強く生きろ name
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当日、以前お登勢さんに買ってもらった花柄の着物を身に付けて、坂田さんに成人祝いでもらったかんざしをつけて私は朝早くお店を出た。まだキャサリンさんは寝起きの顔だったけれど、二人とも笑顔で私を見送ってくれた。
遊園地の前に10時に集合、そういう手はずだったけれど、薫さんはもう既に来ていた。


「ごめんなさい、遅くなってしまって...!!」
「大丈夫よん」


10分前にはついてるのに、そんな私より早くきてる薫さんに関心をする。今日の薫さんの格好は、いつもの格好よりも大人っぽくて、素敵だった。


「あら、簪じゃない。可愛いわね」


そんな薫さんに褒められたことが嬉しくて、私は笑顔で簪をシャランと揺らして見せた。






「次なに乗りますか?」
「やっぱりジェットコースターかしら?まだ乗ってないしね」
「そうですね..!!私飲み物買ってくるので、先に並んでてください」
「わかったわ」


遊園地はとても楽しかった。土曜日だからか人の多さはすごいけれど、それでも私と薫さんは結構上手に乗れているんじゃないだろうか。
昼過ぎになって、ついにジェットコースターを乗ろうと薫さんが提案した。私はたくさん並んでいる列の後ろを指差して、先に薫さんに並んでてもらい、自分は薫さんと私の分の飲み物と何か軽食を買おうと決めた。

どのお店もたくさん人が並んでいて、買うのに手間取ったけれど、何とか二人分の飲み物と食べ物を買い、私は列に行こうと歩きだす。その時、目の前を歩いていた男の人とぶつかった。とっさにこぼれそうになるその飲み物に手を伸ばして支えてくれた人にお礼を言う。


「すみません...!!」
「いや...?」


お礼を言って顔を上げれば、そこにいたのは何度か見かけたことのある真選組の隊士の人だった。話したことはないけれど、よく後ろにいた男の子。確か名前は...。


「沖田さん...でしたっけ?」


そう聞けば、その人は一瞬目を開けたかと思うと、黙ってコクリと首を縦に振った。
当たっていたようで良かった。私は笑顔で、もう一度頭を下げてお礼を言う。


「私の不注意でぶつかってしまって...お召し物、汚れてはいませんか...?」


黒い袴の上には真っ白の着物だったから、目を凝らして見つめる。胸元も腰元も。足部分も汚れは無いようだ。良かった、と安心して笑顔を浮かべて顔をもう一度上げる。


「俺は、大丈夫でさァ...貴方の方こそ、何も零してはいませんか...?」


甘いマスクのわりには特徴的な江戸っ子が彼のギャップだなと感じたことがあった。沖田さんはとても心配そうな顔を浮かべて、背の低い私と目があうように腰を少しかがめると、私をじっと見つめた。


「はい。私は大丈夫です、沖田さんが支えてくださったおかげで、飲み物もこぼれてませんし」


多分年下だろうけれど、幕府関係の方にはきちんとした言葉を使え、とはお登勢さんの教えだから。スナックに働いてる身としてはそこはきちんとしなければ。私は失礼のないように敬語でそういえば、沖田さんは少し目をキョロキョロとした後、意を決したように口を開いた。


「あ、あの...」
「はい?」
「おい総悟ーー!!」


と、沖田さんが何か言おうとしたその時、彼の後ろの方でこれまた見たことのある真選組の局長の方がこっちに向かって手を振っていた。きっと沖田さんのことを待っているのだろう。沖田さんは小さい音でちっと舌打ちした後、目に見えた形で慌てると、ガックリと頭を下げた。


「...すみません、呼んでるので戻りやす」
「はい」


笑顔でそう答えて、もう一度頭を下げて私はジェットコースターに並んでいる人の列に向かって駆け足で向かう。
薫さんを待たせるわけにはいかないからね。





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