強く生きろ name
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夜、万事屋銀ちゃんから自分の家に帰ろうとしている新八君がいたため、その背中に声をかければ、新八君はよろよろとしながらこちらを振り向き、そしていきなり目をカッと見開くと私の肩につかみかかってきた。


「え、え、どうかしたの新八君!?」

「あの!!朱理さん!!明日空いてますか!?」

「明日...?」


なんでも、明日の昼にお姉さんと一緒に花見に行くそうだ。
その花見に、神楽ちゃん、坂田さん、定春も連れて行くみたいで。それに私も行かないか、とのことだった。


「でもいいの?私行っても...」

「はい!!後、できればでいいんですか、食べ物を...何か、食べれる物を...!!」


そんなにお腹空いているのだろうか?それとも最近あまりご飯食べてない?
わからないけれど、新八君が血走った目を向けながらそう言ってくるから、わかったと何度も首を縦に振って何か食べ物を持っていくことを約束した。

その言葉を聞いて、さっきまでの新八君は何処へやら、とても晴れ晴れとした笑みを向けて元気に家に帰って行った背中を見届けて、私は急いでお店の中へと戻る。
冷蔵庫の中に入ってる食材を確認して、できるだけ今のうちに作っちゃおうと袖をまくれば、お登勢さんがなんだか笑いながらカウンターの席に座って、私の手さばきを眺めていた。



「ん、ここはもう少し醤油を入れてもいいね」

「このぐらいですか...?」

「あぁ」


なんて、時々お登勢さんからアドバイスをもらいながらできた重箱は、結構自分の中でもいい感じに出来上がって。明日が楽しみだな、なんて思いながら、お米を何合か炊いてお登勢さんの隣に敷いてある布団に入った。











「はーい。お弁当ですよー」


新八君のお姉さん、お妙さんが差し出してくれたお弁当を見てわかった。どうして昨夜、新八君があんなにも焦っていたのか。開いたお弁当に入っていたの黒い物体。彼女曰く卵焼きらしい。


「卵焼きじゃねーだろこれは焼けた卵だよ」

「卵が焼けていればそれがどんな状態だろ〜と卵焼きよ」

「違うよこれは卵焼きじゃなくてかわいそうな卵だよ」

「いいから男は黙って食えや!!」


坂田さんのぐうたらと続いた言葉は、お妙さんが卵焼きを無理やり口に突っ込むことで強制終了され、神楽ちゃんに至ってはこれを食べないと死ぬこれを食べないと死ぬ、と何度も暗示をかけながらその卵焼きを口に含んでいた。



「暗示かけてまで食わんでいいわ!!やめときなって!!僕のように目が悪くなるよ!!」


新八君が慌てて神楽ちゃんのその奇行を止めようとし、私は思わず苦笑をこぼしながら横に置いていた重箱を手にすると、突然知らない男性が私の隣に座って豪快に笑いだした。


「がははは!!全くしょーがない奴らだな。どれ、俺が食べてやるからこのタッパーに入れておきなさい」


タッパーを片手にそう笑いながら言う男の人を皆でじーっと見ること数秒、思わず叫んだ私の「え、誰!?」とお妙さんの暴力によりその場は終わった。


「朱理ちゃん、初めて?あいつは妙のストーカー」

「え、ストーカー!?警察に相談した方が...」


お妙さん美人さんだからな...ストーカーの一人や二人いるだろうけれど。
あんなにも堂々としたストーカーがいるとは..。


「それが、あの人が警察らしいんですよ」

「え...」

「世も末だな」


新八君の言葉に思わず引きつった笑みを浮かべ、坂田さんのその言葉にうんうんと頷いていると、後ろの方からこれまた別の低い男の人の声が聞こえた。
後ろを振り向けば、黒い着流しを着たタバコをくわえているイケメンの男性に、なんだか怖そうな顔の男性が十数人いて。


「おうおうむさい連中がゾロゾロと。何の用ですか?キノコ狩りですか?」

「そこをどけ。そこは毎年真選組が花見をする際に使う特別席だ」

「どーゆー言いがかりだ。こんなもんどこでも同じだろーが。チンピラ警察24時かてめーら!!」


坂田さんと何やら言い合いをしたその人たちを私は初めて見たため、思わず隣に座る新八君に小さい声で聞いてみた。



「ねぇねぇ、どんな関係なの?」

「あ、朱理さんは初めてですか?真選組の方達です。何だか最近よく出くわすもので...」

「ふーん...?」


よくわからないけれど、彼らが噂の真選組の方達らしい。よく新聞に載ってる、街を壊す人たちか...と遠い目をしながら記憶と記憶を一致させれば、先ほどお妙さんのストーカーをしているという男性が立ち上がり「お妙さんだけ残して去ってもらおうか」と言い出し、その言葉に歯向かうかのように坂田さんたちも立ち上がって挑発をする。


「俺たちをどかしてーならブルドーザーでも持ってこいよ」

「ハーゲンダッツ1ダース持ってこいよ」

「フライドチキンの皮持ってこいよ」

「フシューーー!!」

「案外お前ら簡単に動くな」


と、なんだかケンカまがいなことになりそうだったため、私は危険を察知し重箱を手にして敷いてあるゴザから立ち上がった。


「まちなセェ!!堅気の皆さんがまったりこいてる場でチャンバラたぁ頂けねーや。それにほら、いかにも普通ないでたちのお姉さんまでいるじゃねーですかぃ」


といったのは私より幾つかは年下であろう、真選組側の男性。甘いマスクをしているけれど、江戸っ子のような訛りで少しギャップが感じられた。
思わずその彼の言葉に、真選組のみなさんや坂田さんたちまでもこっちを振り向く。ていうか、普通ないでたちって...少し言葉に棘を感じるよ、お姉さんは...。


「...初めて見る顔だな...」

「あ、初めまして、万事屋銀ちゃんの下にあるスナックお登勢で働いている朱理と言います」


一番最初に口を開いたのは、タバコを吸っている男性だった。
思わず私が自己紹介をして頭を下げれば、坂田さんが私の肩に手を置いて、別に自己紹介なんざしなくていいと言った。


「でも...」

「いいか、朱理。あいつが多串君だ」

「誰が多串君だ」


結局本名はよくわからなかったけど、多串君ではないことだけはわかった。
とまぁ、その場でまたさっきの男の子が口を開き、この陣地を争奪するために叩いてかぶってじゃんけんぽんをすることになったそうだ。
なんでそんなことになってしまったのかわからないが、私は一旦避難しようと真選組の皆さんが立っている近くへと行き、お妙さん、坂田さん、神楽ちゃんたちの戦いぶりを見ることにした。


とりあえず言いたいことは、類は友を呼ぶって本当なんだな、ということ。







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