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適当に近場のファストフード店に入り、二人で椅子に座ってまずは自己紹介をする。こいつの名前は寿陽和と言うらしい。東京から来た陽和は、なんでも大阪の学校と練習試合をするそうで、そのため金曜から大阪に来て合宿をしていたそうだ。

「実は今日、夕方まで練習はオフになったんだ。まあせっかく大阪に来てるんだしお前らも軽い観光とかしたいだろ、みたいな感じでさ。そんで練習までちょっと街へ出てみようと思って。」
「いざ出てきたら道はわからんし場所も分からんくて迷子になっとったっちゅーわけか」
「まあ、そんなとこ」

いざ話してみると陽和は明るくてノリがよくて話しやすいやつだった。同い年ということもあってか、すっかりと陽和は話し方もフランクになり、ニコニコ笑っている。最初に見た時は道に迷っていたため気弱そうに見えたが、本来は明るくて元気なやつなんだろう。俺らはすぐに意気投合して、冗談を言えるまでになった。

その後もしばらく店内で話し込んで、少しだけだが大阪の街を案内した。陽和は行く先々で目を輝かせ、おぉ…なんて感嘆の声をあげていて、普段から見慣れている場所のはずなのになんだか俺にも新鮮な景色に見えてきて笑った。

「なに笑ってんの、謙也」
「いや、なんでもあらへん」

そうは言ってもやっぱりなんだか面白くてしばらく肩を震わせていたら、陽和も変なやつ、とか言いながら笑っていた。

それから少しして、陽和の部活の練習時間が迫っていたため、俺は陽和を彼らが泊まっているという旅館まで案内した。

「今日はありがとな謙也!助かった!」
「こんくらい気にせんでええって。楽しかったしな。」
「俺も楽しかったよ、ありがとう!」

ギリギリまで旅館の前で話していたら、多分陽和の友達だろう、練習着らしきものを身に付け、テニスラケットを持ったやつが陽和を呼びに来た。早く支度しろと言われて慌てて返事をする陽和が面白い。

「なんの部活なんや思っとったけど、陽和もテニス部やったんやな」
「おう、"も"ってことは謙也も?」
「せやで、浪速のスピードスター言うたら俺のことや! いつか試合できたらええな」

そうだな!と陽和は笑った。
またいつか会おうと約束して、手を振る。陽和は支度をするため中に入っていき、俺も背を向けて歩き出した。陽和に会えたことで、今日は非常に充実した日になった。直感に従って外出してよかったと心から思ったのだ。