鱗粉の幻夜(鱗粉の幻夜)

一通りビュッフェの料理を食べながら周りを見るけど………ダメだ。青いネクタイのボーイさんが見つからない

探しても赤いネクタイのボーイさんなら沢山いる。本当に青いネクタイしてるボーイさんなんているのかな?とその存在自体を疑いながら探していると


私の足にドンッと軽い衝撃が


「うわ!」

「あっ!」


慌てて下を向くと、小さな女の子とぶつかってしまっていた!

大変!怪我はないか聞こうとしゃがんで女の子の顔を見たら



「(あ!)」


その子はよく知った顔の子だ

長い甘栗色の髪をツインテールにしてパーティー用のドレスを着た…………エルだった


「あ!っ………」


エルはぶつかった相手が私だと分かると、パッと笑顔になり「リル」って呼ぼうとしたけど、その口を自分で慌てて塞いだ


……………そう。このパーティーにはエルだけじゃなく、他のかつて一緒に旅をしたメンバーが何人かいる

レイアは勿論記者として取材するために来てて、ジュードとエリーゼはレイアの手伝いを名目に。ローエンはガイアスから託された贈呈品を渡すために。で、アルヴィンは裏でアルクノアが絡んでるのでは?と予想して単独で潜入捜査………と参加する理由は様々だけど、彼らもルドガーとユリウスさんと同じく表側はその理由で、裏側では潜入捜査する私とリドウの協力者としていてくれる

そしてエルは家族であるルドガーとユリウスさんが不在な時に一人で留守番するわけにもいかず、“大事な仕事をするからホテルにいる間だけリドウとリル、そしてアルヴィンを見かけても他人のフリをする”って約束で一緒に来たらしい


その話を聞いていたけど、いざ、こうしてばったり会うと「あれ?どう接すればいいのだっけ?」と一瞬混乱する

すると



「♪あ、あー!知らないお姉さんにぶつかっちゃったー!エルってば、本当に慌てん坊〜」


と、急に歌ってエヘヘと誤魔化した

ちょっとぎこちないけどナイス!エル!これなら私も一緒に乗れる


「……大丈夫お嬢さん?私もちゃんと前を見てなかったのが悪かったわ。ごめんなさい」

「ううん!いいよ!エルこそぶつかってごめんなさいお姉さん。じゃあもう行くからね」

「うん。エルちゃん、だっけ?気をつけてね」


そんなやり取りをして、エルがルドガー達の元に行ったのを見送った



「(よかった。エルが機転を利かせてくれて)」


そうだよね。このホテルにいる間だけは私とリドウは皆とは赤の他人だからね。なんかエルとお互いに他人行儀に呼び合って変な感覚だけど、これで良い……はず。どこからどう見ても私とエルは他人に見えた……はず

ホテルの裏側を牛耳ってる人が何処で見てるか分からない。変な事して感づかれて逃げられたら作戦失敗どころの話じゃないからね


ちょっと緊張したけど、一先ず一難去ったが………としゃがんだ大勢を直して立ち上がると


目の前にカクテルを運ぶボーイさんが

しかも………ネクタイは青だ



「(い、いいいいた〜〜〜!!)」


エルとばったり会ってしまった時よりも心臓が飛び跳ねた

本当にいたんだ!青いネクタイのボーイさん!!よく見ると、パーティー参加してる一組の夫婦らしき男女が何かとを話しかけて、ボーイさんがカードらしきものを差し出してる………あれか!あれがカジノ会場往くための鍵か!


「(リ、リドウ………って、あれ!?)」


後ろを向くと、リドウがいなくて驚く

さっきまで一緒にいたのに!なんで!?

思わずリドウを探そうとしたけど、一旦落ち着いて考え直した。ここでチャンスを逃すわけにはいかない。と

だから、私はリドウが居ない中、勇気を振り絞って青いネクタイのボーイさんに話しかけた


「あ、あの!」

「はい。どうなさいました?」

「その……………“青い胡蝶の湖”を806号室に2つお願いします」


思い切ってそう伝えると、青いネクタイのボーイさんは胸ポケットから宿泊者リストを見て何かを確認した後にカードを2枚出してサインを書くと


「では、22時にお持ちします」


と言ってカードを渡してその場を去った

やっ…………


「(やった〜〜〜なんとか鍵をゲットしたぞ〜〜〜!!)」



上手くいくか不安だったけど、なんとか言われたとおりにして鍵を手に入れられた事で安心してへたり込みそうになった

そして、ボーイさんの言った「22時にお持ちします」の言葉はたしかその時間に部屋に来てカクテルと一緒にカジノ会場へ入る為のアイテムを渡すという意味だ

よーし、早くリドウを見つけて報告しなきゃ!そう思っていると、そこへ


「無事に入手出来たな」


リドウが横から飲み物と拭くものを持って現れた


「はい。なんとか………と言うか何処に行ってたんですか?」

「お前がどこぞのじゃじゃ馬でそそっかしいガキにぶつかったから、こうして拭くものとか持ってきたんだけど、まぁ必要なかったな」

「じゃじゃ馬なって……」


いくら他人のフリとは言え、エルに対して言いたい放題だなってちょっと怒りそうになったけど、ぐっと我慢した

悔しいけど、今は他人のフリ他人のフリ。あくまで赤の他人の子供を悪く言われてもムキにならないように……と自分に暗示をかける


「それより、鍵はなんて?」

「はい。こちらで………“22時にカクテルをお持ちする”そうです」

「OK。それじゃあ22時になる前に部屋に戻るぞ」

「あ、でも場所は?」

「カードの裏にあるだろ」

「?」


そう言われ、カードの裏を見ると“1階の東側端の湖畔の絵の間。上弦の月が満月に変われば道が開く”と記されていた


「1階の東の端って………そんな絵ありましたっけ?それに上弦の月が満月に変わるって何でしょう?」

「さぁな。行けばわかるだろうけど………何が仕掛けられてるか分からないからな。あらかじめ噂について調べてから行く手もある」


リドウの言う通り、ホテルの裏側の噂がアルヴィンの予想だとアルクノアの残党がまだいて何か企んでるのでは?な曖昧なものだから、ちょっと確実な情報か、それに繋がる話が聞きたい

だから私はリドウの言葉に頷こうとした時



「おや〜!そこの彼女!変な男にナンパされてる?」

「っ!」
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