番外短編(look at me !!)








俺は今、泥酔してぐったりしている恋人を家まで送っている

はぁ……なんで俺がこんな事を?そもそも何故……
















〜〜〜〜数時間前〜〜〜〜




今日はクランスピア社でちょっとしたパーティーが行われた。企画的にはちょっとした事だが、人数は社内の半数以上が参加しているから規模は大きい


そんなパーティーの企画ってのは、売り上げ数が去年の2倍になったとかの祝いで、自由参加とか言いつつ新人やまだ社内行事に参加した事のない奴らは強制参加。つまり俺の部下であり恋人のリルは勿論出なければならない

で、そのパーティー会場に行くと普段はあまり使われないホール並みの広さの会議室の中に色んな部門の奴らがいる




「わぁ〜〜ホテルの結婚式場みたいですね」

「そうか?飾った部屋にワイン持った人間がたくさんいるから、そう見えるだけだろ?」




なんだか夢を見る子どもみたいな目で会場を見てそう言ったリルに、俺は本物の結婚式場はこんなんじゃないだろって言うと『そうですか、実物見てないんでわからなかったです』って苦笑する

その時、一人の女が俺の方に来た




「お疲れ様です、リドウ室長」

「ああ、お疲れ」




たしか、この女は医療の新人だったな。落ち着いた黒髪に眼鏡で可愛いとか他の連中が言っていたのを思い出した




「手術本番にはまだメンバー入りしてないか?」

「はい、まだ研修中で……」




仕事の話になるなと思ったその時、俺の隣にいたリルが「あ、あのぅ〜」って話しかけてくる




「どうした?」

「私、何か飲み物持ってきますね」




そう言うと俺の返事も聞かずにさっさと奥へ行った




「すみません。他の方とご一緒だったところを」

「いや、大丈夫だ。それより……」






















リドウと離れて私は一人、奥のテーブルにある飲み物を取りに来た

さっきの人……手術がどうって言っていたから医療のエージェントだよね。お話の邪魔しちゃ悪いってこうしたけど……




「(可愛い人だったなぁ)」




黒髪に眼鏡はヴェルさんもいるけどキリッとした知的な女性ではなく、どっちかと言うと可愛い印象だった




「(可愛い人と同じ部門か……)」




なんだかリドウがその人といるところを想像しようとしたら、嫌な気持ちになってしまってすぐにやめる




「(嫌だな……さっき会ったばかりなのに嫉妬だなんて。ちゃんとリドウを信じないと)」

「あれ?リルさん」

「イバル!」




醜い感情が渦巻いていた時、ちょうど同じく参加していたイバルに出会う




「?……あいつとは一緒じゃないんですか?」

「リドウさん?リドウさんなら、医療の方と話し中で私は飲み物を取りに来たんだ」




そう話しながら本来の目的である飲み物を選ぶ

えっと……リドウはワインでいいかな?それと




「(あの医療の人にも…持って行こうかな)」




そう思ってもう1つワインを取ろうとしたが……自分自身の分が持てないから、今ここで自分の飲みたい物飲んで運ぼうって思った




「あ、ごめんイバル。向こうの水取ってくれる?」

「はい!これですか?」

「ありがとう」




イバルに頼んで持ってきてもらった透明の液体が入ったコップを飲む


すると、飲んだ直後は冷たかったけど飲み干した後の喉にじんわりとした熱さが残る






…………あれ?


























「お話し聞いて下さってありがとうございました」

「ああ…(リル、何してんだ?)」




新人の仕事に対する話を聞いていたが、リルが戻らないのが気がかりだ

すでに数十分経ってるはずだ……まさか調子こいた男に絡まれているのか?って思っていると、奥が騒がしいのに気付く




「リルさん!大丈夫ですか!?」

「っ!」




リルの名前が叫ばれたのを聞いて足早にそっちに行くと、雑務に支えられて床に座り込んでいる彼女の姿が……!




「お前……」

「あっ!いや、俺なんですけど……俺じゃないんです!」

「はぁ?」




雑務の言葉の意味がわからないから一から説明させると、どうやら水と間違えてウォッカを渡してしまい、リルは気付かずに飲んでしまったらしい




「うっ……たて…な……ぃ…」

「すみません!頼まれたとは言え、間違ってしまって…」

「ったく、面倒な事しやがって…」




ここにいても仕方ねぇ…とりあえず家に送ったらいいだろうって、彼女を背に抱えてクランスピア社から出た














〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「ここか…」



ぐったりしているリル本人には案内頼めないって気付いた俺は、ヴェルにメールでリルの住んでいる所を聞いてその通りに行く

俺の住んでいる所よりも高さが低いマンションが見え、表札を見て号室を確認してから彼女の鞄から玄関のカードキーを取り出して玄関を開ける

電気を付けて辺りを見るとパステルカラーで統一された家具が視界に入り、リルらしいなって笑ってしまった




「大丈夫か?」

「ん……」




リルをベッドに下ろして水を渡したが起き上がってこない様子から、これは寝た方がいいと思い俺は出て行こうとした

恋人の家に初めて来たものでもあるし何よりもリルが心配だからもう少し側にいてやりたかったが、酔っている女の家に男(恋人だが)がいて一夜を過ごせば誤解されると思い、彼女の記憶が無い内に退散だ



