はじめまして異世界よ



すごいな…この家は広くて玄関から食卓までは少し離れているんだな…

その食卓に案内されると、見たこともない置物や天井に輝く光を見つけて更に驚く



「(あ、あれは何なんだ!?お、これは……なっ!それは何だ!?)」

「ピギィ!?勝手に動き回るな!人ん家を漁るな!!」

「うわっ!?」



食卓の隅にあった四角くて黒い物を触っていると、途中でどこかに行った翔君がいつの間にか着替えて俺の近くに来てそう注意した

仕方なく低いテーブル近くに座って大人しくするけど、気になる物ばかりだから頭だけをあちこちに動かして見ていると、いきなり頭上を掴まれて止められる



「何もしてないが?」

「動きが鬱陶しいわ」



もっと大人しくしろって事なのか頭上を掴む力がぎりぎりと強くなって、従うしか無い状態になる



「痛い痛い痛い。わかった!わかったから大人しくするよ…」



俺がそう言うと夕飯が出来たらしく女性が上に向かって誰かを呼ぶ

すると、階段を下る音がして男の子と女の子が此方に来た



「あ、翔兄ちゃんおかえ…」

「ん?……え、誰すか?」



二人は俺を見てキョトンとした表情をして聞いてきた。俺はとりあえず「はじめまして」って挨拶して一礼する



「翔君のお友達やって」

「そうなん?」

「……おん」



女性と翔君の言葉で俺が彼の友達って聞いた二人は、珍しそうな顔をしながら翔君と俺を交互に見る。そして女の子の方が私の近くに座って話しかけてきた



「はじめまして〜!翔兄ちゃんの従姉妹のユキって言います!」

「お、俺……ユウタって言います!」

「ユキちゃんとユウタ君か。はじめまして俺はユーリィだ」




離れて座った男の子も女の子に続いて自己紹介した

にしても、てっきり翔君の兄妹かと思ったら従兄妹?そう言えば女性の事も母とは言わずに伯母さん呼びだったな…

じゃあ翔君の両親は?って翔君を見ながら疑問に思っていると、女性が料理を運んできて食事が始まる



「遠慮せんで、たんと食べなぁ」

「は、はぁ………っ!?」



いきなり来てしまって本当に大丈夫なんだろうかって不安になりながら返事をして、食卓に並べられた料理を見て俺はすごく驚いた。すごい…こんなに沢山野菜とか肉や魚を使っているなんて…!

家の造りから見てて思っていたが、ここは上流階級の家なんだな。そんな食事を食べれる日がくるなんてって感動しながら器に盛られたある物が気になった



「えっと……この白くて小さい粒の集合体は何なんですか?」



そう聞くと皆は一瞬驚いたが、女性とユキちゃんは笑いながらすぐに答えてくれた



「あら!ごめんなぁ。やっぱり外国人さんやったんやね。日本語上手いから食べた事あるんやないかって出したけど……」

「それ米って言うんやで!ジャパニーズ主食!」

「(こ、これが主食だと!?驚きだな……しかし、こめ?それにがいこくじんってなんだ?)」



主食はパンやパスタで無い時にはジャガイモを食べている俺にとってはこんな細かな米と言うものが主食になるのか半信半疑だ

それにしてもがいこくじんとジャパニーズってどんな意味なんだろう?って考えていると、女性とユキちゃんは話し続けてきた



「えっと…ユーリィちゃんって言うん?」

「はい」

「外国人さんの上にえらいべっぴんさんやな〜!翔君、この子とどうやって友達になったん?」

「そうや!ひょっとして翔兄ちゃん行ってる高校の留学生?」



そう言って顔をマジマジと見はじめて少し戸惑った。おおぅ…さっきも見てたのに、間近でもですか…初対面なのに結構ずんずん来るなこの人達は

けど、今はそんな話じゃないな。がいこくじんって結局何なのかわからないが、俺が何故ここにいるのか不思議に思い始めたようだ

どうしよう。この人達にも俺は壁に囲まれた国で巨人と戦う世界にいて何かの拍子で来てしまったって言うべきか?いや、翔君のように信じてはもらえないだろう。それか不審に思ってこの世界の憲兵を呼ぶかもしれない

