強く生きろ name
01


その日見た夢はいつもと少し違った。


自分が小さい頃に、母親が亡くなって、新しい母親がやってきた時の夢だった。

あの人は優しかった母親とは違って毎日怒ってばかりの人だった。
少し部屋をおもちゃだらけにすれば片付けろ、少しでも寝坊をすれば早く起きろ。そんな風に怒られてばかりで、私も気づいたらあの人にはずっと反抗して過ごしていた気がする。


『どうしてあの子は私に心を開いてくれないのかしら...』
『まぁまぁ、まだあいつも子供なんだ、いつかわかってくれる時が来るさ』


リビングでお父さんと母親がそう話しているのをいつの日か見た。
今の今まで忘れていたけれど、確かあの時、あの人は涙を流していたはずだ。


すると、いきなり視点は下から上へと上がっていく。夢の中の私が成長したようだ。
受験生のくせに、テストの点数が悪くて怒られたあの日、部屋に逃げればドアの外で母親の声が聞こえた。


『朱理、ご飯は?食べないの?』


その声を無視して、私はずっとベッドに潜っていたんだっけ。

毛布にくるまっている過去の私を、眺める。
ドアの向こう側ではコトリと何かをおくような小さな音が聞こえて、気になった私はなんとなくドアの方に近づいてみた。
今の私の体では、どんな物体でもすり抜けることができるみたいで。

ドアの向こう側へと体を動かし、部屋を出た。

そこにはあの人が、母親が、おにぎりを何個か置いたお皿を床に置いていて。

もう一度手を握りしめてドアを鳴らそうとして、そして何かを諦めたように小さく息を吐くと、階段を降りて行った。

私はなぜか足が震えて、その場にうずくまってしまった。

どんどん押し寄せてくる後悔という念。
私はもしかしたら、とんだ勘違いをずっとしていたのではないか...?






「...!!!」




そこで私は目を覚ました。

チュンチュンと鳴いている小鳥の声に、うっすらと窓の隙間から入ってくる日差し。

私は、この世界にどうしてきてしまったのだろう。
どうして私はまだ生きているのだろう。



同じ部屋で寝ているお登勢さんの顔を見る。いつもいつもうなされているらしい私の隣で、お登勢さんは毎日一緒に寝てくれる。

どうしてこの人はこんなにも優しいのだろう。
いや、お登勢さんだけじゃない、この街にいる人は皆、とても優しい。


それは私がまだまだ子供だからなのだろうか...。





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