながら言葉を待った。母と父はその様子を微笑ましそうに見ていた。

「姫様はまさに天使の様な人ですよ、見た目も中身も」
「誰にでも優しくて、一族の皆に愛されてる」

そう言ったランとレンはとても優しい表情をしていて、その女の子の事がこの2人は本当に大好きなんだとロシナンテは感じられた。きっと兄や両親もそう思っているだろう。

「姫様の事が気になってるのか?」
「そうだえ!」
「なかよくなりたいんだえ!」
「姫様は誰とでも仲良くなれる様な人なので、あなた方もきっと仲良くなれるでしょう」

その言葉を聞いて目を輝かせた。隣の兄のドフラミンゴも見るとそんな顔をしていた。
もっとその子の話が聞きたくて、ロシナンテも尋ねようとしたその時──



「姫様達が来たぞ!!」

白狐一族の人がそう言ったのが聞こえてバッ!っと襖の方へ振り向いた。そこにはアランダインと凄い綺麗な女の人の間に、ロシナンテとドフラミンゴと同い歳くらいの小さな女の子がいた。その子を見た途端、心臓がドクンっと大きな音を立ててバクバクと鳴り出して、熱でも出たのかなって思うくらい身体が熱くなってた。

「か、かわいいえっ!!」

ロシナンテは無意識にその言葉が口から出ていた。そしたら兄のドフラミンゴから鋭い視線を向けられた気がするが、そんな事気にしてなれないくらい夢中でその子を見続けた。

「まあっ!!なんて可愛らしいのでしょう!!」

母がそう言っていて、本当にその通りだと思った。

ほぼ白に近い白銀の髪が綺麗に結われていて、頭の上には色々な花が咲いている飾りがついていてそれが白銀の髪によく栄えていた。そして、一際目を惹くのはそのほんのりと化粧というものをされている小さい顔だった。
タレ目気味の大きなくりくりの目は宝石の様な薄紫色の瞳をしていて、筋が通った高い鼻は小さくて、唇は形の良いピンク色でぷっくりとしていてぷるぷると美味しそうだった。

──「姫様はまさに天使の様な人ですよ、見た目も中身も」

そこで先程のランの言葉が頭を過ぎった。本当にその通りだと思った。それくらい可愛いかったのだ女の子は。

そう思っていると、その女の子がアランダインさんに手を引かれて、ロシナンテ達の目の前に来ていた。間近で見るその子は遠くで見ていた時より益々可愛くて、息を呑んでその子を見つめた。
その時、その子と目が合った。その瞬間、先程よりもっと強く心臓が鳴り出して苦しいくらいだった。

そして、いざ本人を目の前にしたら会う前より益々友達よりもっと特別な関係になりたいという気持ちは強くなっていたんだ…。
この胸に渦巻いている怖いくらい強い思いは、いったいなんだろうか……。