story.15

ドンキーホーテ家に着いて、ホーミングはシロノ国にいるシルヴィアの父のアランダインに今日の事を報告しに行った。なのだが、ホーミングが何やら深刻そうな顔で直ぐ戻ってきた。

『な、なにかあったんですか…?』

不安になり、ホーミングに聞いた。

「……シルヴィアちゃん、もしかしたらアランダイン達の身に何かあったのかもしれない……」
『えっ…!!?』

その衝撃的な言葉に驚愕してホーミングに詰め寄った。

『どうゆう事ですか!!!?』
「アランダインと連絡取れないんだ…」
『そ、そんな…っ!!!』

ホーミングの言葉を聞いて、シルヴィアの目に涙が溜まってきた。何があったっていうの。いつもは直ぐ電伝虫を取る父が、それがないなんておかしい。

「だが、もしかしたらたまたまかもしれない!明日もう一度試してみよう!」
『…、…はい、そうですよね…!たまたまかもしれない…!』

そうだ、まだ判断するには早い。
だが、やはり不安は消えなくて瞳がゆらゆらと揺れてしまう。そんなシルヴィアを見兼ねてか、ホーミングが励ますように優しく頭を撫でてくれた。
ロシナンテとドフラミンゴの様子が気になり2人を見ると、こちらを心配そうに見ていた。それを見て2人を心配させまいと笑顔を作ったが、引き攣っていたのか益々心配そうにされたので、申し訳ない気持ちになった。


──翌日

ドフラミンゴとロシナンテは食事をしていて、シルヴィアとホーミングはアランダインと再度連絡を取るためにチャレンジしていたのだが、やはりダメだった。

悲しい気持ちを抑えきれずに目に涙を浮かべたまま、ホーミングに背中を押されるままにリビングに戻る事になった。その時──…

「……あにうえ、シルヴィアのちちうえたちは大丈夫かえ?」

ロシナンテ達の話し声が聞こえ、思わずその場で立ち止まってしまった。

「…きっと大丈夫だえ…!シルヴィアを残して死ぬ訳ないえ!」
「うん、そうだよえ!シルヴィアがいるもんねえ!」

その言葉が聞こえて嬉しくなった。それと同時に申し訳なくも思った。

──心配させてごめんね2人とも…。

2人に泣き顔を見せないように溢れて来ていた涙を拭った。すると、ホーミングが優しく頭を撫でてくれた。

そして、リビングの扉を開くとドフラミンゴとロシナンテがこちらをバッと振り向いた。心配そうに見てくる2人に頑張って笑顔を見せようとしたが、ダメだった様で益々心配そうな顔をされた。

「シルヴィア……」
「大丈夫だえシルヴィア!!」

ドフラミンゴがそう言ってシルヴィアに駆け寄ってきた。

「また明日試してみるんだえ!!シルヴィアを残して皆が逝く訳ないえ!!シルヴィアが信じないで誰が皆を信じるんだえ!?」

そう言って抱きしめてくれたドフラミンゴに凄い救われた。不安でたまらなかったのだ。
そうだ、1日で判断するのはまだ早い。たまたまかもしれないってことを考えなかった。ドフラミンゴの言う通りだ、シルヴィアが信じないといけないんだ。

『……うん!そうだよね!わたしが信じなきゃダメだよね!』
「そうだえ!!」
『えへへっ、ありがとうドフィ!!わたし信じるよ!!』

ドフラミンゴの強い言葉に救われ、先程の泣くのを堪えた無理した笑顔じゃなく、心からの笑顔を浮かべられた。それを見てドフラミンゴとホーミングが嬉しそうにしてくれた。ロシナンテも嬉しそうにしてくれたが、何故だかどこか複雑そうなのを感じた。

この日はドフラミンゴのお陰で最悪な事を考える事もなく、ただ皆が無事なのを信じて過ごした。


──そしてまた翌日

この日は昨日と同じ様に外出しているドンキーホーテ家の母以外の皆で確かめる事になり、電伝虫とシルヴィアを中心にして囲うようにしていた。

そして、掛けようとしたその時──


「シルヴィアちゃん大変よ!!!皆も聞いて!!!」

外出から戻ってきたドンキーホーテ家の母が切羽詰まった様にそう言って、電伝虫を囲っているシルヴィア達の元へ新聞を手に持って駆け寄ってきた。

『ど、どうしたんですか…?』
「これを見て!!!!」

あまりの剣幕に戸惑ってドンキーホーテ家の母に聞くと、シルヴィア以外にも見えるように、手に持ってる新聞を広げて──

「シロノ国が何者かに襲撃されたって!!!」

シルヴィアにとって絶望を与える事を言った。新聞を見ると、あの美しかったシロノ国は跡形もないくらい崩壊していた。

『………』

ホーミングさんが新聞を取り上げて読み上げているが、何も耳に入って来なくシルヴィアは新聞を見つめたまま動けないでいたが──…

「生存者は発見されていなく、襲撃の真相を世界政府は現在調査中……」

この言葉だけはやけに鮮明に聞こえた。その言葉を聞いた瞬間、視界がぐにゃりと歪んで目からは何やら暖かい液体が流れて来たが、そんな事気にしてられなかった。

──わたしは1人になったんだ……優しかった父と母もいない……

「シルヴィア!!!」

──皆には冷たいけどいつでもわたしの事を考えてくれた兄も……

「シルヴィア!!!!」

──もう1人の兄の様に慕っていたランも、いつも意地悪だけど本当は優しいレンもみんな……わたしは──…

「シルヴィア!!!しっかりしろ!!!お前にはおれがいる!!!おれはお前を絶対に1人にしない!!!!」

暗闇に囚われそうになった時、その言葉が聞こえた。そこで視界がクリアになって、シルヴィアはドフラミンゴに肩を掴まれていて、言葉はドフラミンゴのものだというのが理解出来た。また彼はシルヴィアを強い言葉で救おうとしてくれているのだ。

「おれがシルヴィアの家族になってやるえ!!!」
『ど、どふぃ……』
「それにシルヴィアにはおれだけじゃないえ!!!ロシーや父上や母上もいるえ!!!もう誰もお前を1人にしないえ!!!」

溢れる涙が止まらなかった。何故こうもドフラミンゴはシルヴィアの欲しい言葉をくれるのだろうか。

『う、うわああああん!!!!』

抑えきれずにドフラミンゴに抱き着いて盛大に泣いた。するとドフラミンゴは、シルヴィアを抱き締めてくれて背中を摩ってくれた。その優しさに涙の量が増した。

ドフラミンゴの優しさが嬉しかった。強い言葉が嬉しかった。一族を失ってしまった今、シルヴィアにはもうドフラミンゴしか…ドンキーホーテ家の皆しかいない。この人達だけは失わない様に強くなりたいと思った。




(家族になってくれると言ってくれてとても嬉しかった)