story.33

ロシナンテは、父が兄の手によって殺されるのをこの目でしかと見てしまい、泣き叫びながら兄から逃げていた。

暴走する兄を止めると決意したのに、止める事が出来なかった。結局、ロシナンテはいつも通り泣き叫ぶ事しか出来なかった。いつもそうだ、肝心な時に限って何も出来ないのだ。シルヴィアが連れ去られてしまいそうになっている時だって、そうだった。
ロシナンテとて、兄に負けないくらい、シルヴィアの事が好きなのだ。2年前までは、理解出来ていなかった特別な意味で好きというのが、恋愛という意味でシルヴィアが好きだと気付いている。
それだというのに、ロシナンテはそのシルヴィアを、助ける事が出来なかったのだ。好きなのに、ロシナンテは兄の様に強くはなれなかった。

──シルヴィア、会いたいよ・・・っ!!

シルヴィアに助けられなかった事を謝って、兄がした事を話してシルヴィアに兄を止めてもらいたかった。きっとこれからも、兄は暴走し続けるはずなのだ。それを止められるのはもう、ロシナンテとシルヴィア・・・いや、シルヴィアしかいない。もしかしたら、兄はシルヴィアの言う事だったら聞いてくれるんじゃないかと思ったのだ。
その為にも、ロシナンテは兄よりも先にシルヴィアを助け出さなければと思ったのだ。



そんな時、ロシナンテは1人の男と出会った。名を、"センゴク"と名乗っていて、海軍だと言っていた。

「じ、実は──」

そんなセンゴクに、ロシナンテは全てを話そうと口を開いた。語り出したロシナンテの話を、センゴクは黙って聞いてくれていた。

「身寄りがないのか・・・・・・!!」

ロシナンテが話終えると、泣き喚いているロシナンテにセンゴクはそう言った。その言葉に、ロシナンテは泣き喚きながら頷いた。

「──じゃあ、おれと来るか?そのシルヴィアって子を助ける為にも」

センゴクは酷く優しい声でそう言ってくれた。その酷く優しい声と言葉に導かれ、ロシナンテはその言葉に頷いた。今ロシナンテが頼れるのはセンゴクしかいなかったのだ。

「まずはシルヴィアって子がどこに売られてしまったのか探る為にも、一旦基地へ戻ろう」

心強いその言葉に、ロシナンテはまた頷いた。海軍の情報網があれば、シルヴィアは見つけ出す事が出来るはずだ。

天竜人に戻るために動き出した兄と、暴走する兄を止めるために動き出したロシナンテ。ロシナンテは兄とは別の道を歩み始め、シルヴィアを助け出す為に動き出したのだ──



TO BE CONTINUED