………と、思ったが




俺のスーツの裾が引っ張られた




「リル……?」




そこには寝ながらうっすら目を開けてトロンとした目付きだが俺をしっかり見て、右手で俺のスーツの裾を掴むリルがいた




「どこいくんですかぁ?」

「あ?帰るんだが…具合悪いか?」

「うん、だから……」

「?」

「いっしょにねてください」

「はははっ、それは是非ともやってやりたいが、今のお前にはできないな」

「………」

「二日酔いの具合が悪い目覚めの後に俺がいたら嫌だろ?せっかくのお誘いだが……」

「わたしが、かわいくないからですかぁ?」

「はあ?何を…」




突然訳のわからない事を言ったと思いきや、リルはいきなり起き上がり俺に抱き付いてきた!




「っ!?」

「リドウさんはかわいいひとのところにいくんでしょ!そんなのいやですぅ!」

「お前、さっきから何言ってるんだ?」

「いやだいやだいやだ!リドウしゃんとられるなら、そのまえにあたしがたべてやりゅー!!」

「待て!少しは落ち着……っ!?」




呂律が回らなくなった言葉でそう叫んだと思いきや、いきなりキスしてきて、俺は払いのける事も出来ずに床に倒されてしまう

俺に馬乗りになったリルは次に自身の服を脱ごうとしていたから、慌ててその腕を掴んで今度は俺が押し倒して何も出来ないようにさせた




「(あ、危ねぇ〜…もう少しで逆に襲われるところだった)」




まさか強目の酒でリルがこんな事をするとは思えず、完璧に油断していた

……早くここから去らなければ、彼女からした事とは言え何かあれば男の方に責任が疑われる

そう思って出て行くチャンスを伺おうと、リルを見ると



小さく声を出して泣いていた




「うっ……ぐすっ…」

「(なんだ?何処か痛めたか?)」




さっきの形勢逆転で怪我をさせてしまったかと思い、大丈夫か聞くと




「わたしなんて………もうどうでもいいんですね」

「はぁ?だからさっきから何を言ってんだ?」

「いいでしゅよ……さっさとめがにぇのおんにゃのとこりょにいったらいいんじゃないでしゅか…」

「あ?まさか…」




呂律の回らない口から眼鏡の女って聞こえたが、それってあの新人の事か?

なんでいきなりそいつが出てきたかと思ったがさっきのパーティーを思い出して納得した

つまり気を遣って離れたのはいいが、やっぱり俺が他の女と一緒なのが嫌だった嫉妬から来ていたんだな。変な発言は




「嫉妬してくれるなんて嬉しいが、たしかに今のお前は可愛くないな」

「しょーでしゅかぁーだったりゃ、しゃっしゃと…」

「まぁ待て。俺がお前が可愛くなる方法を教えてやる。見事に出来たら一緒に寝てやる」

「ほんりょうにぃ?」

「ああ、本当にだ」




涙目でムスッとした顔の彼女に耳打ちである言葉を囁く。そしてそれを言うように促すと少し考えて数秒後、意を決して俺に言った




「リドウしゃん………あなたにすべてをささげます!」




酔っているがさっきよりは呂律を直して真面目に真っ直ぐ俺を見てそう言った彼女を見て、俺は満足する




「OK、良い子だ!」

「っ!?」




そしてすぐに持っていた睡眠薬をリルの口に入れると、驚いた彼女は突然の事に吐き出しはしないで一気に飲み込み、数秒後には静かに寝息を立てはじめた




「(はぁ〜……成功だな)」




途中で即効性の睡眠薬を持っている事に気付いて咄嗟にやったら成功したと、ほっとひと安心して、再びリルをベッドに寝かせる




「(騙して悪いな。けど、一時的の正気じゃない感情でやった行為で泣かれてほしくない俺の気持ちも理解してくれよ?)」




悪いと思いながらも、ああでもしなかったらリルは俺を離してくれないし、もっと大変な事になっていたかと思えば自分のやった事は正しい




「(……次からは強目の酒は薦めないようにしよう。それと、彼女自身にもやめるように言わないとな)」




穏やかに寝るリルを見て、出て行こうとした足を止めまた戻った俺は…







「(全てを捧げるって言ったお前の顔や雰囲気は、ちょっと可愛かったぞ)」




言われた直後を思い出しながら、寝ているリルの頬にキスを落とし、何事も無かったかのように家を出た













〜おまけ〜




「おはようございまーす…いだだだだ…」

「二日酔いか?」

「そうでーす……うぐっ…あ、あの……」

「?」

「昨日はありがとうございました…」

「あ?ああ…」

「だけど、ひどいですよー…」

「なっ、何がだ?(まさか、昨日の事は全て覚えている…!?)」

「手旗信号したと思ったら、いきなり腕相撲して!」

「………は?」

「何を考えているんですかー?もう……」

「お前、それ……」

「?」

「夢と現実が混ざってる。俺はんな事してねぇぞ」

「ええっ!?そうでしたか、あれは夢か〜……びっくりした」

「(俺が驚いたわ!)」




END


(リクエストで書いたものです!ありがとうございました!)
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