0


夢現に人の声を聞く。同時に躯に走る衝撃。これは抱きつかれちゃってんのかね。
するとさっきから名前を呼んでるのはもしかして俺にか。一体誰が呼んでいるんだか。
「ルーク様!よくぞ御無事で……!」
――え、何、どゆこと?
目が覚めた。ぼんやりとした視界もクリアになってくる。俺を囲むように立つ人々(メイドや兵士達!)。現実には有り得ない光景な上、今居る場所も問題だ。テレビでしか見たことのない華美な家具と造り!
「グランツ謡将、礼を言うぞ」
「いえ、お気になさらずに。私とて、愛弟子が拐われるのは悲しいものでしたから」
……………グランツって、どっかで聞いたような(何処でだっけ。思い出せねぇ)。
髪が揺れた。ちらりと視界に映る。長い。……長い?色は朱色。毛先だけ金色。漫画みたいな色合いだ。まぁ、真ちゃん達キセキも漫画みたいな色合いしてっけど。
「ただ……ショックを受けたのか、今迄の記憶を忘れてしまったようです」
「何だと……」
大人同士で話が進んでいく。悲痛な面差しで此方を見遣るメイド達に何とも言えない。ナタリア姫の事も、と誰かが呟いた(……嗚呼、そうか)。
思い出した。此処はゲームの世界だ。妹がやってたゲームに、こんな場所があった。
俺、主人公になったわけね。髪を一房掴んだ。ルーク・フォン・ファブレ。主人公の名前。但しレプリカ(って云う、要するに偽物)。ゲーム、最後までは知らないんだよな。主人公がレプリカで、敵としていた赤髪の奴が本物のルーク、んで今公爵(ルークからしたら親父だな)と話してる男がラスボス(妹曰く)。主人公を作った奴。後はさっき名前が出たナタリアってのも、本当は王族じゃないってのと今此処に居ないけど、ガイっていう主人公の使用人は本当はファブレ家を恨んでて主人公を殺そうとしていたって所か。この二つは妹からの情報だけど。
で、俺はどうしたらいいわけ?