番外短編(見上げる空に思いを)
「おい、リル。何処まで歩くんだ?」
「もう少し先です!」
私と歩調を合わせながら少し疲れた様子でそう言ったリドウに、この先ですから頑張ってくださいって言うと「馬鹿か。まだ疲れていない」って意地を張った
なんだか、子どもみたいだなーって思ったけど、今日は私のわがままに付き合ってもらっているから黙って私も歩く
「なぁ、次のデートなんだが……」
「はい」
「お前の好きな所にしようか?」
ある日の昼休みにリドウからそう告げられたのが始まりだった
それを聞いた私は率直に、いつもリドウが自分で決めたり自分が気に入った店にしようって言うのに珍しいって思ったな
そして、私自身もリドウの選ぶ店や場所はどれも不満は無い上にすっかり頼りきっていたから、私が選ぶって言ったら前にも行った事がある場所……つまり、いつものデートになってしまう
あ、いつものデートに不満ってわけでもないよ!ただ、せっかく私に選ばせてくれるって言うなら……いつもとは違うデートにしたいなって考えたから
「そうですね〜、ん〜〜……」
何かいい所は無いか?って必死に頭の中を探っていると、ある場所が脳裏を過る
「……外でピクニックなんて、どうでしょう?」
「エレンピオスに出来る場所なんてあったか?」
「大丈夫です!いい所知ってますから!」
「そうか……ならそれでOKだな」
なんだか、イマイチ腑に落ちない様子のリドウだけど雪が降らない限り今もまだ大丈夫……だと思う
そうして、私達はその私の指定する場所に向かっているわけだけど……
何せマクスバード近くだから、すごく遠い
列車に乗ってきたけど、かれこれ数十分も歩いているから私も足が疲れてきた
あ、リドウは……私よりも年上だからかなり疲れているだろうなーって、そうは見せないように振る舞っている顔を見て大丈夫ですかー?って聞こうとしたけど、彼の事だから「大丈夫だって言っているだろ」とかキレ気味に言いそうだからやめる
そんな中私は指定した場所を探す。たしかあれはルドガー達と一緒にいた時に見つけて、荒れたエレンピオスにあるなんてって驚いたなぁ
「なんだ?あれは…」
「はい?……あ!」
リドウが先に探していた場所を見つけてそう言ったのを聞いて、私は確認のためにリドウよりも早く走って見に行く
「(よかった。まだ大丈夫だ!)」
場所は合っているけど肝心のものが無いと意味がないって不安だったけど、ちゃんとあって安心した
「ここです!ここでゆっくりしましょ!」
「あ?何だ……花か?」
私がリドウに案内した場所とは……そこは、一ヶ所だけまるでリーゼ・マクシアみたいに緑があって端に真っ赤な野薔薇が咲いている
リーゼ・マクシアとの境界線に近いから、突然変異で一時的に流れたマナで芽吹いたと思われるこの小さな緑地と綺麗な野薔薇を見せたかったんだけど…
「あの……どうでしょう?」
リドウは果たして何て言うのか気になって、おそるおそる聞いてみると
「どうもこうも……お前が行きたいって言ったから来たんだから、俺は何も文句無いぞ」
「そうですか……」
「それより着いたんなら、座るぞ」
「あっ、はい!」
場所に対しては何も言わないで、到着したならすぐに敷物を敷いて座りたいと言ったリドウに私は準備をする
敷いたら次に私が作った弁当を出すと不安そうな顔した
「それ、大丈夫なんだろうな」
「大丈夫ですよ〜……多分」
「……不味かったらそれなりに覚悟しろよ」
「ええ〜〜!」
どんだけ腕が下手なままだって思われているんだろう……あれから頑張ったんだから、少しは見直してくれるはず!
味には自信が少しあるから、堂々と蓋を開けると―――
「はぁ?」
「え……うわあああ!!」
なんとそこには、数種類のおかずが混ざっている大変見苦しい弁当になっていた!
