強く生きろ name 1 気づかないうちに万事屋銀ちゃんには定春という大きいワンコまで居座るようになったようだ。 神楽ちゃんが元気に散歩しているのを何度か見てるから、きっとペットとして飼うようになったのだろう。 それにしても、この世界で長年生きてはいるけど、なんでもありだな。 「おい定春!!お前家戻ってきてんじゃねーか!!散歩気分かこのやろー!!」 まだ昼の時間、お登勢さんと二人で夜の営業分の仕込みをしていた時、突如聞こえたのは坂田さんの怒鳴り声だった。 「なんだよ家賃払いに来たのかぃ」 お登勢さんはタバコをふかしながら扉をガラリと開けて、坂田さんにそう言った。 「こちとら夜の蝶だからヨォ、昼間は活動停止してるっつったろ。来るなら夜こいボケ」 と、いつもどおりの辛口な言葉でそういえば、坂田さんと隣に立っていた神楽ちゃんが二人して「綾乃ってつらじゃねーもんな」と言いながら笑い声をあげた。 その言葉に、私もお登勢さんもはたと首をかしげて、どうしてお登勢さんの本名を知っているのかと思った。 「嘘つくんじゃねぇババア!!オメーが綾乃なわけねーだろ!!百歩譲っても上に宇宙戦艦がつくよ!!」 「おいいいい!!メカ扱いか!!」 よくもまぁそんなペラペラと言葉が出てくるもんだ。 感心しながら3人の会話を聞いていれば、坂田さんが急に私の名前を大きい声で呼んだ。 「朱理ちゃんよぉ、今の話本当か?」 「本当ですよ」 私は近くにあった付近で濡れた手を拭きながら外に出て、ドアにもたれながら坂田さんに口を開いた。 「お登勢さんの本名は寺田綾乃です」 「マジかよ...」 何がそんなに嫌なのか、目を見開きながらそう呟いた坂田さんにもう一度首を傾げれば、お店の電話が突然鳴った。 私は慌ててお店の中に戻り、その電話を取ると、相手は新八君で。 『あ、朱理さんですか?』 「うん、どうかしたの、新八君?」 『あの、銀さんがいたら、おじーさんがやばいんですって伝えてもらえますか!?』 「う、うん」 何だか慌ててる新八君に私も若干焦り、坂田さんを呼んで電話の近くに寄らせる。 「新八君から電話です。おじーさんがやばいとかって...」 私がそういえば、瞬間に坂田さんがお登勢さんの手を引っ張り、神楽ちゃんが定春の上に乗っかった。 そして「アチョーーーー!!」などと叫ぶと、坂田さんの「ばーさん借りてくな!!」という言葉にあれよと言う間にお登勢さん共々3人と一匹の背中が小さくなっていった。 いったい何だったのだろうと、後に残された私はポツンと一人、その場に立ちすくむだけだった。 → |