シルヴィアがドフラミンゴ達によって救出されたと知らずに、アランの城へと到着したロシナンテ達は──
「こ、これは・・・っ!!」
「一体・・・どういう・・・ことだ・・・・・・?」
床に倒れて気絶している屈強そうな多くの男達と、アランと思われる人物だけしか残されていなく、暫く呆然と立ち尽くしていた。
・・・・・・。
──街人の情報は、嘘だったという事だったの・・・・・・?
いや、違う。もっと別な訳がある筈だ。
この床に倒れている男達を見ると、何故か無傷の者が多いのが不思議だが、この様子を見るに、襲撃されたに違いない。
──なら、シルヴィアはその襲撃に来た人に、連れ去られたという事なの・・・・・・?
そう思った時、ロシナンテの頭には1人思い当たる人物の顔と言葉が過ぎった。
──「おれはお前の首で・・・・・・!! 聖地へ戻ってシルヴィアを取り戻す!!!」
・・・・・・!!
「あ、兄上だ・・・・・・!!」
「は・・・?」
「シルヴィアを連れて行ったのは絶対に、ぼくの兄上だ!!」
「そうか・・・」
ロシナンテが断言をすると、センゴクは顎に手を当て、何か考え込む様な素振りを見せた。
・・・・・・。
──兄上は父上の首を持って聖地へ行って、天竜人に戻れる事が出来たのかな・・・? それでシルヴィアを助け出したのかな・・・。
だが、そんな簡単に行くものなのだろうか。
世の中そう甘くないという事は、父が天竜人の地位を放棄し、北の果てで過ごした2年間の間で、散々味わったはずだ。
そもそも、あの天竜人達が1度裏切った者を再び受け入れるとも、考えにくい。何か別の方法で、シルヴィアを助けた様な気がしてならない・・・。
「ロシナンテ、お前の兄が天竜人に戻れたとは考えにくいな・・・・・・お前の兄は仲間はいるのか・・・?」
「いえ、いないは───・・・ハっ!!!」
センゴクの質問に、ロシナンテは否定をしてようとしたが、そこでハッとした。
──兄上には、仲間がいるんじゃ・・・・・・!!?
そもそも、兄は父を殺す時に上等そうな銃を使用していた。
──あの銃(ピストル)はどこで手に入れたの・・・?
その辺で拾ったとは考えにくいし、あの街では武器を扱っている店はなかったはずだ。だとしたら、何者かによって手渡されたと考えるべきだろう。
──もしかしたら、兄上はその人に協力してもらって、シルヴィアを助け出したんじゃ・・・・・・?
兄が天竜人に戻れた確率が低いと考える今、仲間を率いてシルヴィアを助け出したと考える方が、1番しっくり来る。いくら武器があるにせよ、兄1人で助けに行くとは、とてもじゃないが考えにくい。1人の子供の力では、この城にいる大勢の屈強そうな大人の男達の相手をするには、無理がありすぎる。ロシナンテの兄は、そこまで無謀な事をする人間ではないのだ。
「おい、ロシナンテ・・・?どうした・・・?」
言葉が途中で止めて考え込んでいたロシナンテを、センゴクが怪訝に思ったのか、そう怪訝そうに聞いてきた。
「──兄上はきっと仲間が出来たんでしょう」
ロシナンテは、そう断言出来た。それだけの理由が、わかってしまったのだ。
「そうか・・・・・・ロシナンテ、助けられなかった事は残念だが、本部へ戻ろう」
「・・・・・・はい」
センゴクはどこか複雑そうにそう言った。
きっとセンゴクは、ロシナンテの事を気にしているんだと思った。センゴクは、ロシナンテのシルヴィアへの想いを知っているからだ。
ロシナンテが頷くと、センゴクは本部に戻るために、部下に指示を出して、アランと床に倒れている男達を捕らえさせたりしていた。
その様子を、どこか心ここに在らずな感じでぼーっと眺めながら、ロシナンテは思った、
──ぼくがシルヴィアを助けてあげたかった・・・!!
と。
兄の暴走を止めるのを協力してもらうため以前に、大好きで大切な子だから、ロシナンテが助けてあげたかった・・・・・・。
「・・・っ・・・」
そう思った時、目からつーっと涙が流れてきた。泣くくらい、シルヴィアをロシナンテが助けてあげたかったという思いが大きかった。
「・・・・・・ロシナンテ・・・」
ロシナンテが泣いてる事に、センゴクは気づいた様で、慰める様に頭を優しく撫でてくれた。
「っ・・・ひっく・・・!! シルヴィア・・・っ!! わああああん!!」
「・・・・・・今は無理だが、いつかその子をお前の兄から引き離そうな」
「っはい!!」
「話を聞く限りでは、お前の兄は危険だ・・・・・・これから何か良からぬ事を、仕出かしそうな気がしてならない・・・」
センゴクの言葉に、ロシナンテは頷いた。
恐らく、センゴクの読みは当たっているだろう。ロシナンテも、そんな気がするのだ。そうなれば、兄と一緒にいては、優しいシルヴィアはきっと傷いてしまうに決まっている。優しいシルヴィアは、あの破壊の申し子の様になってしまった兄とは、一緒にいるべきではない。
「センゴクさんっ!! ぼくに戦い方を教えてください・・・っ!!」
ロシナンテは涙を拭い、センゴクを見上げて言った。
「・・・おれの指導は厳しいが、ついてこれるのか・・・?」
「耐えてみせます!!」
「わかった・・・なら本部に着いたらお前を鍛えてやる!!」
「よろしくお願いします!!! 」
ロシナンテの意思が伝わったのか、センゴクはにっと笑って頷いてくれた。
これから修行をして力をつけ、兄からシルヴィアを引き離す。きっと兄は、簡単にはシルヴィアを離そうとしないから、戦ってシルヴィアを引き離すんだ。
シルヴィアとは暫くの間、お別れになるだろう。それはとても辛いし悲しいし耐え難いが、そうするしかないとロシナンテは思った。
──シルヴィア、待っててね・・・強くなっていつか必ず兄上から引き離すから。
ロシナンテは、そう新たな決意を固めた。
TO BE CONTINUED