突拍子もないトリップ
日が沈む時間だけど、まだまだ昼の暑さや明るさが尾を引く夏の夕暮れ
赤から濃い青色に染まりかけた街では、甘くてとろけそうな匂いや香ばしいソースの匂いに包まれていた
そう。今日は近所で夏祭りが行われていた
「やっぱ暑い夏はかき氷だな!」
「そうだけど……レン、それ何杯目?」
「ん?たしか5杯目」
「いくらなんでも食い過ぎ!!」
そう友達にツッコまれながら俺は笑ってかき氷を食べ続ける
俺はレン。高校3年の18歳!今年で最後の高校生活という事で、思い残しのないように夏休みをエンジョイしようと友達と一緒に夏祭りに繰り出したんだけど……
ただ、祭りを楽しむのも良いけど、祭りで売られる好きな食べ物をどのくらい食べれるか自分の限界に挑戦!という事で、ちょいちょい間にお面買ったりとか射的をやりながらほとんど食べてばかり
中でもジュースやかき氷等の冷たいものが多い
「だってクソ暑くない?冷たいものめっちゃ欲しくならない?」
「え〜いくらか涼しくなってきてるよ。もしかして厚着してる?」
「いや、厚着してないし、むしろ涼しくなるキャミ着てるんだけど………………………あ、ヤバ!!これ逆の温かくなるキャミだ!!」
「ぎゃはははは!!ちょ、馬鹿じゃん!!」
なんと俺はここでUN◯QLOのサ〇ファインじゃなくてヒー〇テックのキャミソールを着ているのに気付いて自分のあまりの馬鹿さを嘆き、友達は大爆笑
くそぅ……通りでやけに暑いわけだ!!
「あ、そろそろ花火始まるみたい!」
「マジか!じゃあ“あの場所”に急ごう!」
花火が始まると聞いて、もう装備してしまったヒー〇テックを着たまま俺は友達と秘密の場所に向かった
向かった先は廃業になったショッピングセンタービル
ビルと言っても田舎クオリティーだし、そんなに階数は多いわけじゃない
ここは一昨年に廃業して普段は厳重に鍵やら鎖やらで閉まってる場所だけど、数日前に偶然にも非常階段の鍵が壊れてて開いてるのに気付いた
だから、この非常階段で屋上に登ってそこから花火を見ようと考えた結果………大当たりだった
俺達以外もいない屋上からの夜空には、次々と大きく咲いて輝く花火がよく見えた
「おおー!!すっげぇ!!」
「毎年見ている花火だけど、より迫力あるね!」
友達が言ったように普段は祭り会場から遠い石段からとか、出店で並びながら人混みの中から見たり……とかで、こんなにプライベートな空間で打ち上げ場所から近い所で俺達だけで楽しめる特別感と、悪い事をしてる背徳感のようなものから来るスリルが身体を走り、なんだか楽しさよりも興奮な状態に近いかも
でも、あまり騒げば誰かに気付かれるかもしれないから、あくまでも慎ましく楽しまないと……
「レン!こっちで見たらもっとすごいんじゃない?」
友達が指差したのは屋上の一角に置いてある子供用の遊具たちで、その中の滑り台だった
「なるほど!それはいいな!」
より高い所だから、もっと良く見えると単純に考えた俺は友達にナイス!と言いながら一緒に滑り台の上に登った
子供用だから少し小さいし階段と滑り台の間のスペースが狭いけど、ぎりぎり俺と友達の二人が立つことが出来た
「おお!これめっちゃ良いショット撮れそう!」
友達はそう嬉々しながら携帯を構えて花火を撮りまくる
俺も撮ろうかと自分の携帯に手を伸ばそうとしたけど、それよりも喉の乾きが気になり、携帯は後にして鞄の底にあった未開封のペットボトルを取り出す
「(やっぱキャミとは言え、夏にヒー〇テックは恐ろしいな………)」
どうせここは俺と友達しか居ないから、飲んだ後でキャミ脱ぐか
そう考えながら、ペットボトルのキャップに力を加えると………
シュボンッ!!と爆発みたいな激しい音を立て、弾ける泡と共にキャップが真上に飛び上がる!
…………そうだった。俺が持ってた飲み物はコーラで炭酸が強めのものだった
それを出店回りの最初ら辺に買って、ずっと動き回っていたから中で炭酸が蓄積されていたんだろう
しかも、最悪な事に………
「ぎゃあああああああ!!目……目があああああ!!」
吹き上がったパチパチな泡が俺の目に直撃した
「レン!?」
ペットボトルから吹き上がった音と俺の悲鳴を同時に聞いて驚いた友達の声にすぐに大丈夫だと言いたかったけど、炭酸の激痛が酷くてその場に悶える事しか出来なかった
「ぎゃああああ!!凄まじいほどのスターダストがっ!!」
痛みを誤魔化すためにとにかく変な事叫んだり動き回る
そしたら
ヒールの高いサンダルを履いていた足を挫いてしまい、すっ転んで………
そのまま頭から滑り台を滑り下った!!
「う、うわああああああああ!!?」
目が見えなくても分かる!!
今、自分はエライ事になってるし、これから物凄い馬鹿な怪我をする!!
頭から滑り落ちる身体で風を切る感覚からほんの数秒だろうか
ふいに、身体の周りの風が止み、ふわりと浮かんでいる感覚になった