強く生きろ name
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知らない。私は何も知らない子供だ。





「どれ、こんな感じかね」


濡れてしまった制服はこのお登勢という方が洗濯をしてくれて。新しい服、まぁいわゆる着物を貸してくれた。


「昔私が着てた物だけど、似合ってるじゃないか」


ニヒルに笑いながら煙を吐く女性は、私に何も聞かなかった。
ただ呆然と立ち尽くす私の顔をちらりと見たまま、手に持ったタバコの煙が天井に登っていく。

「...あの」

「なんだい」

「...雨がやむまで、いさせてもらってもいいですか」


じっ、と。それこそ何かを見定めるかの様につま先から頭のてっぺんまですべてを見られた気がする。


「雨がやめば、行く当てはあるのかい」


その答えに、私はイエスと答える術を知らない。
ただ押し黙る私に、彼女はひとつ、はぁとため息をついた。



「仕事、手伝いな」



そしてただその一言を言って、彼女はカウンターの奥の方へと消えた。
私は、立ち往生するわけにも行かず。意を決して彼女の後ろを歩いた。


もう、私にはこうするしかないのだ。


ここがどこだかも分からないまま、知らない場所を歩くようなそんな冒険心は私にはないし、かといって誰かの家に住まわせてもらう事もできないなら。


自分は使える人間だぞという事を今、彼女に知らしめておかないといけない。



私は頬を強く叩き、そして元気よくいらっしゃいませーと大きい声で言った。





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