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途端に戻ってくるんだなと思った。他の選手であるフラーとクラムは結構前に先生達によって連れ戻されてきたのだけど、ハリーとセドリックは遅くて心配だった。いつかのハーマイオニーのように式神でもハリーかセドリックの背中につけておけばよかったと思っていた時。
本当に急に、二人が戻ってきた。急な出来事すぎて頭がついて行かなかったが、周りの生徒は皆歓声をあげながら二人を迎えていて。私とタイリーは顔を見合わせて、二人の所に向かおうとしていた時、どうやら二人の様子がおかしいことに気づいた。憔悴しきってるハリーにセドリックが見える。
ダンブルドア先生が慌ててハリーの所へ向かったのを見習い、私とタイリーも走って向かった。
「セド...!!」
「あぁ、タイリー...」
傷だらけのハリーとは違い、セドリックは無傷の様だ。
それでも肩で息をしながら、四つん這いの状態でタイリーを見上げてる彼の表情はどこを取っても「優勝杯を手にした」喜びは見られなかった。
「ハリー...!?」
「ダンブルドア先生...!!先生...!!」
狂った様にダンブルドア先生の名前を叫ぶハリーに、ダンブルドア先生が駆け寄り彼の肩に手を置く。ハリーは血を流しながらダンブルドア先生の服にしがみつくように、手に強く力をこめた。
「ヴォルデモートが...!!ヴォルデモートが戻ってきたんです...!!セドリックが死の呪文を浴びせられて...!!」
その言葉にはっとしてセドリックを見た。彼は生きているのに、死の呪文を浴びた?
未だに叫び続けているハリーを観客に見せないようにか、ムーディ先生がハリーの肩に腕を回して立ち上がらせて、学校の方に消えていった。それを見送り、私はセドリックの肩に手を置く。
ハリーの叫び声が聞こえたのか、セドリックの父親が「セドリック!!」と自分の息子の名前を叫びながら駆け寄ってきた。
「死の呪文を浴びたというのは、本当かのう...?」
「僕も...よくわかってはいないんですが...これが...」
ダンブルドア先生が、セドリックの前に跪き彼の目に目を合わせて聞く。
セドリックは混乱している様子でゆっくりと手を上げた。その手の中には、ボロボロとなった革紐が。
「...タイリー、すまない。ブレスレットが...」
「...大丈夫だ。君を守ってくれたようで安心したよ」
タイリーがあげたブレスレット。守護魔法のかかったそれが、彼の不幸の身代わりとなってくれたのだろう。
ボロボロとなったその"元"ブレスレットを受け取り、タイリーはセドリックの肩に腕を回してきつく抱きしめた。
「セドリック...!!」
「父さん...!!」
セドリックの元に着いた彼の父親が、セドリックの名前を叫ぶ。タイリーがゆっくりと彼から離れると、セドリックの父親が彼を優しく抱きしめた。
もしも守護魔法をかけていなかったら。それを考えると、ぞっとした。ハリーは大丈夫だろうか。彼にかけた守護魔法も、きちんとハリーを守ってくれていたのだろうか。
「ダンブルドア先生...優勝杯がすり替えられてました」
冷静を取り戻したのか、セドリックが父親から離れて大臣と話しているダンブルドア先生にそう話しかけた。
「僕とハリーは一緒に優勝杯をつかんだ。その瞬間...墓地に飛ばされました」
こっちを遠巻きに見てる生徒達の中に、心配そうに見ているフレッド達がいた。
「...優勝杯が...?」
もう一度、聞き直すかのように、セドリックの言葉を再度言ったダンブルドア先生は、そばにいたスネイプ先生に話しかけるとどうやってそんな速さを出しているのかというぐらいのスピードで会場を出て行った。
「Ms.陸奥村、Mr.シェバン」
ダンブルドア先生を追いかけようとローブを一瞬翻そうとしたスネイプ先生ががこっちに近づき、私とタイリーの名前を呼ぶ。
「Mr.ディゴリーを医務室に」
それを告げると、スネイプ先生も走ってダンブルドア先生を追いかけて行った。
展開が速すぎて着いていけないのが今の率直な感想だが、先生自ら頼まれてしまえば従うしかない。まぁ頼まれるまでもなく、私とタイリーは当たり前のようにセドリックの肩に腕を回して医務室に駆け込んでいたと思うけど。
一体なにがあったのか、セドリックによって詳しく教えてもらった夜を終えて、グリフィンドール寮ではハリーの優勝を祝うムードにもなれず各々彼に一言ずつ祝福の言葉を手向けていた。ハッフルパフ寮ではどうなのだろう。きっとグリフィンドールと同じだろう。
