10

一年最後の期末試験が終わった。1年間とりあえず自分なりに勉強はした。どれだけの力が試されるかはわからないけれど、なんとか発揮はできたように思う。


「どう?いけた?」
「まぁまぁね。ヒヨリは?」
「そこそこ、って感じかな」
「とりあえず試験も終わった事だし、お茶会でもしましょうよ」
「そうね。この前美味しいヌガーもらったのよ」
「丁度いいわ!私も紅茶葉もらったの!」
「私も家から、日本のお菓子もらったよ」
「食べてみたかったのよ、日本のお菓子!ワガシ、って言うんでしょ?」
「早く戻りましょう!」


試験も終わり、あとは夏休み休暇まであと数日って感じだから、皆思い思いに浮かれてる。いつもしっかり者のアンジーやアリシアも例外ではなくて。私は思わず笑いながら、三人と教室を出た。すると、アンジーの肩に腕を回しながらそれを阻止する人物が。


「なぁに?フレッド」
「すごく楽しそうな話をしてるね、お嬢さん方」
「お茶会なら是非俺たちも!」
「お菓子持ち寄って解放感味わおうぜー」
「いいけどどこで食べるのよ?貴方達女子寮には入れないじゃない」


アリシアが眉をひそめながらそう聞けば、ジョージはそれは可笑しそうに笑顔を広げて、フレッドを顔を見合わせる。


「男子は女子寮に入れない」
「だけど女子は男子寮に?」
「「入れるのさ!」」

そう言った瞬間、タイリーが呆れたようにため息をつき、リーは面白そうにタイリーの肩をバシバシと叩いていた。



「テストの出来はどうだ?」
「まぁまぁかしら」
「俺は魔法薬学心配だな」
「私は魔法史」


皆でお菓子を床の中心に置いて、紅茶を飲んだりお菓子を食べる。私の持ってきた饅頭は皆に好評なようで、もう少しでなくなりそうになっていた。私は正座をしながら皆の会話に耳を傾けた。


「タイリーは?」

アンジーが紅茶を飲みながらそう聞けば、タイリーは私の隣で肩を竦めながら「普通だ」と一言いった。


「これでもし一位だったらその普通って言葉直せよタイリー」
「どう直せと言うんだ」
「普通って言葉をまず調べるところからだな」
「おいおい、試験に必要な事以外は俺たちには必要ないだろ?」


そう笑いながらいうフレッド達に皆で笑って。そして不意に話は夏休み休暇の事になった。皆は旅行に行ったりするらしい。

「ヒヨリは?」
「え、私?」


アンジーはフランスへ旅行。アリシアは海に行くそうだ。その話を笑いながら聞いてれば、アリシアに私はどうするのかと聞かれた。
どうするも何も。私の家は毎年夏に純血の家の集まりがあって。きっとそこにお呼ばれするのだろうと思っていた。


「多分…純血の家のお食事会とかそんなやつかなー…タイリーも私についてくるから、それだと思う」
「貴族ってのは大変だな〜…」

私がそう言えば、リーが感心したようにそう言って他の人も皆同意しながら首を縦に振った。





夏休み休暇に入る。ホグワーツ特急に乗る前に、張り出された期末試験の結果を見れば、一年生の一位にはタイリアナ・シェバンの名前があって。その下の二位のところには、私の名前が書いてあった。


「普通って言葉をお前はわかったほうがいいタイリー!」
「お前もな、オジョー!」


なんてフレッド達が怒りながらそう言って、私達はホームで駄弁っていた。


「でもすごいわ、私たちの中に一位と二位がいるのよ?」
「来年からの試験は沢山助けてもらうな」
「ある程度は一人の力で頑張れ」
「「助け合いって大事だろ、タイリー!」」

アンジーとアリシアはおめでとうと笑顔で言いながら、リー達は助けてもらう気満々の笑顔を見せながら。そんな多種多様な反応が面白くて、皆の会話を聞きながら私は周りに目をやる。親と再会して抱きしめ合う人達。きっとアンジー達の親もいるだろう。そして、私の家の使用人もいるはずだ。


「あ…」


見つけた使用人の顔に、私は隣にいるタイリーの腕を引っ張る。タイリーはそれに気づいて顔を上げ、使用人の顔を見つけて身を引き締めた。


「それじゃあ私たち、もうそろ行くね」


不意にそう切り出した私に驚いたのか、アンジー達は眉を上げて、私の見ている方へと振り向いた。
着物を着た使用人が三名私のところへとやってくる。友達と話しているというのに…いや、まぁもういいんだけれど。


「お帰りなさいまし、お嬢様。さぞお疲れでしょう」
「荷物を」

周りにいる友達はガン無視して、三人は私に深く頭を下げながら、一人の使用人がトランクを持つ。私は一つ息をついて、アンジー達の顔を見る。


「それじゃあ、また夏休み明けにね」
「五人も、気をつけて」


戸惑っている五人の顔が見える。あまり見られても嬉しいものではないから、私はその視線から逃げるように視線を外した。


「それでは行きましょうお嬢様」


頭を下げたまま差し出される薄紫色の着物。ふぅ、と。もう一度深く息を吐き、次期当主としての顔を出して引き締める。その着物を受け取って腕にかけて、使用人の頭を見る。


「えぇ、行きましょう」


使用人を引き連れて。タイリーを斜め後ろに付かせて。

私は陸奥村家次期当主として、また顔を作っていくのだ。



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