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今年の夏はびっくりな事に、アンジーとアリシアが日本にやってくる。二人だけじゃない、フレッドとジョージとリーもだ。無事に皆進級してふくろう生となったから、皆で勉強会をしようとなったのだ。
本当はアンジーたちと私が手紙で決めたことなのに、なぜかあの3人も知っていた。

「タイリーごめん、私はお祖母様とお話があるから、5人を迎えに行ってくれる?」
「承知しました」
「私の部屋とタイリーの部屋に布団を敷いておいて」
「仰せのままに、お嬢様」

タイリーと他の使用人を迎えに向かわせて、他の使用人に布団の準備をお願いする。私はお祖母様のいる上座へと向かった。
廊下を歩きながら使用人に渡された着物を受け取り腕を通す。薄紫色の着物を着る時、私はしっかりとこの家の主になる覚悟が出てくる。

「お祖母様、ヒヨリです」
「入りなさい」

正座をして、扉を開けて中に入る。使用人が代わりに扉を閉じて、中にいるのは私とお祖母様だけだ。

農い紫色の着物を着て、私を見下ろすように上座で正座しているお祖母様に頭を下げる。お祖母様はそんな私をちらりと見て、頭を上げなさいと一言言った。

「ヒヨリ、貴方も15歳になりました」
「はい」
「日本では、今学年で義務教育は終了です。さらに、来年の今頃には結婚も可能となります。ついては、今年から婚約者、もしくは婚約者候補として挙げられている人物から貴方へ、数々の品物が贈られてくることでしょう」

日本ではタイリーよりも1学年年下の私は、ついに15歳になり義務教育が終わる歳になる。そして来年には16歳。日本では、女性は16歳になると結婚ができるようになる。
それに合わせて、私と、というよりも純血名家の仲間入りをしたいものたちから"求婚"が始まるのだ。

「...承知しています」
「なら、良いのです。どんな時でも、陸奥村家の誇りを忘れずに」
「はい。あの、お祖母様」

下げていた頭をゆっくりと上げる。お祖母様は怪訝そうな顔をして、こっちを見ていた。

「...ホグワーツを卒業するまでは、結婚は延期させてください。きちんと、最後までやり遂げたいと思っています」

途中で投げ出すなんて、絶対に嫌だ。確かに遠い国で日本人、というよりも東洋人の少ない学校での勉強は大変ではあったけれど、ここまできたら後2年だ。最後まで、学年上位をキープして、卒業したい。

それが終われば、全部諦める。自分のなりたい人生も、すべて。

「...わかりました。最後まで、気を引き締めて」
「...はい...!!」

もう一度頭を下げて、お礼を言う。お祖母様は最後にもう一度私の名前を呼んだ。

「ヒヨリ...」
「はい」

顔を上げて、彼女の目を見つめる。お祖母様は、何か言おうと口を開いて、そして何かをためらったのか口を閉ざすと、少しだけ口角を上げて言った。

「...ご学友の皆さんがお待ちでしょう、行ってよろしい」
「...はい!!」

初めて家に友人を呼んだ。魔法処に通っていた時も呼んだことはなかった。そのせいか、我が家はちょっとしたお祭り状態だ。使用人達が掃除と料理の準備などでせっせと動き回っている。式神もそこら中を飛び回っていて。

お祖母様は私を少し見つめると、奥の扉に向かって杖を振り、開ける。私は一度頭を下げて、ゆっくりとその場から立ち去った。





「アンジー!!アリシア!!フレッド、ジョージ、リーも!!ようこそ、日本へ!!」

使用人にはしたないと叫ばれるのもガン無視で、私は着物の裾をめくって廊下を走った。玄関の外にある門に立ち、キョロキョロと視線を巡らせていれば、空の上でバサバサとウミツバメの翼のなる音が聞こえた。

私とタイリーが魔法処の通っている時に使用していたウミツバメ二羽だ。私たちが通わなくなってから、陸奥村家の足となっていた。

二羽の大きいウミツバメが翼をばさりと大きく鳴らし、私の前に降り立つ。そしてゆっくりと下げたその頭を優しく撫でて、ご褒美を与えた。

「ヒヨリ!!」
「久しぶり...!!ってわけでもないわね」
「やぁオジョー」
「日本は随分と暑いな?」
「この鳥なんて生物だい」

一人一人感想を言いながら、ウミツバメから降りて私に向かって歩いてくる。感動の再会とまではいかないにしても、自分の家に友達が、しかも親友がいるのだ。私は嬉しさでいっぱいだった。



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