強く生きろ name
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妙な子を拾った。

雨が降る夏の夕方。あの子は一人妙な服を着ながら一人足を抱えて路地に座っていた。話しかければ、その目はまるで、救ってくれと言っているかのような目で。

家には何も無い。盗まれる様な物も、何一つ。

この先一人死んで行く身でもあるわけだ。一人厄介な物を抱えたって罰はないだろう。わたしはその子を、迎え入れた。

「朱理ちゃーんビールちょうだーい」
「はーい」

あれから一ヶ月は経っただろうか。

中沢朱理と名乗ったあの子は、今やスナックお登勢の看板娘と言える程になった。
まだ未成年なわけだから、酒は飲めない。それでも酒を注ぐ事ぐらいはできるだろうとさせていれば、あれよあれよと言う間に客は若い女子にうつつを抜かし。

まぁ、これで客が増えるのであればいいってものだ。

「朱理、そっちはもういいからこっち手伝ってくれるかい」
「はい」

朱理にそう声をかければ、朱理は空いている瓶を片手にカウンターの奥へと消えた。

1ヶ月寝食をともにした。
分かっている事は、まだ齢16程の娘で、嫌いな食べ物はなく、手伝いをしっかりし、よく笑う良い娘だという事。

そしてたまに、深夜にうなされている。

細かい事を気にする必要はない。
何かがあったのだろう。そんな厄介な人間は、このかぶき町になんてごまんといる。

それでも、思春期真っ只中のこの子の事を心配する事は、いけない事なのだろうか。

「朱理、今日もありがとうよ」
「いえいえ。お登勢さんも、お疲れさまです」

そう笑顔でいう朱理。
私はただ何も聞かずに、彼女の頭を優しく撫でてやるのだ。




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