「さ…さっき走った時…ですかね?ははは…」
「ははは、じゃねぇだろ!」
「あ、痛っ!」
苦笑で誤魔化そうとしたら、コツンッと軽く拳骨をされて頭に痛みはわずかだけど痛いって言ってしまう
「あ、でも味には少し自信あるんですよ!」
「混ざってる時点でアウトだ」
「混ざっちゃいましたけど、もしかしたら更に美味しくなってるかもしれません!ですので、どうぞ!!」
せっかく作ったから勿体無いってのもあるけど、何より少しは上達したのを認めてもらいたいから諦めずに食べてくれるようにお願いすると
「そんなわけねぇだろ」
そう言いつつリドウは、ホウレン草の炒め物と混ざってる卵焼きを一口食べる
「………」
「どうですか?」
「……いたって普通だな」
「普通…ですか」
また感想らしくない事を言う。まぁ不味くなければいいかって思い、私も食べはじめる
……うん。デザートのりんごの隣にタコウインナーを置いたのが最大のミスでした
「で、この後どうするんだ?」
「この後ですか?そうですね……えいっ!」
昼食を食べた後に座っていた体勢から、いきなり後ろに倒れて横になった私を見て「何してんだ?」って、まるで子どもを見るような呆れた目で見て聞いてくる
「ゆっくりしましょう。お腹もいっぱいですし」
「太るぞ?…ああ、もうなっているか」
「なんですと!?」
失礼発言をして笑いながらリドウも横になる
……リドウも太ってしまえ。そんな小さな地味すぎる念を送ると、リドウは私の方を向いて自身の左腕を私の頭の上に置いた
「え?え?なんですか?」
「頭を少し上げろ」
言われた通り頭を少し浮かすと、その間にリドウの腕が入ってきた。こ、これは……!
「もう下ろしていいぞ」
「腕枕……ですか?」
こういう事をされるのは初めてだから、照れながら聞くと「いいから早くしろ」って促される………肯定だね
少しドキドキしながら頭をリドウの腕に乗せると、彼の腕が細いせいか骨がなんか痛い…けど、それ以前に顔が近くて直視できない
「(前に漫画で見て、いいなぁって思ったシチュエーションに自分がなってみるとやっぱり緊張する)」
「…こういうのも悪くないな」
「えっ!?な、何がですか?」
「いつものデートも良いが、のんびりするのも悪くないなって」
「本当ですか!?」
よかった……実を言うと、このデートの目的はここの場所を良いって言ってもらう事ではなく、違った形のデートを楽しむため
思えばリドウとこうしてゆっくり出来る時って少ないから、すごく貴重だ
リドウにこの時間を良いって言ってもらえて嬉しく思っていると
私達の目の前の空に赤い花弁が舞っている
「あ、薔薇が……」
そう、これは後ろにある野薔薇からだ。空に舞ってて綺麗だけど花弁が散っているって事はそろそろ終わる時期
「なんだか綺麗だと思う反面、少し寂しい感じですね」
思わずそう呟くと、リドウは花弁を一枚取って見ながら私に言う
「なら、次にはちょうど咲き時に来るか?」
「つ、次も……!?」
まさか彼からそんな事を言われるなんて思っていなかったから、上体だけ起こして驚いてリドウを見る
「驚く事か?まさか次までに別れたいのか?」
「ち、違います!ただ、もう来年まで約束してくれるなんてって……嬉しくて驚いただけです」
「そうか?なら、いいが」
なんだか楽しそうに笑うリドウは、起き上がっている私に自分の腕に来いってまた促すから、すぐに私はまた彼の腕に頭を乗せて照れながら言った
「来年は源霊匣が完成して、緑も広くなって薔薇もいっぱいになっていると良いですね」
「俺はそれよりも、リルの料理の腕が上がっている事を願うよ」
「上がりますよ〜!最初の時より上達してますし」
「そのレベルで止まったりしてな」
「大丈夫ですよ、今より上達します……多分」
「その多分は“絶対”に変わってほしいな」
「なりますよ〜……たぶ」
「多分って言うな!」
「痛いっ」
ふざけ合いしてたら、リドウから空いている手でべしっと軽く頭を叩かれたけど、その後にお互いを見て笑う
いつもとは違うデートは大成功。そうずっと嬉しく感じながら来年の約束は“絶対”にしたいって私は思った
END
(サイト1周年記念に書いたものです!読んでくださってありがとうございます!)