強く生きろ name
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坂田さんたちが戻ってきたかと思えば、万事屋の家のところに宇宙船が何やら突っ込んできて。私たちスナックお登勢もそこそこに被害を被っていた。坂田さんは未だに記憶を戻していないらしい。しかも、そのまま解散なんて言ってしまったらしい。


「でも、ちゃんと銀ちゃん戻してくるから!!だから安心してヨお願いネ!!」

「お願いします、朱理さんからもお登勢さんに言っておいてくれませんか?」


こんな崩れてしまった二階は即刻壊すべきなのだけど、神楽ちゃんと新八くんが必死になってそういうもんだから、私もどうにか取り壊しを先延ばしにしてもらっている。それでも、限界というものはあって。なんとか二人の帰る場所を取り戻してあげたくて、消えてしまった坂田さんの居場所を見つけるべく、お店を開いていない昼間は街を出歩くことにしていた。


「薫さん、見てませんか?銀髪の人なんですけど」

「そうね〜...」


ここにきて初めてできた友達である薫さんのお花屋さんへと出向く。薫さんは以前御庭番衆を勤めていたらしくて、コネもそんなにない私にとっては最後の頼みだった。
薫さんは綺麗な長い指を花の茎に沿って、一本ずつ丁寧に梱包しながら思考を巡らせてくれた。


「確か、そこの工場で銀髪頭の男が住み込みで働き始めた、とかって聞いたわねん」

「え!?本当ですか!?」

「えぇ。住所は今書くわねん」


薫さんはできあがあった花束を私に一つ渡し、そこらへんにあった紙切れに住所を書き連ねていく。
なんと、こんなにもあっさりと情報が出てくるだなんて。忍びの顔というのはとことん広いみたいだ。


「ほら、これよ」

「ありがとうございます、薫さん!!いつかきちんとお礼させてください」

「いいのよん。いつもご贔屓にしてもらってるからねん。そのかわり、今度一緒にお茶でもしましょう」


薫さんは綺麗に片目をつむってウインクを飛ばしながらそういった。私もいつか、こんな綺麗な女性になりたいものだ。
もらった花束をしっかりと握りしめて、私は何度も頭を下げて足早にスナックお登勢へと戻った。


「お登勢さん、きいてください!!」


お店のカウンター席で一つタバコをふかしながら、休憩していたお登勢さんがちらりと玄関口を見る。


「なんだい、騒がしいね」

「坂田さんの居場所、わかりましたよ!!」


そういえば、驚いたように目を見開くお登勢さん。そしてそのあとにタバコの煙をふぅとこぼすと、呆れたように笑いながら、家賃もたんまりと溜まっているんだ、とこぼすと、私の手にあった住所の書かれている紙を持って外へと出て行った。

きっと、上に行くのだろう。神楽ちゃんは毎日のように上にきては、坂田さんが帰ってくるのを待っていたから。
これできっと、大丈夫。坂田さんは戻ってきてくれるだろう。私はカウンターへと入り、開店の準備をした。





後日、結局記憶を戻した坂田さんが戻ってきた。私が坂田さんのいる場所を特定したことをお登勢さんから聞いたのだろう、ありがとよと言いながら私の髪の毛をぐしゃぐしゃにしていった。その後ろで、新八くんと神楽ちゃんも嬉しそうな顔をしていて(神楽ちゃんには思いっきりタックルされた)。私はただ一言、お帰りなさい、とただそれだけをいった。


「たでーま」


坂田さんはそう言って、いつものにヘラッとした笑みを浮かべていた。



やっぱり、三人一緒でこそ万事屋だ。そうおもった瞬間に、



神楽ちゃんは私の前からいなくなったのだ。






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