10,911mに隠した怯え

2020/08/10
バージニアとライムミントの香り‖「タバコ、また上がっちゃうね」
女のハイヒールが悲しそうに音をたてるから、ぼくはやたらと慰めの言葉を催促されているような気になってしまう。右目の下の黒子が、いやらしい。結局のところぼくが彼女を思う存分満足させてあげられる事なんてできっこないのだ。浮かんだ言葉を紡いで、どうにか排出しなければならない。ぼくの仕事はいったいなんだったの。「丁度やめ時だってことさ」ぼくの声を左から右に素通りさせて、女は心底つまらなさそうに煙をばらまいた。



;prev or next
☂top page