どう答えようか必死に考えていると




「この子…社会勉強しに来たんやって」

「社会勉強?」

「(えっ?)」



いきなり食事を中断した翔君がそう答えた

え、ちょ、待って…何を言い出すんだ。そう訴えようと服の裾を引っ張るが、彼はそれを無視して続ける



「それで日本に来ているみたいやけど、住んでた所が火事になって住む場所も金も一文無しになってしまったそうや。とにかく仕事を探して衣食住を何とかしようとしてはったところに僕が通りかかって話したんです」

「ええっ!?」

「(うええええぃ!?)」



危うく俺まで皆と声出して驚くところだった!

なんだそのぶっ飛んだ設定は…!まぁ本当の事の方が信用されないと思うからそれに比べれば…にしても、彼は何でそんな事を…



「それ、ほんまなん!?」

「え……あ、はい……」



驚いて聞いてきた女性に俺がそう答えると次はまるで同情するような悲しそうな顔をして、何か考え込んで数秒間黙った。そして……俺に一言言った



「ユーリィちゃん…もしよかったら、帰る日までうちで暮らさない?」

「えっ…!?」



突然の提案に俺はすごく驚く。たしかに衣食住をなんとかしたいって思っていて今日は野宿する覚悟をしていた時に、こうして夕飯をご馳走になって「もし良ければ今晩だけ泊めさせてくれたらいいなぁ」っては思ってしまったけど…女性の言い様じゃ帰れるまでいてもいいってことだよな



「いいんですか?見ず知らずの相手にそんな…」

「私は困っている人を放っておけない性格なんや。ましてや翔君のお友達なら尚更や」

「うちも賛成やで!」

「お、俺もや…!」



なんと家族全員が俺にここに居てもいいって言う(翔君は黙ったままだけど)

