強く生きろ name
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少し出てくるといったお登勢さんが戻ってきたのは先刻、夕方の5時ぐらいのことだった。手には買い物袋にお財布、そして後ろにキャサリンさんを連れて。



「キャサリンさん、はい、どうぞ」

「アリガトウ...」


男性の財布を盗もうとしていたキャサリンさんを殴って、ここに連れてきたのだそう。キャサリンさんのほっぺはとても真っ赤に腫れていてそれはそれはひどく殴ったのだろうなと思った。


「...ドウシテ...」

「はい?」


キャサリンさんが冷えたタオルを頬に当ててうつむきながら声を発した。
私はシンクにある食器を洗いながらキャサリンさんの言葉に耳を傾ける。お登勢さんはタバコをふかしながらキャサリンさんを見つめていた。


「ドウシテ、コンナワタシニ、カマッテクレルンデスカ」

その言葉に、私とお登勢さんは静かに顔を合わせる。
ふーと吹いたお登勢さんのタバコの煙が、ゆっくりと天井に向かってそして消えた。


「馬鹿なことを聞くんじゃないよ」

タバコを灰皿に押し付けて、あとは任せたよと言ってお登勢さんは部屋の奥へと歩いて行った。
私はそんなお登勢さんの背中を小さく笑いながら見送って、涙をたくさんめにためたキャサリンさんの前に回り込む。


「キャサリンさん、泣かないでください」

「...デモ...」


一つ瞬きをすれば、その目から涙が一つ一つまた一つと零れ落ちていく。私はそっと、キャサリンさんの手に自分の手を重ねた。
あぁ、これ、デジャヴだ。一度こういうことあったんじゃなかったっけ。自分の行ったことに後悔して、泣くしかなかった人がいたはずだ。


「私も、お登勢さんも、あなたが、キャサリンさんが好きなんですよ」


どうしてこんなことしたんだろうって。後悔しても仕切れない人がいたはずだ。


「ただ、それだけです。あなたと一緒にいたいなって、そう思ってるんです」

「デモ、ワタシ、一度コノオ店カラオ金ヲウバッタ...!!」

「でも、キャサリンさんは変わろうとしてる」


本来ならやり直しのきかない人生から逃げた私とは違う。キャサリンさんはもう一度変わろうとしている。


「...それだけで、十分じゃないですか?変わることに苦しんでるキャサリンさんは、誰よりも、かっこいいんですよ」


私がそういった後、キャサリンさんは大きい声をあげて泣き叫んだ。
私はそっと、彼女の背中をさすって、ただずっと、抱きしめてあげたんだ。






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