story.21

あれから天竜人に新しい住まいを手配してもらい、ドフラミン達ドンキーホーテ一家は大きな船に乗って天竜人達に連れられ、新しい住まいがある島へと移動中だ。

『お父様の言葉嬉しかった!ありがとう!』
「なに、当然の事だよ」

笑顔で話すシルヴィアと父の会話を聞きながらドフラミンゴは思う、本当にこれでよかったのかと。何だか納得出来てない自分がいるのだ。だが、人間達と一緒に暮らそうがドフラミンゴ達は神の一族なんだ、それだけは変わらない。

「我々がお送りできるのはここまで」

そう思っていた時、天竜人の1人に声を掛けられハッとした。どうやらこの島で船から降りる様だ。
この島が今日から暮らす島かと、きょろきょろと辺りを見渡しながら船から降りると、目の前には大きな城が建っていた。それ以外は特に目立つ物がなく、森しかなかった。

「ここは北の果て[世界政府]非加盟国」
「不自由のない住まいと財産はあちらに」

1人の天竜人が前方を指差して言った。どうやらこの島に降りた時に見えた大きな城は、これから住む所らしい。下々民の様に不自由しないのだったら、まだドフラミンゴの気分も少しはマシだった。それでも、完全に納得した訳ではなかったが。

「ありがとう充分だ」
「・・・では、天竜人の証明チップを回収します」

シルヴィア以外のドンキーホーテ一家の服の胸元についていたチップを回収された。
チップを回収した天竜人達は船に戻り、聖地マリージョアへと戻り、ドフラミンゴ達は新しい住まいのお城の方へと向かった。

『・・・・・・なんか嫌な予感がする』

その時、シルヴィアがぽつりと漏らした。その声は小さく、シルヴィアの近くを歩いていたドフラミンゴだけが、何とか聞き取る事が出来た。
シルヴィアの方を振り返りチラリと見ると、シルヴィアは眉間に皺を寄せ不安からか瞳をゆらゆらと揺らしていた。そんなシルヴィアを見て、ドフラミンゴは彼女の側に歩み寄り、その真っ白で柔らかい小さな手を握った。するとシルヴィアはきょとんとドフラミンゴを見上げてきた。

「・・・・・・シルヴィア大丈夫だえ・・・何があってもおれがお前を守るえ」
『!・・・ドフィ・・・』

シルヴィアを安心させる様にドフラミンゴが小さな声でそう言うと、シルヴィアは最初は驚いていたが、直ぐに蕾が綻ぶ様に表情がほぐれていった。そんなシルヴィアを見てドフラミンゴは心に誓ったのだ、シルヴィアだけは何があっても絶対守ると。ドフラミンゴは天竜人なのだ、人間達から守れるだけの力はある。


シルヴィアと繋いだ手はそのままに、少し長い距離を城の方へ向って歩いていると、ついに目の前に到着した。

『わあっ!!近くで見ると益々大きいっ!!』
「随分と立派だな」
「遠くで見た時と迫力が違うえ」

シルヴィア、父、ロシナンテがそう言って喜んでいたが、ドフラミンゴとしては不自由がなさそうで安心したが、やはりどこか引っかかっていた。

城の中に入ると、中も豪華な造りになっていた。前に住んでいたドンキーホーテ家と大差変わらない豪華さで、シルヴィア達は喜んでいた。ドフラミンゴもそこは満足した。

「・・・・・・・・・ここで一家5人慎ましく暮らそう」
「まずは見解きから始めましょ」

周りを見渡した後、微笑んでそう言った父と母にドフラミンゴ達は頷いた。

そして、奥には宝箱の様な大きな箱があった。それを見てシルヴィアとロシナンテと顔を見合わせ頷き合い、3人で宝箱の方へ駆け寄った。中を開けると、沢山の財宝があった。これだけあれば、天竜人達の言っていた通りに不自由はしないだろう。
だが、辺りを見渡しても奴隷が見当たらない。用意されていなかったのだろうか。

「父上、ドレイはどこだえ?」
「片付けなんてドレイにやらせればいいんだえ」
「いないなら買いに行こうえ」
『2人とも・・・』

ドフラミンゴと弟のロシナンテが財宝の山に寝転んで言うと、シルヴィアと父と母が咎める様に見てきた。
何故そんな目で見られないといけないのかわからなく、ドフラミンゴは眉間に皺を寄せた。

「ドフィ・・・ロシナンテ、お前達には一から教えねば」

溜息を吐いて父がそう言った後に、

「まずは街に出て偵察と、街人に挨拶をして交流を深めよう」

この一言によりドンキーホーテ家の皆はまずは着替える事になったのだが、ドフラミンゴは自分が着替えた服に不満があった。鏡でドフラミンゴの姿を見て、盛大に眉間に皺を寄せた。白のYシャツの様な服に、首元にはスカーフが巻かれている。これでは人間みたいだ。

「ドフィとっても似合ってるわよ」
「こんな服嫌だえ!!ドレイみたいだえ!!匂いがつくえ!!」

母に褒められたが、ドフラミンゴはちっとも嬉しくなかった。ドフラミンゴは首元のスカーフを緩めて服を脱ごうとするが、父と母に止められた。

「何をするんだドフィ!!」
「こんなの人間みたいで嫌だえ!!」
「ドフィ・・・これからは人間として暮らしていくんだ」
「え・・・・・・」

父の言葉が信じられなくて、思わず服を脱ぐ手を止めて父を目を見開いて見つめた。父の目は真剣な眼差しで、嘘ではないというのがわかる。ドフラミンゴには益々それが信じられなかった。ドフラミンゴ達は神の一族だというのに。

『ドフィ似合っててかわいいのに・・・』
「か、かわいいって言うなえ!!」

シルヴィアに微笑んで褒められてもドフラミンゴは男なのだ、可愛いと言われて嬉しくもなく眉間に皺を寄せ、キッとシルヴィアを睨んだ。

『それにわたしとお揃いだよ!!』
「・・・・・・」

無言でシルヴィアの服装を見ると、いつの間にかに着替えたのか確かに同じ物を着ていた。見ると、ロシナンテや母と父も同じものを着ているのが見えた。だが、人間と同じ物を皆揃って着てるなんて、ドフラミンゴは嫌で仕方なかった。

「ドフィ、とりあえずこのまま外へ出よう。服が気に入らないのなら後で別の物を用意するからな」
「・・・・・・わかったえ」

父に言われ、渋々ながらも頷いた。
そして、ドンキーホーテ一家は街へと向かったのだ。


TO BE CONTINUED