story.14

ドフラミンゴがシルヴィアを抱き締めているという状況に、シルヴィアは困惑していた。

──ど、どうしよう…!!

とりあえず、ドフラミンゴを安心させる様に背中を摩る手はそのまま続けてあげた。

「あー…ごほんっ」
「!!?」

ホーミングの喉払いでドフラミンゴは気づいた様だ。シルヴィアは最初から気づいていたので特に慌てないが、ドフラミンゴの身体がバッと離れた。ドフラミンゴを見ると顔が真っ赤になっていた。シルヴィアの周りには顔が赤くなる人が多いので驚きはしないが、それを見て何故か自分の顔が熱くなってきた気がする。何だろうか。

「お前達、仲が良いのは結構だがご飯が冷めないうちに食べなさい」
『ごめんなさい!いただきます!』
「……」

ホーミングの言葉に考えることをやめて、いつの間にやら新しいフォークが用意されていたので、一言謝って食事を再開した。すると、ドフラミンゴが無言でシルヴィアの隣の椅子に座って食べ始めた。

「ロシーを起こしてこよう」

そう言ってホーミングさんはまだ起きてこないロシナンテを起こしに行った。

『ドフィもう大丈夫そう?』
「…大丈夫だえ」
『そっか!よかった!』

ドフラミンゴの言葉に安心してにっこりと笑った。すると、ドフラミンゴの顔が赤くなってふいっと視線を逸らされた。どうしたのだろうか。

その時──


「シルヴィア!!」
『ロシーおはよう!』

ホーミングによって起こされたロシナンテが、シルヴィアの元へ駆け寄ってきた。

「ほんとにシルヴィアがいるえ!!」
『えへへっ、しばらくよろしくね!』
「ずっといてほしいえ!!」

駆け寄ってきたロシナンテが、椅子に座っているシルヴィアの腰に抱き着いてきて頭をぐりぐりと擦ってきた。

「ロシー!!お前も早く座って食べるえ!!」
「……わかってるえ!」
『え…?』

ドフラミンゴに言われシルヴィアの隣の椅子に大人しく座ったロシナンテだが、何だかドフラミンゴとロシナンテの間で、見えない火花が散ってる気がするのは何故だろうか。真ん中に座っているシルヴィアは居心地の悪さを感じた。

「ご飯を食べて少ししたら今日は外に出よう」
「どこに行くんだえ?」
「シャボンディ諸島に行ってシルヴィアちゃんに案内も兼ねて服を買ってあげなきゃと思ってな」

その言葉にシルヴィアはともかく、何故かドフラミンゴとロシナンテまで顔を輝かせていた。

「シルヴィア!おれが良いとこ案内してやるえ!」
『ありがとうドフィ!』
「ぼくもあんないするえ!」
『ロシーもありがとう!』

どうやらロシナンテとドフラミンゴが案内してくれるらしい。やる気満々の2人に嬉しくなった。

「よし、そうと決まればお前達早く食べちゃいなさい」

その言葉に3人で頷き、ご飯を済ませる事に集中した。









あれからご飯を済ませ、シルヴィア達はシャボンディ諸島に来ていた。

『わあっ…!!すごい!!!』

シルヴィアはふわふわと浮いている大きなしゃぼん玉に目を輝かせた。ドフラミンゴとロシナンテは見慣れているのか、特に驚いてもなかった。

「割れないから触ってみるといい」
『えっ…!!?』

ホーミングに言われ驚いたが、恐る恐る手を伸ばして触れてみた。

『わあっ…!!!』

すると、ベタベタするが確かに割れなかった。面白くなって笑顔で何回もつんつんとつついてみるが、割れることはなかった。そこでふとドフラミンゴ達がシルヴィアを見て笑っている事に気づいた。

『えっ!?ど、どうしたんですか…?』
「いやな、シルヴィアちゃんの反応が新鮮で可愛らしくてつい笑ってしまったんだ」
『…?』

微笑ましそうに言われ、シルヴィアの頭上には?が浮かんで首を傾げた。自分はそんなに珍しい反応をしていたのだろうか。

「シルヴィアかわいいえ!!」
「気にするなえ!!」
『…??』

ホーミングはともかく、ロシナンテとドフラミンゴにまで微笑ましそうに見られ、シルヴィアの頭上には益々?が浮かんだ。
そしてそこで気づいた。何故か道を歩いていると、地に頭をつけている人達が目に入った。

『え…?なんで…?』
「あァ、これは気にしなくていいよ…いつもこうなんだ…」
「これが当たり前なんだえ!!」

ホーミングに苦笑い気味で言われるが、ドフラミンゴは得意気にそう言った。ロシナンテも普通にしていて、シルヴィアだけ見慣れぬ光景で戸惑っていた。
だが、彼等にとっては普通らしいので気にしないことにするが、やはり気になってチラチラと見てしまう。



そんなことしてる間に洋服屋に到着した様だ。

「こ、これはこれは天竜人様!!ようこそいらっしゃいました!!」

中に入るとお店のオーナーらしき人が駆け寄ってきた。

「この子に似合う服を持ってきてくれ」
「は、はいただいま!!!」

大慌てで店員達は、あれやこれやを大量に自分の腕に積んでいっている。その光景をボーッと見ていた。

「シルヴィア!あれがいいと思うえ!」

そう言ってドフラミンゴがどこかを指差した。それを目で追うと、そこには淡いピンク色のドレスの様なもので、フリルが沢山ついていた。

『可愛いねっ!』
「ほー、ドフィは中々見る目があるな!」
「シルヴィア!ぼくはあれがいいとおもうえ!」

すると、今まで黙っていたロシナンテもそう言ってどこかを指差した。そちらを目で追うと、そこには淡い水色のワンピースがあった。飾りでリボンやレース等が着いていた。

『あれも可愛いねっ!』
「ロシーも中々見る目があるな!よし、あれとあれも頼む!」

そう言ってホーミングは、控えていた店員にドフラミンゴとロシナンテが選んだ服を持って来てもらい、袋に包んでもらった。それをシルヴィアが笑顔で受け取り、大事に抱えた。
シルヴィア着物以外の物を着たことがなかったので、着るのが楽しみだった。何よりドフラミンゴとロシナンテが選んでくれたのだ、嬉しくないわけがなかった。

『えへへっ、ドフィとロシーありがとう!!ホーミングさんもありがとうございます!!』

嬉しさを全開に満面の笑顔でお礼を言うと、ホーミングは笑顔で頷いてくれ、ドフラミンゴとロシナンテは顔を赤く染めていた。本当にシルヴィアの周りには顔を赤くする人が多い気がする。何故だろうか。

そして、その後色んな服を持った店員が来てそれも全て包んでもらったが、量が多すぎてさすがに持って行ける量ではなかったため、ドンキーホーテ家にまで運んでもらうことになった。

その後はドンキーホーテ家にいた時に言われた通り、ドフラミンゴとロシナンテに色んな所を案内してもらい、疲れてきたところでドンキーホーテ家へと戻った。

シロノ国から出た事もなかったので、見た事もない様なものが沢山あり、とても楽しかった。特に印象的なのは最初に見た大きなしゃぼん玉だった。
父のアランダインが言っていた通り、この世界にはまだまだ見た事もない様なそして想像出来ない様な物が沢山ありそうで、興味が湧いてきた。それをいつか見てみたいと思った。