強く生きろ name
02


その日の夜、店に来たのは常連さんだった。
彼に日本酒のお酌をしながら、私はお登勢さんの隣に立ち二人の話を聞く。

「俺ねー再婚するんだよ」

「よかったじゃないか。貰い手が見つかって」

「でもさー相手に子供がいるんだよねー...俺のこと、父親だと思ってくれるのかねー...」


お客さんは顔を真っ赤にしながら、ゆらりゆらりと体を揺らしながらそう話す。


「その子供はいくつなんだい?」

「確か...10歳になるんだったかな」


私も、10歳になる時に父親が再婚したんだった。
いきなり現れた、母親になるという女の人。10歳ながらに、どうすればいいのか全く分からなくて。だってその時の私は、私の母親はただ一人だけだと思っていたから。


「中々心を開いてくれないんだよー...最初から優しく行くと舐められるんじゃないかと思ってね...ほら、10歳って思春期だろ?今まで子供いなかったし、きちんと接していけるのか不安でさー」


お登勢さんとそう話すお客さんを見つめる。
二人は意気揚々と話でいるけど、私はどんどん自分自身に罪悪感が現れてきた。
そのあと、お客さんはべろんべろんに酔いながら、なんとかお店を出て行った。


「それじゃあ今日も店じまいするかね...朱理、のれん下げてくれるかい」

「あ、はい」



慌てて店の外に出て、スナックお登勢と書かれたのれんを店の中に入れる。
濡れた布巾を持ってテーブルを拭いていき、それが終わればお皿を洗っているお登勢さんの隣に立ちお皿を拭いていった。

お店の中に広がるテレビのニュースの音声。
あとはお皿が重ね合うたびになるカチャカチャとした音。


「...あの、お登勢さん」

「なんだい?」


お登勢さんはちらりとこちらを横目で見て、また手元にあるお皿に視線を戻した。


「私、ずっとお登勢さんに黙っていたことがあるんです」


私がそういえば、お登勢さんは流していた水をキュッと止めると、濡れた手を付近で拭き、私の方に体を向けた。


「そっちに移ろうか」



お登勢さんがカウンターの方に視線をちらりと移した。
私は意を決して、こくりと首を縦にふる。

ついに、話す時がやってきた。






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