後日、やけに機嫌が良さそうなあいつを見掛けた
「うぅ……俺のアーヤ……」
「げ、元気出せよ!女なんて幾らでもいるんだしさ」
そうそう、と他の仲の良い
俺、この戦いが終わったら告白するんだ、と死亡フラグを立たせていた
「でもさぁ、仕方ないじゃん。フリンズには勝てないって!」
「だよな俺達と違って圧倒的な顔面の良さに戦闘力も高い。ちょっとズレてる気がするけど、性格だって悪くないしな」
うんうん、と泣いている
「――おや、僕の話をされているのですか?」
「え!?」
背後から聞こえてきた声は紛れもなく今話をしていた人物のものだった。驚きのあまり弾かれたように振り返る。そこには想像していた通りの人物が座っていて、テーブルには空になったグラスが複数置いてあった。どうやら俺達より先にここで呑んでいたらしい。
「い、いやその、こいつが好きな人に告白してフラれたのを慰めてただけで……」
「その子がお前のことが好きらしくて、なら俺らじゃ敵わないな〜って話をしてただけだよな!?」
だから陰口とかそんなんじゃないから!と焦って弁明する俺達だったが、当の本人は全く気にしていないようだった。それどころか奇遇ですね、と呟かれる。思わぬ発言にえ?と俺達はテーブルに突っ伏している
「丁度僕も想い人に気持ちを伝えたのですが、お断りされてしまいまして。……自棄酒していたんです」
「……、は!?」
嘘だろ?!と再び顔を見合わせる。あのフリンズが……?とひそひそと話す俺達の関心は既にフリンズの本命の方に向いていた。あのフリンズをフるなんて一体どんな女だ!?と好奇心が湧き起こる。同僚の一人がそれを隠し代表してなんて云ってフラれたんだ?と尋ねた。
「俺を好きなフリンズは解釈違い、と」
「……解釈違い?」
なんだそれ?と首を傾げる俺達に、そうでしょう?とグラスを傾けながらフリンズが呟いた。意味が解らなすぎて俺の思考は俺っ娘かぁ、とそっちの方へと飛ぶ。だが、あぁ、と同僚の一人が洩らした声に意識が引き戻された。なんか知ってるのか?と皆の視線がそいつに向けられる。
「俺の妹が前に同じ事を云っててな。ずっと昔からある人物について嬉々として語っているんだが、だから俺はそいつのことが好きなんだと思ってさ。告白はしないのかって妹に訊いたんだ、そしたら目の色を変えて怒られた。好きは好きでもそういう好きじゃない、んだと。その後色々云われたが、正直よく解らんかった」
けどまあ、要するに、とジョッキに口をつけ同僚が一度言葉を区切る。それで?と急かすように見つめる俺達に同僚は苦笑しつつ、話を続けた。
「要するに、自分の中で相手に理想を抱いていてそれから外れると違うとなる……つまり、解釈違いらしい。だからお前さんの好きな人もお前さんについて自分の中で理想があって、自分のことを好きだと思ってるお前さんは解釈違いになるんだろう」
「……それって自分の中で勝手に作ったイメージを押しつけてるだけじゃね?」
ぼそりと呟く俺にまぁそうなんだけどな、と同僚が肩を竦める。他の奴らも同意見なのか微妙な顔をしていた。うーん、女ってよく解らん。そう酒を呷っていると手を顎に当てて何か考えているフリンズが目に入った。
「……つまり『説得』すればいいのですね」
「うん?……まあ、そうなる、か?」
「話し合って解決できるとは思えんがなぁ……」
三度顔を見合わせる俺達を気に留めず大丈夫ですよ、とグラスに口をつけ、奴は微笑んだ。……何時もと変わらない表情なのに、ぞわりと寒気を感じるのは何故だろう、
「――解ってもらえるまで話し合いますから」
そう云って穏やかな笑みと共に呟かれた言葉には絶対逃がさない、という強い意志が滲み出ていて、俺達は思わず黙り込んでしまった。だがそんな俺達を矢張りフリンズは気にした様子もなく席を立つ。では僕はこれで、と優雅に一礼して去っていく背中を見送り、その姿が見えなくなると誰ともなく詰めていた息を吐き出した。
「……取り敢えず俺らは何も見てないし聞いてないことにしよう」
「そうだな。それが一番いい」
そうと決まれば飲みなおすか、と何事もなかったかのように仕切り直し、目の前のグラスを手にした。