#23 喧嘩する

「ちょ、ちょっい、やっといたぁぁ、切島ぁぁ!!」
「ん?どうした、上鳴に芦戸」
「来て!!もうこれ切島しか止められない!!」
「え、ちょ、引っ張んなって!!どうしたんだよ」
「爆豪と名前が喧嘩してんの!!」
「は?!」
「もう、ガンドと爆破飛びまくってて!」
「いや、誰か止めろよ!!」
「緑谷と轟が間に入って両方やられた!!」
「はぁ!???んでだよ!!」
「轟が名前に甘いんだよ!!『退かなかったら轟くんのこと嫌いになる』でもうダメ!!」
「あいつそろそろ苗字離れした方がいいと思うわ!!」
「今ギリギリ名前の方を麗日とヤオモモが抑えてくれてるけど持たないから、切島早く!!二人の仲とりもてるの切島しかいない!!」




「……お前らマジいい加減にしろ。ダイニング、八百万がなんとか防壁建ててくれてたから良かったけど、下手したら壊滅してたぞ」
「…………」
「で、爆豪。なんで苗字と喧嘩になったんだよ」
「うっせぇ、あいつんとこ行かせろ……今日はマジでぶっ殺す」
「ダメだ。なんの為にこうやって二人分けてんのか理解しろって」
「俺に説教垂れてんじゃねぇ」
「言っとくけど、お前らが理由言わねぇとずっとこのままだし、最悪、相澤先生呼ぶからな」
「…………くそが」
「へーへー。んで、なんでこんなことなったんだよ」
「……あの女がわからず屋なんがいけねぇ」
「は?」
「あーー、思い出してもムカムカしてきた……!!クソがやっぱ殺してくる!!」
「だーーー、ダメだって!!てか、なんで爆豪が苗字のことそんな風に思ってるかも全然分かってねぇから、こっちは!」
「ンなこと説明しやんでも分かれや!」
「わかるか!!事細かに説明しろ!!」
「…………チっ!!」
「(……でけぇ舌打ち)」
「……………………今日の演習」
「ん、あー、確か苗字と爆豪がペアだったか? え、何、それで揉めてんのか……いや、でも、今日、爆豪と苗字悪いとこなかったつーか、相澤先生も褒めてただろ連携取れてたって、苗字の個性付与した爆豪が騙し討ちの奇襲で相手捕まえて」
「お前、アレやったことあっか?」
「え、アレって、ガッツっていうやつ? ねぇけど」
「やられてこい」
「は?」
「分かってねぇくせに俺に偉い口叩いてんじゃねぇ。それから俺に説教しやがれ」



「って、爆豪が言ってたんだけど」
「…………」
「苗字、爆豪が怒ってる理由、もしかして分かってんのか?」
「…………」
「なぁ、苗字、黙っててもわかんねぇよ。今日、演習で苗字が爆豪にガッツ付与したのは分かってるし、その事で爆豪がなんかキレてるのはわかるけど、そのなんかが分かんねぇんだよ」
「…………こうなるから、私がやるってあの時も言ったのに。……爆豪がわからず屋だから」
「お前ら同じこと言うのな」
「……爆豪めっちゃ怒ってた?」
「まあ」
「…………そう」
「爆豪、俺が同じようにガッツ付けてもらえば分かるっていってたんだけど、やってくれっか?」
「…………ダメ」
「……なんで?」
「………………切島くん、痛くて泣いちゃうから」
「…あー、爆豪が怒ってる理由分かったわ、なんとなく」
「……切島くんも怒る」
「……そー、ブーたれんなよ」
「だって、私は……」
「あんな、苗字、爆豪は口悪くってあんな感じでしか伝えられない不器用なやつだけど」
「…………」
「苗字に伝えようとしたこと、怒りじゃねぇだろ?」
「………………」
「入学当初なら、俺も確かに爆豪と同じこと思ってた。けど、ここで学んで、プロの世界もほんの少し足突っ込んで、わかる。苗字には苗字のやり方があること。けど、心配しねぇっていうことと口を挟まないことは違うからな」
「……切島くん……っ」
「あー、泣くな、泣くな」
「……ばくご−愛想つかしたら、どうしよ……」
「それはねぇから大丈夫だ。どうでもいいやつに対してアイツはこんな怒んねぇよ」