強く生きろ name
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朱理が私の元へとやってきてから、すでに3年は経った。
時が経つのはこんなにも早いものだったかね、と不思議に思う。

あの子はとても頑張り屋さんだ。まだ来たばっかりの時は、この世界の人すべてが嫌いなのか、とでもいうかのように何かを睨みながら生きていた。
その根本的なものを教えてもらってからは、朱理の弱い部分を知ることができた。

朱理は、自分が弱いということをきちんと知っていた。
どうしたらいいのだろうと、これでもかというほど涙いっぱいの目を向けて、後悔の念に押されていた。

そんな彼女に私はこういったんだ。




強く生きろ、と。





それから早3年、彼女は逞しく、私の実の娘なんじゃないかというほどに、強くなった。




「お登勢さん、ただいま帰りました」

「おかえり、買ってきたかい?」

「はい」



毎年の新年が明けると、私は旦那の墓まいりへと向かう。
10数年一人で行っていたものに、つい3年前からは、朱理と一緒に行くようになった。
なんでも、朱理には花屋の友達ができたそうで、毎年彼女はその友達特製の花束を毎回買ってきてはお墓へと手向けてくれるのだ。どうせ枯れて捨てるものなのだから、そんなに豪勢にしなくてもいいとは言っているものの、これだけは譲れないと、誰に似たんだが頑固に言うのだ。


私はそんな出来事や、去年の朱理の成長、私にあった出来事を旦那へと語りかける。


最後には必ず、『今年も私と朱理をよろしくしてやってくれ』と一言告げているのだ。





「おまんじゅうも買ってきましたよ」

「そうかい」

「旦那さん、喜んでくれますかね?」

「どうだかね、死人に口はないからね〜」

「またそうやって」



二人並んで歩きながら、お墓へと向かう。私も何か一個持とうかと聞くものの、朱理は頑なに自分が持つと言って聞かない。私はそれを毎回、それじゃあ頼んだよと言って、ゆっくりと歩く。



「雪が積もってますね」

「少しだけ払ってやるかね」

「はい」



旦那の墓についた。墓には雪がいくらか積もっていて、私と朱理二人で雪を払う。少し冷たくなった手を擦り合わせて温める。
朱理がそっと、饅頭を墓の前に置いて、一緒に花も置いた。冬だってのに花なんていいんだけどね、私ゃ。朱理がどうしても、というから毎回置いているんだ。綺麗な白い花は、なんとも私たち二人には似合わなくて、少し笑いがこぼれた。


「...さて、帰るかね」


二人でしゃがみ、手を合わせていた時間は何分だったか。私は目を開けて隣にいる朱理にそう声をかければ、驚くことに墓から言葉が返ってきた。


「オーイババー、姉ちゃん。それまんじゅうか?食べていい?腹減って死にそうなんだ」


低い男の声だった。びっくりしているのか、朱理は目を見開いて固まっていた。


「こりゃ私の旦那のもんだ。旦那に聞きな」


そういったら、男は間髪入れず饅頭を食べ始めた。やっと元に戻ってきたのか、朱理は慌てながら私の名前を呼ぶ。


「お登勢さん...」

「いいんだ」



立ち上がろうとした朱理の前に手をやり制する。食べおわっただろうその男に、私はもう一度口を開いた。


「なんつってた?私の旦那」

「しらねぇ。死人が口聞くかよ」

「罰当たりなやつだねぇ」

「祟られても知りませんよ、お兄さん」


朱理と二人、小さく笑いながらその男の言葉に耳を貸す。



「死人は口きかねーし、団子も食わねぇ。だから勝手に約束してきた。

この恩は忘れねぇ。あんたのばーさん老い先短い命だろーが、この先は、あんたの代わりに娘共々俺が護ってやるってよ」



その言葉に、私と朱理は二人して、声をあげて笑ったのだ。




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