鱗粉の幻夜(鱗粉の幻夜)

※このお話は本編(長編夢)が完結した数年後の世界が舞台ですので本編のネタバレ(お相手のリドウ以外にも一部のキャラを救済している等)がありますのでご注意ください

※なので本編を読んでからこちらの話を読むのをお勧めします

※当たり前のように色々捏造・オリジナル要素がてんこ盛りです


大丈夫でしたら、どうぞごゆっくりご覧ください















「ねぇリドウ。おかしくない?」

「大丈夫だって言ってるだろ。リル。それ聞くの何回目だ?」


とあるホテルの一室で私は何度も鏡を見ながら同行者であり、仕事の上司でもあり、そして………恋人なリドウに尋ねた

何を聞いてるのかと言えば、今日のイベント用に買ったドレスの着方。家で何回か試着してみて大丈夫だと自信もったはずだけど………やっぱり気になってしまってつい何度も聞いてしまう


「だって、こういうの着る機会あんまりないですし、それに……」

「それに?」

「……リドウと並んでおかしくないようにしたいですし」


ここは変に誤魔化してもバレる事だし、昔と違って少しは素直になろうと思ってたから、照れくさいけどこうして背中の空いた大人っぽいドレスを選んで何度も確認する理由を話す

それを聞いたリドウは「ふぅん」と一言

………あれ?たったのそれだけ?

別に期待していたわけじゃないけど、ドレスとか私が努力してる姿にはあんまりリドウの心に響かなかったのかな?

内心ちょっとがっかりしてると、鏡とにらめっこしてる私の後ろのテーブル席に腰掛けてたリドウが立ち上がって、こっちに近付いてきたのが見えた


「………だったら、そんなリルに似合う最高の化粧をしてやるよ」

「化粧?」


何かと思えば、そんなことを言って私の真後ろに立った

あれ?リドウって化粧出来たんだ。まぁ今じゃ女性だけじゃなく男性も化粧してる時代だからね………それにセンスはどうであれお洒落に気を使ってるリドウだから化粧やっていても変じゃない。やるとしたらきっとプロがやりそうな技術だろうなぁ………

なんてリドウがどんな化粧をしてくれるか待っていると

彼は私のまだ整えず下ろしたままの髪を手で持ち上げ、首の後ろを露わにする


そして…………ちゅ。とリップ音と共に首の後ろと背中に柔らかな感触が



…………………!?



「これでいいな」


まさか、首の後ろとドレスから覗く背中にキスしてくるなんて!!

それが終わると、リドウは満足気に笑みを浮かべた。その顔を見て私は勢いよく振り返り、鏡越しではなく直接彼の顔を見て何するんだ!と訴えた


「もうっ!今そんな事しなくていいでしょ!?」

「自然な可愛い血色になれて良かったじゃないか」

「これは自然になったって言うより無理矢理っ……」

「おっと、時間だ。行くぞ真っ赤なリンゴ姫」

「くぅ〜……誰のせいだと!」


好きでリンゴみたいに赤くなったわけじゃないのに!また彼の好きにさせてしまって悔しい気持ちでいっぱいだ!

……………まぁ前からよくやるリドウとのやり取りの一環だから、悔しいって言ってもそこまでそんな歯を食いしばるような感覚じゃなくて、一本リードさせちゃったな。次は負けないぞ!なくらいだけどね

だから、得意げに歩くリドウを追いかけ、ホテルの一室から出ると、彼と腕を組んでイベント会場に向かった







ここはトリグラフで最近リニューアルして高層で高級になったホテル「ファルファーラ」。そこで執り行われるオープンセレモニーにクランスピア社の代表と護衛のエージェントが呼ばれるけど

代表ってのは勿論、社長であるルドガーだし、護衛のエージェントはユリウスさん

じゃあ私とリドウはと言うと…………

実はこのホテルにはリューアル前から裏の顔があるという噂があって。それがホテルの何処かで行われるカジノのオークションイベント

そのオークションでは違法な武器の販売があるだの、人身売買があるだの……ロクな話はない

そこで、表ではルドガーとユリウスさんが普通に正体された人間としてオープンセレモニーに出て、リドウと私は裏の事情を確認。いわゆる潜入捜査ってやつだ

潜入捜査と聞くと映画やドラマではカッコよく任務をこなす男女のペアだったり、女性がドジをしてもパートナーの男性がかっこよく助けてくれるシーンを想像しちゃうけど……



「(フィクションじゃない現実での潜入捜査ってこんな物々しいんだな…)」



潜入するのはまだだけど、今から緊張してしまう

作戦はこうだ。私とリドウは一般人としてルドガーとユリウスさんと離れた所でオープンセレモニーに参加する

そこで立食やらダンスが始まるけど、その時にカクテルを運ぶボーイさん達の中から青いネクタイをした人にある合言葉と部屋番号を言うと、カジノ会場への道と入る為の鍵をくれるから、そこを逃さないようにするんだけど


「(私に出来るかな………)」


リドウと一緒にいれば、彼がやってくれるだろうけど、青いネクタイのボーイさんが見つからなければ二手に分かれて探さないといけない

そうなれば私に出来るか?って少し不安になったけど、セレモニー会場の扉を開けると、華やかなドレスやスーツを身に纏った人達が楽しげに会話をする姿や普段行くような飲食店では見ない高級な食材を使ったまるで芸術品とも言えるような美しい料理が並ぶ会場の雰囲気に「普通にイベントに来た」みたいな感覚になって緊張は少し解けた


「わぁ!見てください!あれケーキですかね?まるでベロア調のアクセサリーケースを連想させるようなお洒落なデザートで………」

「あぁ。はしゃぐのもいいが、本来の目的を忘れるなよ?」

「勿論ですよ」


大丈夫大丈夫。ここに来た目的は忘れていません

ただ…………


「あの。普通に参加しながらボーイさんを探すのであれば………」

「?」

「楽しまなきゃ損ですよ!この瞬間!ですから、あっち気になるんで行きましょうよ!」


潜入捜査も大事だけど、すっかり私は普段テレビでしか見ない高級ホテルのビュッフェに心が踊り、せっかくだから楽しみたいとリドウに言うと


「はぁ。本当に目的忘れるなよ?」


そう私のウキウキとは逆に冷静で呆れた様子で鼻で笑ったけど、なんだかんだ付いて来てくれる

今は任務中だけど、こういうたまに見せる恋人らしい優しさに改めて好きだなぁと思ってしまう


おっと、任務は忘れてませんよ?
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