「ヒヨリ...」
談話室でタイリーとソファーに座っていた時、ハリーがこっちに向かって歩いてきた。小さい声でそう私の名前を呼ぶハリーに、何だろうかと首をかしげれば、彼はバツの悪そうな顔を浮かべていた。
「...実は、君からもらったブレスレットとかが全部、あの...壊れ...ちゃって...」
ハリーは少しだけ泣きそうな声でそう言うと、小さい声でごめんなさいと謝った。
「謝らないで、ハリー。ハリーのことを守ろうと自ら犠牲になったんだよ。寧ろ、きちんと貴方を守れててよかった」
ハリーの頭に手を伸ばして優しく撫でる。ハリーとセドリックが言っていることが本当ならば(二人とも大事な後輩に友達だ。勿論私達は信じる)、ヴォルデモートは戻ってきた。つまり、日本の守護魔法を根絶やしにしようとしていた闇の魔法使いの復活を意味している。
「...新しいモノを用意しておくね、ハリー」
「...本当?」
「あぁ。俺も、きちんと渡しておこう」
彼にあげた全ての守護魔法が、彼に襲いかかった不幸によって消された。それがどれだけ重大な事なのか、きっとハリーはあまりわかっていないだろう。
それでも、大変な出来事を過ごしたハリーに余計な重荷は背負わせたくなかった。私とタイリーは、言葉にはしなくてもきっと、強く心に刻んだだろう。
もっと、強い守護魔法を。彼を守るために。ハリーや、ハリーの周りを守れるような、守護魔法を。
覚えないといけないんだ、と。
期末試験も終わり、あとは長期休暇に入るだけ。1年共に過ごしていたボーバトン校とダームストラング校を見送った。そしてそのまま休暇に入り、自分たちの家に戻る。次で最後の学年になる私とアンジーとアリシアは、今年も同じコンパートメントに入り、ホームに着くまでの時間を有意義に過ごしていた。
「いつロンドンに来る?」
「んー...時期が決まったら教えるよ」
「オーケィ。楽しみに待ってるわよ」
「はーい」
長期休暇に入って、今年こそはこの休暇を使って私とタイリーはロンドンにいくのだ、と決めていた。観光したい所もたくさんあるし、アンジーやアリシアと行きたいところがたくさんある。目前に迫った夏休みに胸を躍らせて、待っててねといえば、二人は綺麗に笑いながらウィンクをこぼした。
ホームに駅がつき、荷物を抱えて列車から降りる。楽しそうに談笑しているハリー達を見つけて、アンジー達に手を振って私は途中で合流したタイリーと共に3人の元に近寄った。
「ヒヨリ!!」
「ハーマイオニー」
ハーマイオニーがいち早く気づいて、私達に笑顔を見せる。3人はどうやら迎えを待っているようだった。
「夏休み、手紙を書いてもいいかしら?」
「もちろん、待ってるよ」
「よかったわ...!!」
当たり前の事に頷いて笑顔を見せれば、ハリーがこっちをじっと見ていることに気づいた。タイリーが、ハリーの方を向いて口を開く。
「ハリー?」
「僕も書くよ。二人には、本当に感謝をしてるから」
ハリーの瞳が緑色に揺れる。彼に頑固な所があるのは、4年も一緒にいればわかっている。何も、感謝なんてされるようなことはしていないし、後輩なのだからしなくてもいいのに。それでも、ハリーは絶対に「恩は返す」と言ってきかないのだ。
「うん、手紙待ってるよ、ハリー」
「二人も...何か困ったことがあったら...僕には何もできないかもしれないけど、それでも...!!」
慌てて話すハリーの口元に人差し指をつける。
「後輩は、黙って先輩に可愛がられるのが仕事なの」
「そういう事だ、ハリー」
タイリーと二人で笑いながらそう言えば、ハリーはゆっくりと口を閉ざした。
そう。ただそう言ってくれるだけで十分感謝を伝えられてると理解できるし、それだけで充分満足だということに、どうしたらこの子は気づいてくれるだろう。
それでも納得いかないというのなら。
「それじゃあ今度、ハニーデュークスで何か奢ってもらおうかな」
「ヒヨリは甘党よ」
「あぁ、そりゃもう吐き気するぐらいにね」
「ロン、黙りなさい」
ハーマイオニーとロンの言葉に、私もタイリーも、ハリーも笑う。
ハリーは首を何度か縦に振った後にゆっくりと口を開いて「わかった」と、そう言った。
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