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爆弾騒ぎはとりあえず落ち着いたけど、まだ少しばかり不安が残る中、列車に戻り再度目的地まで出発する

そんな列車の中で私と千鶴は美雪ちゃん達と一緒にいて話をしていると、明智さんもこのマジックショーのツアーに参加していた事が分かった

警視って言うからには頭が固そうなイメージがあったけど、こうしたイベントも好きなんだなぁって私や美雪ちゃんは意外に思いながら話を聞いていると、明智さんは終点である死骨ヶ原駅のステーションホテルで恒例となっている彼らのマジックショーが毎年の今頃に行われてると教えてくれた



「こう見えても私は大の奇術ファンでしてね」

「へ〜なんか意外〜マジックショーなんて、なんか子供だましみたいなモンに明智さんがハマってるなんてさ――…」

「本当に優れたマジックは『子供だまし』ではありませんよ。金田一君」



金田一君は明智さんの普段のイメージからは想像つかなすぎて思わずジト〜とした目線を向け小馬鹿にしたような発言をすると、失敬なと言わんばかりに明智さんはマジックについて語りはじめる



「完成されたマジックは『完全犯罪』のようなもの!まさに一分のスキもない。それはある意味で芸術の域に達している。といってもいいでしょう」



なるほど………マジックは仕掛けや準備など色々必要なもの。言ってしまえば犯罪を犯した人がどうやってアリバイ工作や誤魔化しをするか考えるのに似てるかも



「(でも、やられた側はたまったもんじゃないわ……)」

「一華さん?」

「あ、すみません。ちょっと考え事を……」



思わず嫌な事を考えて黙っていた私を心配した明智さんに声を掛けられて、慌てて返事をして話を聞き続けた


「――もっとも、そんな素晴らしいマジシャンには日本ではひとりしか巡り会ってませんがね……」


そして話の最後にそう閉めて、どこか寂しそうな表情をしながら俯く

日本にひとりしかいない素晴らしいマジシャン……そう言いながらこの幻想魔術団のショーを見に来たって事はその人って……


「明智さん。それは?」


そしたら、金田一君が明智さんの持っていたパンフレットに目が行き、そのまま借りて明智さんからの説明を聞きながら見始めた

パラパラと捲って内容を簡単に見ていると由良間が紹介されてるページを見て「あ…!この人…」と美雪ちゃんが苦い顔をして後ろに居る本人をチラッと嫌そうに見る


「美雪ちゃん。あんまり見ちゃダメよ。どうしようもない傲慢さと高すぎるプライドと天パが移って目と脳がやられちゃうわ」

「あはは…気を付けます」

「もう。一華ったら……まぁだいたいの言い分は同感ね」


私は由良間の気に入らないところを並べて美雪ちゃんに見ないように言うと、千鶴は少々呆れ顔をしつつも私の言う通りだと同意してくれた


まぁそれはさておき、明智さんの説明を聞きながらパンフレットに載ってる夕海さん、左近寺さん、桜庭さんと続き、そして山神団長を見た


ファイヤーマジックを使う山神団長が幻想魔術団を結成したのは5年前だと聞いた私は、近宮さんが亡くなってすぐに立て直したんだろうな。かなり大変だったろうに。と思っていると、美雪ちゃんが思い出したよう佐木君と「そーいえば団長さん見つかったのかしら?」と話した

たしかに……あの食堂でのマジックが始まる時に挨拶してから姿を見かけてない

それはマネージャーである高遠さんも言ってたし、ずっと探してるらしいけど……本当に何処に行ったんだろう?



「ん…?このオバサンは?さっきの魔術団のメンバーの中には、いなかったみたいだけど……」



パンフレットを見ていた金田一君がある人物に目が留まったみたい。魔術団のメンバーに居なかったその人は……近宮玲子さん



「彼女は近宮玲子。この幻想魔術団の前身である近宮マジック団の団長です。そして彼女こそ私がさっき言った日本が生んだ唯一『本物』のマジシャンです」



近宮さんが明智さんの尊敬しているマジシャンだと知ると美雪ちゃん達は「この人が?」とか「見たことない人だなー」とか言いながらまじまじと載っている写真を見た



「見たことないってのは仕方ないかもね。近宮さんはマスコミ嫌いでテレビにもほとんど出なかったらしいわ」

「千鶴さん達も近宮さんを知ってるんですか?」

「ええ。前に近宮さんのマジックショーを見たことあるの」

「私も幼い頃に見た事あるけど、あの人のマジックは本当にすごいものだったわ」



千鶴の言った言葉に私は頷き、それぞれ近宮さんについて知ってる事と彼女のマジックは本当に凄いものだと話す

それに続いて明智さんは、近宮さんとの出会いと他のマジシャンにはない輝きを持っていたと、懐かしみながら話してくれた



「彼女が5年前マジックのリハーサル中に事故で亡くなったと聞いた時は本当に残念でしたよ。彼女が繰り出すマジックのあの輝きが…もう2度と見られなくなったんですからね…」



明智さんの言葉から本当に近宮さんを心から絶賛している事と……彼女の突然の死に無念そうな様子が伺えた

そこで一旦区切った明智さんが次に話したのは、今の幻想魔術団やってるマジックのほとんどが近宮さんが作ったものだという事

それを聞いた佐木君が『生きたマリオネットもその人が…?』と明智さんに聞くと、彼はコーヒーを飲んで一息ついてから答えた



「―――いや…それは彼女の死後に作られた魔術団オリジナルのマジックです」



だけど、そこまで言った明智さんはコーヒーカップを置いて一言続けた



「――――と、言われてはいますけどね…!!」



何らかの思いが含まれたその一言を言い終わった後、鋭い視線を幻想魔術団たちに向ける

どういう事なんだ?と皆は何が裏事情があるのか明智さんに聞こうとした時、旭川駅に着いたアナウンスが社内全体に流れ、ほとんどの乗客が下りて列車内がかなり空いた

あとは終点の死骨ヶ原ね。何事もなく無事に着いてくれれば……出発した列車の中でそう願っていると



あの携帯が鳴る




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