『ね、ねぇ・・・? ずっと気になってたんだけど・・・・・・ロシーと、お父様は・・・・・・?』
「・・・・・・・・・」
ドフラミンゴは、シルヴィアの質問には答えてくれず黙り込んでしまい、その様子に胸騒ぎがした。直ぐに答えないという事は、何かよからぬ事があったに違いないと、嫌な予感がした。
他の4人は、黙ってシルヴィアとドフラミンゴの様子を見守っている様だ・・・その様子を見るに、この4人は何か知ってるのだという事がわかった。
『ドフィ・・・?』
「・・・・・・ロシーは行方不明で・・・あいつは・・・・・・・・・
──おれが殺した」
『え・・・・・・』
ドフラミンゴの言葉に絶句した。
──ロシーが行方不明・・・・・・? あいつ・・・? 殺した・・・・・・?
あまりの衝撃発言に、頭が真っ白になって整理が追い付かない。
ドフラミンゴの言うあいつとは、まさかまさかまさか・・・・・・っまさかと思うが・・・父の事ではないだろうか・・・!?
そう思うと血の気が引いた。
「あいつが天竜人の地位を放棄してからというもの、おれ達は散々な目にあった・・・母上は死に、挙句の果てにはシルヴィアは連れ去られて売られた・・・・・・おれはそれが許せなかった」
『ぁ・・・っ』
考えたくなかったあいつとは、父の事だという事が、ドフラミンゴの言葉を聞いて確信してしまった・・・・・・ああ、何という事だろうか・・・、・・・父が死んでしまった原因の一つに、シルヴィアが連れ去られてしまった事が含まれていたなんて・・・・・・。
「あいつが地位を放棄しなけれりゃ、おれ達が苦労する事も、母上が死ぬ事も、シルヴィアが連れ去られる事もなかったんだ」
『っ・・・・・・』
「───だからおれがあいつに復讐したんだ」
『っ・・・!!!?』
ドフラミンゴは、底冷えする様な酷く冷たい声で言った。そんなドフラミンゴに、シルヴィアは何も言うことが出来なかった。
「そしておれは考えた、全ての元凶の裏切り者のあいつの首を持って聖地へ戻れば、再び天竜人へと戻れるんじゃねェかってな」
『っ・・・』
「───そしたら、お前を助けられるんじゃねェかって・・・一生守ってやれるんじゃねェかって思った」
『・・・ド・・・フィ・・・・・・』
少し声を震わせながら、ドフラミンゴはそう言った。その声には悲痛さを感じ、ドフラミンゴは父を殺してしまった事に、悲しみを感じでいるのだという事がわかった。
──わたしが戦えたなら、何か変わっていたのかな・・・? お父様は殺されずに済んだのかな・・・? ドフィは悲しまずに済んだのかな・・・?
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
謝って許される事ではないが、謝らずにはいられなかった。
「シルヴィア、おれを嫌悪したか・・・?」
『え・・・?』
「お前は優しくていい子だ・・・・・・だからこそ、あいつを殺したおれを嫌悪するんじゃねェか・・・?」
『嫌悪なんてしないよ!! 元は戦えなかったわたしが悪いんだから!!・・・・・・それに、わたしそんなに優しくもいい子でもないよ・・・』
そうだ、シルヴィアは最低で最悪なのだ。
何故ならば──
『だって、わたし嬉しかったの・・・っ!! ドフィがそこまで守ろうとしてくれてたんだって、喜んじゃった自分がいたの・・・っ!!』
そうなのだ、シルヴィアは悔いていたのと同時に、ドフラミンゴがそこまでシルヴィアの事を守ろうとしてくれていたのだと知り、喜びを感じてしまっていたのだ。
『・・・それにね、わたし本当はわかってたの・・・・・・あの時、″完全型白狐″になってがむしゃらに戦ってれば、何とかなってたんじゃないかって・・・!!』
捕えられた時に完全型白狐になって、噛み付いたり鋭い爪を使って、がむしゃらになって戦っていたのなら、きっと連れ去られたりはしなかっただろうし、ドフラミンゴ達も助けられていたかもしれない・・・。
シルヴィアは、自分のあまりの不甲斐なさに、涙が溢れてきた。
『けど、考えない様にしてた・・・っ!! それをしちゃったら、ドフィ達に完全に嫌われちゃうと思うと・・・っひっく・・・怖くて・・・っ!!』
「・・・シルヴィア・・・」
『″戦えない″んじゃなくて・・・″戦おうと″しなかったの・・・っ!!』
「・・・・・・」
『・・・最低だよね、わたし・・・ひっく・・・!! ドフィに嫌われたって・・・ううっ・・・!! おかしくない・・・っ!!』
ドフラミンゴの反応を見るのが怖くて、下を向いてしまった。足元の地面に、シルヴィアの目から溢れている涙が、ぽたぽたと落ちていくのだけが見えていた。
ドフラミンゴに嫌われてしまったら、シルヴィアは1人になってしまう・・・それがとても怖かった。
「──シルヴィア、もういい。何も言うな」
『え・・・っ』
ドフラミンゴの言葉に驚いたその時、ドフラミンゴにぎゅっと正面から抱きしめられた。
「シルヴィアは何も悪くない・・・だからもう、自分が悪いみたいな事は言うな」
『で、でも・・・っ!!』
「お前が戦えなかったにしろ、戦わなかったにしろ、どっちだったとしても、おれがあいつを殺す事には変わりなかったんだ」
『っ・・・』
だが、それでも少しでも変わっていたのなら、シルヴィアは戦うべきだったのだ、とシルヴィアは思った。
「だが、まだ少しでも罪の意識を感じているんだったら──シルヴィア、おれと一緒に来い」
『!!』
何て優しくも甘い言葉なのだろうか・・・。
やはり、いつでもドフラミンゴはドフラミンゴだ。この優しさに何度救われたかわからない。
『わたしの事・・・嫌いになってないの・・・?』
「前にも言っただろ? おれはどんなことを言われても、お前の事は嫌いになんてならねェ」
ドフラミンゴははっきりとそう言った。確かに、その言葉には覚えがあった。
それならば、シルヴィアの答えはもう決まっていた。
『・・・う、うん・・・っ!! わたしも一緒に連れてって・・・っ!!』
そう言って、シルヴィアはドフラミンゴの胸に顔を埋めて、わんわんと声を上げて泣いた。
嬉しかった。嫌われても仕方ないのに、変わらずにいてくれた事が、そして優しい言葉を掛けてくれたのが。
これからドフラミンゴがどんな事をするのかわからないが、シルヴィアはこの先もずっと、何があってもドフラミンゴと一緒にいようと思った。
TO BE CONTINUED