強く生きろ name
3


夜になった。傷を何個かつけて帰ってきた新八くんと坂田さんに絆創膏や包帯をつけて。長谷川さんと坂田さんの前にお酒を出した。

お登勢さんもカウンターに入って、三人と話してら間に私は外に出る。空いてる瓶や缶を片付けるために裏路地に入って整理していると、後ろの方でガサガサと音がした。

慌てて振り向けば、ダンボールの陰で隠れている人影が。


「…??神楽ちゃん…!?」


なんだろうと思って覗き込めば、そこにいたのは神楽ちゃんだった。


「しっ!朱理静かにアル!」

「え?え?ごめん、え?」


親元にやっぱり返したと言っていた坂田さんをふと思い出す。神楽ちゃんは帰ったのだと思っていたけど違ったようで、小さい声で私の耳元に口を寄せて話し出す神楽ちゃん。


「結局帰らない事にしたネ。あの二人に合わせられるのは私だけヨ」


そう、ニコリと少女らしい笑顔を浮かべた神楽ちゃん。今までの数々の出来事を思い出して、確かにその通りだなと思った私は、神楽ちゃんの頭に手を乗せてヨシヨシと撫でる。


「ところでここで何してたの?」


裏路地になんていないでお店に入ってくればいいのにと。二人で誰にも見られないようにコソコソとしゃがみながら話す。神楽ちゃんは、さっきまでの笑顔とは打って変わって性格の悪そうなニヤリとした笑みを顔に浮かべた。


「私がいなくなって悲しさに打ちひしがれるあいつらを見てみたいネ。だから裏からこっそり覗いてるアル。でもダンボールしかなくて、中々見えないネ」


だから、ゴソゴソとダンボールを動かしたりしていたのかと。私は瓶や缶を捨てるために端に置いてあるゴミ箱を取り出して神楽ちゃんの前に差し出す。


「これなら座れるんじゃない?」
「!!ありがとう、朱理!!」


あぁ、また太陽みたいなこんな笑顔を見れるんだなと思って。一瞬熱いものがこみ上げてきたけれどなんとか我慢して、私も神楽ちゃんの隣で少しだけ背伸びをして、一緒になって中を覗いた。




散々股間の話をしてはよくわからない盛り上げ方をしていた坂田さん達を私は苦笑しながら眺める。この人いつもこうだな。

神楽ちゃんが窓の格子をきつく握りしめると、お店の中にお妙さんが入ってきた。

チャイナ服をきてるお妙さんは、やっぱり美人だから余計美しく見えて、ほぉ〜と感嘆のため息をついていれば、お妙さんは、それは高いあの鬼嫁を取り出して酒盛りを始めた。いいなーと唾を飲み込んでみる。隣の神楽ちゃんは滅多にしないツッコミを炸裂していた。


「とにもかくにもさぁ、アンタらこれからどーするつもりなのさ。野郎二人で万事屋やってくつもりなのかぃ?」

「あん?別に何人だろーとやれねーことはねーだろ。元は俺一人でやってたんだしよぉ。それに朱理ちゃんだっているじゃねーか、昔は朱理ちゃんにも手伝ってもらってたんだし、変わんねーよ」

「あんた達の適当な仕事にうちの娘を使うんじゃないよ。そうじゃなくて、前に万事屋に入りたいって、奴がウチに来て、私を経営者と間違ったか知らんが履歴書と写真おいてったんだよ」


そんな話は初めて聞いたな、はて?と頭を傾げていれば、天井から謎の美女が現れた。


「さっちゃん!?」

「知り合いなの?」

「銀ちゃんのストーカーネ!」

「坂田さんのストーカー…!?」


それだけでもう厄介な匂いがプンプンだ。さっちゃんと呼ばれた美人さんとお妙さんは、神楽ちゃんの後釜を狙うべくしてバトルを始めた(キャサリンさんも、なぜかその中に入ってる)。そして、顔、スタイル、キャラ、と親父の独断とも呼べるようなセクハラまがいなことをいっていろんな意味でお妙さん達を怒らせた坂田さんと新八くんは殴られて、お店の外へ飛び出し、渦中の二人は喧嘩腰のまま夜の歌舞伎町を歩いていったのだ。

やれやれ、と。本当にこの二人には神楽ちゃんがいないとダメなようだ。私は神楽ちゃんの肩をトントンと叩いて、裏路地にある扉を指差す。それに気づいた神楽ちゃんが、ため息を吐きながら、それでも嬉しそうな笑みを浮かべて、私と一緒にその扉へと向かっていった。


「なんだいアンタら情けない。帰れっていっておいてもう寂しくなったのかィ」


お登勢さんがタバコをふかしながらそう言う。私はカウンター席に座ってる神楽ちゃんの前にご飯を置いて、ニコニコと笑った。


「これだから男ってのは勝手でいやなんだ。ねぇ、なんか言っておやりよ」


お登勢さんがそう言ってこっちを見る。それに合わせてお店の中をみた坂田さんと新八くんは、驚いた顔を見せていた。


「ボンキュッボンでなくて悪かったアルな」

「おっ…!!!」

「あーあーもう言うな何も言うな。お前らにあわせられるのなんて、私だけネ。ヒロインは私アル」


そう言った神楽ちゃんが可愛くて、私はくすくすと声に出して笑えば、二人は顔を見合わせて、そして恥ずかしそうに中へと入って来た。


「飲み直しましょ、坂田さん?」


カウンターの中にある日本酒を取り出して見せれば、坂田さんは笑いながらコップを差し出す。


「朱理ちゃんは知ってたってか?」

「ずっと裏で見てました、神楽ちゃんと一緒に。ね?」

「そうネ。朱理の事をイヤラシイ目で見始めたら次こそヒロインやめてやるネ」

「だからてめーはマスコットな」

「ほんとアンタら口が減らないね〜」

「あはは、これでこそ、万事屋ですよね」


新八くんにはウーロン茶を出して、お登勢さんにも日本酒を注いで、自分のコップにも日本酒を入れて。そして皆してそのコップを、神楽ちゃんのご飯の隣に置いてある水の入ったコップに、カチンと静かに音をならせて乾杯する。


「おかえり、神楽ちゃん」

「うるさい小娘でもいなけりゃいないで静かなもんだからね」

「また何かあったら、下に降りておいでね、神楽ちゃん」

「……また面倒見てやるよ、家出娘」


各々そう、一言言えば。神楽ちゃんは丸い目をさらに見開いて、そして顔を少しうつむかせて、うるさいネ。と、一言いった。






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