いいなら、すごく助かるけど……俺はもう一度確認して決めた




「じゃあ…しばらくお世話になります」

「おん!他にも困った事があったら、何でも伯母さんに話してな」

「おっ、おっ、おっ…俺も協力します!だから…」

「うわー!兄ちゃんがユーリィ姉ちゃんに緊張しながらアピールしてて気持ち悪いわ〜!」

「う、うるさいでユキ!」



ユウタ君は何故か顔を赤くしながらユキちゃんの言葉に対してムキになって否定する

まぁ何にしろ、まさかこうして衣食住をすぐに確保出来たなんてな…巨人のいない平和な世の中に暮らしていると、こうして他人に優しく出来る人が多いのかな

いや、巨人がいて自由のない残酷な俺の世界でも他人に優しすぎる人はいたな…

なんてある人達を思っていると女性から「じゃあ家族なったんやからユーリィちゃん。おかわりも遠慮せんで言ってな!」って言って野菜と肉の炒め物を皿に乗せてくれた



「ありがとうございます!えっと…」

「ああ。私は普通に伯母さんとか久屋のおばさんでええよ」

「はい、じゃあ改めて…ありがとうございます!久屋のおばさん!」



またお礼を言うと、女性…久屋のおばさんは「おんっ」って返事して笑う

良い人だな…この人。そう心の中でも感謝しつつ手料理を鱈腹食べた














―――――――――――










「ごめんなぁ。ちょっと狭くて汚いとこしかなくて…」

「いや、寝るとこも提供してくれてありがとう。ユキちゃん」



夕飯後、ユキちゃんに案内されて俺用にスペース作ってくれた少し埃っぽくて物が沢山ある部屋に来る

とりあえず寝れるスペースがあれば十分だし急遽こうして場所を儲けてくれたんだから、むしろまた感謝だ



「お風呂出来たら呼ぶから、それまでゆっくりしててええよ」

「ああ」

「あ、兄ちゃんが何かしたら殴ってええから!それかユキを呼んで!」

「兄ちゃんって…どっちの?」

「ユーリィ姉ちゃんをずっと見とったユウタ兄ちゃんの方。ホンマ迷惑な事せんとええけど…」

「あはは。わかったよ…でも大丈夫だ」



ユキちゃんのユウタ君の言い様に笑いながら、もう一人の兄ちゃんである翔君について聞く



「もう一人のお兄さんの方は信じているのか?」

「まぁそんな事せぇへん人だって信じとるけど、本人はあんま女性には興味ないかもなぁ」

「…なるほど」



たしかにあの態度じゃ女性にでれでれするような性格じゃないのがわかるし、尚且つ誰にでもあんな態度だったら女性に興味ないって言うか、他人に興味ないかもしれないな

そう考えながらユキちゃんに再度お礼を言って別れて部屋に入って、用意されている布団に寝転がる

変わってるなぁ布団を直接床に敷くなんて。ベッドじゃないのが不満ってわけじゃなく単純にまたこの国の文化を知ってわくわくしている

変わった文化や風習、そしてここの家の暖かさ。来てからずっと感動してばかりの俺はある事を忘れていたって気づく



「(あ、立体起動……外に置きっぱなしだ)」



翔君の服に引っ掛かってやむを得なく脱いで外したけど、そうしていてよかったなって思い返す

もし着けたままだったら、おばさんに驚かれてしまい、追い出されていただろうなって。そして脱いだのを近くにあった植物の陰に置いたけど、幸運にもそこは入ってきた人には見えない位置だ

だけど、あのまま置きっぱなしのわけにはいかないなって、静かに取りに行こうと玄関に向かう



「(えっと、このドアが玄関だよな…)」



たしか、この大きな硝子と木で出来た変わった開け閉めの仕方をするドアが玄関だよな…そう思いながら静かに開けようとした時



「何しとんの?」

「うわっ!?」



後ろからそう言った声が聞こえて驚いて振り返ると、そこには翔君がいて…




「あ……それ」




手には俺の立体起動装置を持っていた



「面倒事になる前に回収して、お前に渡そう思うてたとこやった」

「すまないな………あ、ちょっと待て」



立体起動装置を渡してさっさと自室に戻ろうとした翔君を呼び止めて、ずっと気になっていたのを聞く



「何故、俺を追い出さなかった?」

「ファ?」

「信じてるのか信じてないのかわからないが、とにかくお前は俺が他の世界から来たから助けてほしいって言った時、断ったよな?」

「そうやったな」

「しかし、おばさん達に俺の事を聞かれて怪しまれない説明をしただけでなく、それを信じたおばさんから帰れるまでここで暮らしていいって提案した時、何故反対しなかったんだ?」



そう、最初は俺と関わりたくないって態度だったのに、何故途中から黙っているのか気になっていた



「……別にお前の為ちゃうで」

「?」

「剣やら銃やら出す奴を追い出したら、逆恨みされてまうかもって考え直したんや」



なるほど……たしかにここの家の中を見たら、こっちの世界の国の家庭みたいに護身用の武器が見当たらないから恐らくこの地域の治安は良い方で、逆に武器を持っている人間が少ないから野放しにしたら物騒だろうって思ったんだろうな



「そう言う事か……利口な選択だな」

「せやろ。じゃっ…」

「あ、まだ話がある!」

「何や…」

「さっきからお前達は独特なしゃべり方をしてて、わかるところもあったが、どうしてもわからない言葉がある」

「…ん?」

「べっぴんさんってどんな意味なんだ?」



語尾を変えているのは何となくこう話しているのかってわかるけど、そのべっぴんさんってのが俺の中で当てはまる言葉が思い付かない。それも疑問に思っていたから聞いてみたけど…



「……それはユキちゃんに聞いたらええわ」

「え……?」



彼は顔を背いたままそう答えて自室に戻っていく



「(ん?まさか、わからなかったかな?それとも教えるのが面倒だった?)」



イマイチ腑に落ちないないが、今俺は立体起動装置を持ったままだから、こんな姿を翔君以外の人に見られたらまずい。今日はとりあえず壁外調査の疲れもあるから、大人しく用意された部屋に戻って寝た