青みがかった指のはじであなたは吐息の殺しかたを考える
「食欲が失せるおまじない」何度も食べては吐く私に彼はよく絵を描いた。絵の具をぶちまけたり、水性のペンで図形だったり、それはいつも動脈をなぞっていた。手首が多かった。
「タトゥじゃないのね」
「日常生活に支障をきたさない範囲で、と思って」
すでに私の、目の前の欲や感情にふり回される幼稚さは度を超していた。「なんならキスマークでも付けようか」と冗談が出たりもする。
ある日、彼はマニキュアを垂らしてきた。私が爪に塗っている最中だった。その目にはなんの光も宿していないみたいだった。乾くと皮膚がふさがれて呼吸ができないでいるのが、よくわかる。
「今夜は何を食べに行こうか」
彼も私も私を殺せないまま、生産性のない日々を消化していく。赤も青もまだらになった腕で。