「俺、陽和先輩のこと好きになっちゃったかもしれないっす」
昼休み、校内はどこもいろんな人の話し声に溢れている時間。俺は中庭に陽和先輩を誘い出して、唐突に告白した。
その時の陽和先輩の顔は面白いくらいに目を丸くしていたのを覚えている。こんなこと言われるなんて微塵も考えてなかったって顔。まあ当たり前だと思う、俺たち出会って数日とかだったし。
「えっ…と、ありがとう、嬉しい。でもその、私達まだ出会ったばかりだから…、赤也くんのこと、そういう目では見れない、かな。」
なんとか俺を傷つけないようにって気をつけながら話す先輩を見て、その時の俺は可愛いなあとかしか考えてなかった。だってこんなふうに断られるだろうなって思ってたし。いやまあ、俺だってあの立海テニス部のレギュラーだし、それなりに人気あるし、もしかしたらーとか考えなかったわけじゃないけど、この人はそうじゃないだろうなって言うのもなんとなく考えてた。
だから今回の告白は付き合ってもらうためのものじゃない。陽和先輩に俺から好意を向けられてるっていう自覚を持ってもらうためだ。
「まあそうっすよね。でも俺この程度じゃ諦めないんで、本番はここからっすよ。」
「どういうこと?」
「陽和先輩鈍いっすね〜、これから俺に惚れさせるっていうこと!」
俺の言葉にまたさっきみたいに目を丸くして、ついでにほんの少し顔も赤くした先輩を見ながら、これは意外と脈アリかも?なんて考えてたのが二週間くらい前。
それから毎日のように昼休みは陽和先輩のところに行った。陽和先輩のクラスはA組だから、真田副部長に何か言われるかなと思ってたけど、特にお咎めは無しだった。廊下走ったりするのは別だったけどさ。あとはもう1人のA組の柳生先輩から伝わったのか知らないけど、最近よく仁王先輩や丸井先輩にそのことでからかわれるからそれはちょっと面倒。
でもまあ、着実に俺と陽和先輩の距離は近づいてるってわけ。普段は可愛い後輩を演出して、ふたりで話す時なんかはたまに生意気にタメ口きいてみたりして。女の人ってそういうギャップに弱いって聞いたことあるしさ。現にこの前なんか、陽和先輩顔真っ赤にしちゃって、可愛かったなあ。
でも着実に距離は近づいてんだけど、なんかもどかしいっつーか。やっぱここらでガツンと勝負に出るべきかなー、なんて思ったりして。基本的に短期決戦が好きなんだよね俺って。
部活の休憩中に陽和先輩を見かけたから少しだけ立ち話をしてた時、ふとその事を思い出した。赤也くんどうかした?なんて先輩が顔を覗き込んでくるのを視界に入れながら、勝負に出るなら今かなって、漠然と思った。
「ねえ、陽和先輩。」
「ん?なあに。」
「俺とゲーム、しません?」
「ゲーム?」
そう、ゲーム。ドキドキして甘酸っぱい、恋のゲーム。
「二週間以内にあんたを落とす」
「えっ、?」
「あんたが俺に惚れたら俺の勝ち、惚れなかったらあんたの勝ち。」
「……」
「負けた方は勝った方の言うことをひとつ聞く。どう?」
ちょっと強引かな、なんて思ったけど。
「……わかった、いいよ。」
そうやって返事した陽和先輩の顔がほんのり赤く染まってたから、まあいいかなって思う。
この勝負、結構俺有利なんじゃない?
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