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「それじゃ、さっきも言ったけど」

ハーマイオニーの上擦った声が響く。あぁまたやってしまった。2年前だか3年前だかにマルフォイに啖呵切ったのと一緒だ。
言ってはいけない事、やってはいけない事、その大枠の中から大きく外れたことを見ると、つい居てもたってもいられなくなる。自分の悪い癖なのだ。タイリーは、そんな私のことをいつも「芯がお強いのです」と褒めてくれたっけ。

「さっきも言ったけど…皆が防衛術を学びたいならやり方を決める必要があるわ。会合の頻度とか、場所とか…」
「ほんとなの?」

一人反省会をしながらハーマイオニーの横にずれていれば、彼女の言葉にかぶせるようにひとりの女子生徒が口を開いた。

「守護霊を作り出せるって、ほんと?」

この場がざわついた。
全員が一様にハリーを見つめる。ハリーは若干戸惑いながらも、うん、と答えた。

「有体の守護霊を?」
「君、マダム・ボーンズを知ってるの?」
「私のおばよ、私、スーザン・ボーンズ。おばがあなたの尋問の事を話してくれたわ。それで、ほんとにほんとなの?牡鹿の守護霊をつくるって?」

そこからのハリーすごい談義は盛り上がった。私がとやかく言う必要はなかった、よかったよかった。一年生の時の賢者の石事件、秘密の部屋事件、沢山の偉業をこなしてきたハリーに最早疑いの目を向ける人はいなかった。

「僕、そんなに凄くない。助けがあったから…」
「ドラゴンはあなた1人の力よ」
「あぁ、うん、まぁ…」

結局の所、ハリーは出来る人なのだ。少しだけ笑みを浮かべて、私はタイリーを見た。彼も口角を上げて、こっちにおいでと手を振った。

確かに、この場にずっと居座るのもよろしくない。ハーマイオニー達に気づかれないようにゆっくりと足を動かして、壁に背中を預けていたタイリー達の方に向かえば、あのスミス君がまためんどくさい事を言う。

「君、そうやってのらりくらり交わして僕たちになにも教えないつもりだろ」

足を止めた。変な事を言うなと、後ろでロンがあちゃーと言っているのが聞こえる。ちょうど、彼の前で足を止めて座っているスミス君を見下ろした。

少しだけ青ざめているが、この際仕方ない。変な事言うと私が黙っちゃいないぞ、と態度で示すのも大事だろう。

「もう一回言わせて頂くなら、君はもう少し、場を弁えなさい。もうお母さんのミルクを飲む歳でもないでしょう?」

イラついた。八つ当たりだ、こんなの。ごめんね、と心の中で謝って足を動かした。スミス君は顔を真っ赤にして、下を向いた。それでもここから出ようとしないのだから、根はきちんとしてるのだ。防衛術を学びたいと思ってる。ただ、ハリーへの嫌疑心がでかいだけ。それを言葉に出してしまうあたり、まだ精神面がお子様なのだろう。

「オジョーかっけぇな!」
「流石オジョーだ!」

扉付近で固まってる皆のところに向かえば、双子の2人は小さい声で盛り上がっていた。それは嬉しいけど、アンジーとアリシアなんて目を釣り上げて私を見てる。

「もう少し大人しくできないわけ?」
「あれじゃあ貴女も子供よ」
「何も言えない…」

小言は後にしてくれ。耳に両手を当てて聞こえないふりをしていれば、タイリーが苦笑を浮かべて、私の肩に手を置いた。扉の隙間風が当たると寒いから、とわざわざ隠してくれる。

「タイリー、貴女甘やかしすぎよ」
「もっと淑女らしい態度を学ぶべきね、ヒヨリ!」
「はい、ごめんなさい」

今回は本当に、そう。苛立った所で何も解決されない。説教をしたところで、か何も変わらない。ただ、自分が今でも日本の有数な純血の家の娘であることには変わりない。

それを雄弁に証明したようなものだった。手を握ってくれるタイリーの力が、強い。ぎゅっと、握り締められて、私も同じように返した。

大丈夫。私達は、きっと大丈夫、と。

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