鬼ごっこ





「あれ、このランプ……、」
友人に興味のない廃墟探索に付き合わされ辟易しながら個々で部屋の探索をしていた時のことだった。華美な装飾品の中に蒼炎を宿した白銀色のランプを見つけ、なんとなく手に取り綺麗だなと眺めていた所でふと違和感を覚えた。時が経ち彩度が落ちたそれらと違って、そのランプはまだ真新しく見えるのだ。……これは、可笑しくないだろうか。誰かが手入れをしている、というのであればそもそもこのお屋敷はこんな風になっていないし、身内以外立ち入り出来ないはずだ。
そう考えているうちに気味が悪くなり、そっとランプを元の位置に戻す。忘れよう、俺は何も見てない。ただここで寝てたんだなって部屋を見つけただけ。さっと踵を返して外へ向かい、廊下に出ると後ろ手で扉を閉める。丁度友人も隣の部屋の探索を終えたのか、よ!と声を掛けられた。
「そっちはどうだ?なんかあったか?」
「いや……、――え」
特に何もなかった、と答えようとして、息が詰まる。……友人の背後の方に、白銀のランプがあった。あの、蒼炎のランプが。
急に目を見開いて固まった己に、困惑した様子でどうかしたか?と友人が訊いてくる。御免、なんでもないとだけ答えると気分が悪くなってきたから帰りたいと告げた。ホラーの見すぎ、と笑われたがここから離れられるならなんだっていい。幸い友人も何もなくて飽きたのか渋られることもなく帰ることになった。……どっちがホラーの見すぎなんだか。
気持ち早足で屋敷を出ると長い坂を下る。道を下りきり、左右の分かれ道が見えてきた。ここまで来ると振り返っても屋敷は見えなくなる。漸く一息つける、と息を吐こうとして――結果、息を殺すことになった。
このまま、家に帰ってはいけない。
そんな焦燥感に駆られ、友人との別れの言葉もそこそこに道を駆けた。夜の散歩だと思えばいい。そう思って、そう、思い込むが、この焦燥感はなくならない。補導される可能性があるからあまり遠くには行けない。だからぐるぐると家からそう遠くない道をひたすら走るだけ。何度公園を通ったのだろう。何も変わらない現状に、遂に躯だけではなく精神も悲鳴を上げ始めた。ぽつんと佇む街灯近くの道端に思わず座り込む。




「――おや、もう鬼ごっこは終わりですか?」